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河童とお煎餅/私小説⑦-②迷い/ストレスジャンププール

あたしは、河童ちゃんに職場で起きた、出来事を話した…

まだ気持ちの整理も、ついていないから、言葉に詰まりながら、途切れ途切れに…

河童ちゃんは、お煎餅を食べたり、お茶を飲みながら、あたしの話しを、ただ静かに聞いてくれた…

「うん、うん。

そっか、とっても大変だったね。

熱中症で倒れた人も、意識が戻るといいね。」

と、言いってしまった後に、後悔した…

人間に肩入れし過ぎると、妖怪では居られなくなる、掟があるからだ…

だけど、おいらが人間の頃の、心が反応してしまうのかな…

それに、おいらのお家だから、つい安心して気が緩んでしまう💦

人間と関わる時は、心で思っても、言葉にしない様に、気を付けているんだ

ネコさんや魔酢苦さんの様に、人間との距離感や線引きが、おいらには器用にできないからだ

「ねえ河童ちゃん、清掃の仕事って、どう思う?」

と、聞かれ…

「とても立派で、大切な仕事だと思うよ。」

あっ、また反応してしまった💦

それに、ちゃん付けをされて、胸がちょっと温かくなった

人間だった頃は、呼び名が変わったり、距離感が近くなると、嬉しかったような気がする

「嬉しいな☺︎

この仕事に就いて、初めて人に言って貰えたよ。

"職業に貴賎はない"

"人を仕事の内容によって差別すべきではない"

という考え方が、存在しても実際は、差別を受けやすい仕事なの…

人格者の方に出会うと、人として尊重されたり、大切にされるけど、、、

一方でね…

不意打ちに現れ、突然、心ない言葉を浴びせられたり、非道いことをされて、傷ついたり、悲しくなる時もあるの…

まあ、あたし自身が、恥ずかしながら、この仕事に就くまでは、内心、下に見てしまっていた時期もあったけどね…


河童ちゃん、年齢については、どう思う?

おばさんとか、おばちゃんとか言われる年齢になったら、人としても、女としても、あたしは…

価値がない…

人間なのかな?…」

「年齢っていうのは、人間世界の、戸籍年齢や実年齢って、呼ばれているものだよね?

おいら達、妖怪は日頃の、心のあり方や行いが、大切にされるの。

妖怪を、長くやっていることでなくて。

妖怪として、どんな風に過ごしたり、生きているかで、尊敬や尊重されるんだ。」

「すごく、ステキな考え方や生き方ね。

あたし、妖怪になりたいな☺︎

若い頃はさ、"若さや見た目"で優遇されることに、優越感に浸り、頭がのぼせ上がっていたけどね…

年齢を重ねる度に、有形無形の形でさ、お前は価値が低い・お前は価値のない人間だって感じることが、増えるんだよね…

"年長者やお年寄りを敬いなさい"

という教えは、肉体的に身体が衰えたり、老いても、、、

"人として対等に接して、尊敬の気持ちを持とう"

という、対人関係の知恵や教えだったのかと、今になって思うの。

年長者だから、常に正しいことを言うなんて、人間として有り得ないけどね。

自分より、戸籍年齢が若い人や、小さな子どもからも、教えて貰ったり、気付かせて貰う事は多いのよ。

言葉の意味合いに、親しみを込めて

"おばさん"

"おばちゃん"

って言う人も、いるとは思うけどさ…

大半は見下したり、馬鹿にしていると感じるの。

だってさ、大切な人に対して、ぞんざいで粗末な言い方は、しないよね?」

"妖怪になりたいな"

と言われて、おいらの胸がすっごく、熱くなってしまった🌋

話しの続きを聞くのも、うわの空になりかけた…

妖怪と変わらない考え方をしている人間に、おいらの心が惹かれ、引っ張られてしまっている💦

それにしても、人間は外見を、重視するんだなと改めて思った

心や行いではなく、他者と自身による、外見の評価を過剰に気にして、取り繕うことに必死に見える

おいらから見ると、苦しくて、辛そうで、幸せそうには見えない…

けど、人間の領域や領分だから、思っても、人間に伝えることはしない

人間として長く居るだけで、価値が低くなり、無くなるなんて、、、

妖怪のおいらには、理解しがたいことだ…

「ねえ、そういえば、ここって空気が、きれいなのかな?

