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日記:人間というものはベラボーなオプチミストでトンチンカンなわけの分からぬオッチョコチョイの存在である

石坂洋次郎の「契約結婚」を読む。59歳の男が、それほど親しくなかった中学校時代の男友達に手紙を出す。手紙の初めには「遺書」と書いてある。中学校時代優秀だった男は、保険会社で部長を務めている。奥さんは亡くなり、三人の子供は結婚して家を出ている。男は虚しさを感じている。学校での優秀さなど、人生においては何の役にも立たなかった、と。そんな時に余命4年の宣告を受ける。男は考える。4年間をどう生きるか。そこで24歳の女と契約結婚をする。女は服飾のお店を持つ事を夢見ている。2000万円くらいの開店資金を、今の仕事で稼ごうとしているが、どんなに頑張っても資金がたまる見込みはない。男は提案する「俺は4年で死ぬ。4年間、生活を共にしてくれたら家も財産もすべてあげよう」、と。女はその提案を受ける。4年半後、男は磯釣りをしている最中に心臓麻痺を起こし、海に落ちて遺体となって発見される。手紙を受け取った男は、死んだ男の息子から手紙を受け取る。男の死亡記事が同封されている。「生前父が、俺が死んだらその旨をあなたに伝えてくれと言っておりました。新聞記事を同封します」と書かれていた。

文章にすると暗い話だが、物語はコミカルでポップ。特に24歳の女の嘘のない発言と夢への執着心、性(契約結婚するまではセックスしたことがなかった)に対する反応がサバサバしてていい。死んだ男も、24歳の女が結婚しようと決めている男と普通に付き合うようになる。一緒にご飯食べたり、磯釣りに行ったり。「人間というものはベラボーなオプチミストでトンチンカンなわけの分からぬオッチョコチョイの存在である」という坂口安吾の言葉が僕の脳裏にじわーっとにじみ出てきた。

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