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日記番外編5~なんだか気になる黒いタートルネックの話~

知り合いの編集者から、
「団さんのなんだか気になることを教えてください」
と言われました。

なんだか気になることを集めて何だかしてやろう、
ということだと思うのですが、
そんなこと、パッと言われて出てくるものではありません。

「めちゃめちゃ気になることではダメなんです」
「でも、なんだか気になることなんです」

と編集者の鼻息は荒くなる一方なのですが、
そもそも「なんだか気になるとは何なのか」と聞くと、
彼は、よくぞ聞いてくれました!という顔で、

「ずっと気になっているのに、決して調べようとしなかったこと」
「そして、きっと今後も調べないけれど、きっとずっと気になり続けることです」

と言うのでした。
果たしてそんなものがあるのだろうかと、
思い付いたことをポロポロ言うのですが、
どれも自分の中でバチッと来ることがなく、
そもそも年齢とともに嗜好も変わるのでそんなものがあるのだろうかと言ったり言わなかったりして、

「その質問がなんだか気になることということで」

とお茶を濁してお茶を終えたのが三週間ほど前のこと。

しかし遂に、僕はなんだか気になることを、
いや、正確にはなんだか気になっていたことを、思い出したのです。

それは、男子諸君なら一度は見覚えがあるであろう、
包茎の広告のビジュアルです。

ご存知でしょうか?
タートルネックの男性が、
自らの首もとのセーターを口元まで引き上げ、
ちょっと寂しそうな、それでいてハズカシそうな顔をしている写真の広告。
セーターは黒と決まっていて、その上げ具合が、絶妙なのです。

ビジュアルが頭に思い浮かばない人には、
まったくもって意味不明だと思うのですが、
あれ以上、上がりすぎてもダメ、逆に下がりすぎてもダメ、
いわゆる仮性包茎の陰茎を研究しまくったとしか思えないあのかむり具合。
とても、計算されています。

そして、それをかむった彼の微妙な表情。
無理ではない、でも無理でないこともない。

好きか嫌いかと言われたら好きだ、
でもキミよりもっと好きな人が現れるかもしれないという思いが断ち切れない!
というような状況で、相手から告白をされて答えを迷っているような、そんな微妙な表情。

オダギリジョーのCMばりに言うと、

むく
むかない
今しばらく考える
どうするオレ、
どうしちゃうのよ、オレ!

というような。
そんな状況に類似する、微妙な心境を表す抜群のタートルネック青年の表情。

……。
いやあ、勢いよく、品のない言葉を連発してしまいました。
以後、伏字を使います。

そうなんです。
あの○茎手術の広告のビジュアル。
僕は、アレを考えて提案し、撮影指示したディレクターに、とても興味を持っているのだということを、突如思い出したのでした。

でも、その発案者を、
「団くん、この人があの、ミスターカムリだよ」
と紹介されたくはありません。
誰を紹介されても、到底納得はいかないと思うからです。

例えばチュッパチャプスのロゴはあのダリが考えたのだよ、
くらいサプライズがあれば、教えて欲しいと思うのかもしれませんが、
あの広告に関しては、僕の中では、一生「なんだか気になること」であって欲しいと、そう思っている一面もあるのです。

ということで、Kさん。
黒のタートルネックをエントリーお願いします。

上野クリニックさんの広告より

ところで広告といえば、
アソブロックで森下仁丹の企業PRを手伝っているのですが、
お口の礼節というオーラルケアシリーズが、最近どどどーんと発売されまして、駅や電車内で広告が踊っています。

そして、そこには名コピーライターである
○遊のコピーが踊っています。
あ、ここは伏字はいらなかったですね。
そのコピーは、

「みんなくさい」

この提案を通してくれた森下仁丹って、スゴイ。
もちろん、僕の中では、すごいポジティブメッセージなのですよ。

※追記
「みんなくさい」は、くさいという状況をネガティブに捉えるのではなく、
加齢とともに口臭が出るのは仕方ない、「みんなくさい」という前提から始めよう!というポジティブな意味を込めたのですが、
山手線の広告審査には「人を不愉快にする可能性がある」という理由で落ちまして、掲示できませんでした。
大阪市営地下鉄や阪急電車は大丈夫だったのになあ。

(2007年11月2日初出・2022年9月15日改稿)