あたしさ、魔酢苦のせいで、仕事中も休日も、頭痛に悩されていたの…

今は、不思議と治まっているの。

仕事中は、熱中症の初期症状、"吐き気や気分の悪さ"を感じながら、熱中症で倒れないように身体に気を配り、仕事も時間内に終わらせないと、いけなくて…

会社の上層部もさ、従業員の健康や生命よりも、報道や自称専門家の馬鹿共の言うことしか、聞く耳が、なくなったみたいでさ…」

「おいら達の世界は、人間界の影響を受けないから、空気は、きれいなのかも。

頭痛、辛いね。苦しいね。

身体の具合が悪くなるのに、魔酢苦をしないと、いけないなんて、大変だね。

でも、どうしてなの?

理由や事情を伝えて、人間同士で、理解し合えないの?」

「そうなのよ、河童ちゃん。

あたしは、新卒で社会を知らない訳でもないから、客先や上司の面子や立場を立てることは、仕方のない事と、割り切りれてはいるの。

ただね、会社内・職場内で、お互いに、魔酢苦を着用しているか、鼻出し魔酢苦やアゴ魔酢苦をしていないか、常に見張り合い・監視し合っているのが、馬鹿らしいし、お互いの健康と人権と自由を奪いあっているのにさ…

お互い、見なかったことにすれば済む話しを、わざわざ上司や管理職に密告して、指導させるって…

あたし自身、再三注意をされて、自分の自由が奪われた時に、相手の自由を奪ってやろうという気持ちになり、喉元まで、言葉が出そうになったわ…

超えるはずのなかった、他人への領域に踏み込みそうになり、なんとか堪えているの…

口にはしないけど、自由を奪った張本人や口煩かった連中には、厳しい視線を向けてしまうの…

だからね、今回の件で、もう仕事に行くのも、人間世界で生きていく事も、酷く疲れたの…

あたし、元の世界に帰りたくない…

河童ちゃんと、一緒に暮らしたいな…」

なるほど、そうだったのか…

おいら達が担当する人間界で、よく聞く、、、

"建前・面子・立場"

ってやつか…

これが理解や納得できない人間は、苦労や衝突することが、多いそうだ…

この人間は、妥協や折れる事も出来るけど、苦労しているんだな…

"河童ちゃんと、一緒に暮らたいな…"

と言われて、また人間の頃の感覚を思い出した

"愛情や関心が、向けられた時"

の反応が起きている

けど、おいらも、妖怪らしく冷静になってきた

まだ、一緒に生活もしていないし、妖怪の生活も知らないのに、口にするのは、、、

本心でなかったり、ヤケになって、短絡的になっているのかもね…

「そっか。そうだったの。

話してくれて、ありがとう。

でも、ほんとにいいの?

人間界を捨てて、こっちの世界に来て、後悔しない?

向こうで、やり残したことや、楽しいこともないのかな?」

「それは…」

と言って、人間は、また俯いて考え込んだ

ふう、よかった

少し、落ち着いたみたい

一見、冷静な時も有れば、ひどく感情的になってしまい、心が揺れ動いているみたいだ

続く
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お読み頂いて、ありがとうございます。

この先の続きが書けず、一旦書き上げたものを上げました。

8月中に下書きは出来ていたのですが、数週間寝かせても、続きが書けなくて…

ただ、完璧を目指さず、手放したら、少しだけ話しが浮かびました💦

実生活で色々と有り、創作にも影響が出たのでしょうか?

いつもブログを読んでいる、吉良真伊さんの記事は、趣味について

物語を通して、主張したいことや意見は有るけど、小説として工夫したり、楽しんで考えたり、書くのは楽しいです。

その内、続きや話しが考えられると、いいです。

猛暑から一転、肌寒く、洗濯物もよく乾かないですが、今日もいい日でありますように

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