短編小説「49日の日に…」
思いがけない、別れとなった…
まさか…
あれが、最後の別れになるんて…
あの日から
あの時から
時間は止まったままだ…
もう生きてたって…
「もう気にすんなって…」
えっ!
一瞬、懐かしい声が聞こえたけど…
気のせいか…
「いつもの小さいケンカだったろう…
仕事に行かなきゃだったし…
家を出てから、しばらくして
頭が冷えてさ…
帰ったら、謝ろうと思ってたんだよ
だから、もう気にすんなって…」
さみしい顔をしたままの彼を…
何も言わずに見送ったのが、最後の別れになるなんて…
本当にダメだな…
「それは仕方ないし、どうしようもないって。
いつあの世に行くかは、誰にも分らないし…
本当、完璧星人だな。
クソ!
皮肉も軽口も、もう届かないんだよな…」
………
………
………
「聞こえてないし…
もう届かないけど…
それでも言うぞ。
らしくないぞ。
そんなにダメになったり…
落ち込んでる姿、見たことないぞ…
まあ、いきなり死んでしまった、おれのせいだけどさ…
もう後悔すんな
気にすんな
しょうがないって…
本当、人生は思い通りにならないな…」
あぁ…
あの日
いつもみたいに
帰って来てくれたら…
そしたら謝れたのにな…
仲直りできたのにな…
………
………
………
「…た、た、ただいま…
け、今朝は、その…
言い過ぎた
…ごめん
………
………
………
幸せにな
笑顔で暮らしてな
元気でな
ありがとう」
………
………
………
いつの間にか寝てしまっていた
頬には涙が流れた跡がある
【おわり】
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