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2023年6月の日記~「1時間15分待って噂のお化け屋敷に行ってきました」号~

6月*日
小さな広場の仲間たちと一緒に伊根(京都北部)の當間さんを訪ねた。
當間さんとのご縁は友人の建築家・アタケンがくれたもので、アタケンと當間さんは大学時代の友人だった。ともに建築学生だったので、仕事柄今も付き合いが深いらしい。
建築家のみならず、専門職の人は学生時代の友人と仕事で繋がっていることが多く、うらやましい。よくある大学の、よくある法学部出身の私には、そのような仕事仲間がいないのだが、多くの人が同じようなものではないかと思う。
そんな當間さんは、仕事で訪れた伊根に一目ぼれをして、東京から移住した。なんのアテもなく、しかも家族を伴っての移住だから、思い切ったものである。当然最初から上手く行ったわけではなく、地元の人とも時に色々ありながら、今は伊根でカフェと小さなホテル不動産屋を経営している。

また別の日。久しぶりに東京で食事をした後輩の会計士が、京都北部の会計士事務所を買ったという話を聞かせてくれた。気になったので詳しい場所を訪ねると、宮津市の北部だという。「ワイナリーがあって、その北の」と、西大井の飲み屋でしゃべっているとは思えないくらい詳細に彼の地の沿岸通りに詳しい二人で確認したその場所は、ほぼ伊根だった。
これはこの先、伊根と何かご縁があるぞと睨んでいる。

6月*日
長くお仕事を一緒しているパーソル総合研究所さんからの依頼で、精神障害者の雇用に関するガイドブック的な冊子を作っている。
先日は、自らが精神障害者手帳を持つ障害枠の従業員ながら、70名の部下を持つマネージャーに取材をし、大変感銘を受けた。「己を知る」ことは、誰においても非常に重要なこと。私はここまで私を知っているだろうか、とインタビュー途中から関心が自分に向いて仕方がなかった。
パーソル総合研究所は「人がはたらく」ことに関する調査機関で、調査員がそれぞれのテーマでいくつもの研究をしている。その結果が一定まとまると、学会等での発表用とは別に、調査結果をより広い人たちに知ってもらうために冊子を作るのだが、それを10年以上担当している。
編集の現場作業というのは、私個人としてはもうほとんどしなくなったのだが、これだけは自分で続けたくて、お願いして依頼してもらっている。
ぼくは会社を「人が育つプラットホーム」として運営してきたし、今もそう思って向き合っているけれど、その試行錯誤に、この編集業務で得た知識がかなり良き影響を与えてくれている。

6月*日
フラリと本屋に行くと、新刊「永遠と横道世之介」(吉田修一/毎日新聞出版)があった。上下巻。いつもは上下巻本を見ると、「もうちょっと短く書けなかったのか」と思うのだが、横道世之介なら「こち亀」くらい長くても大歓迎。私の十指に入るお気に入りタイトルである。
ちなみに椰月美智子さんの「しずかな日々」は永遠のマイベストで、あまりに好き過ぎてホンブロックの「家族の練習問題」にコラム寄稿までいただいている。なのでいつか吉田修一さんにも!なんて、公私混同も甚だしいが、出版業なんて公私混同業みたいなものである。
ちなみに映画は何時になってもスタンドバイミーが大好きで、ほかには「ジョゼと虎と魚たち」で妻夫木君が池脇千鶴ちゃんの家に行って耐え切れなくなって逃げだすシーンがお気に入り。
新刊の中で吉田修一さんも書いておられるが、「人の人生になどそうそう派手な物語はない」のであって、でもそんな日常を上手に掬って見つめている作品が好きなのだと自覚している。
そういう意味ではアーモンドなどを書いたソン・ウォンピンも好きなのだが、文学作品の流れで期待して観た「食われる家族」が酷くつまらなく(私には)、小説への期待値まで下がってしまった。

6月*日
高1長男の学園祭をのぞきに行った。
妻と、小5長女と、「チラっと覗くか」なんて軽い気持ちで行ったのだけれど、サザンのライブ会場くらい人が押し寄せていて、身動きを取るのも大変だった。
長男のクラスは、肝試しをするのだという。せっかく来たからにはそれくらいは見ておかないと、と行列に並ぶも、一向に動く気配がない。そのうち汗もだらだら流れて来て、果たして立ち続けていられるのか、屋敷に入る前の方が肝試しであった。
お化けのシフトから解放された長男が、友人たちとたむろしている姿が、遠くに見えた。そこに中学時代の同級生らしき女子たちが「だんだん(息子のあだ名)、来たよ!」と声を掛けている。「おおー」なんてリアクションをする息子。なんてことのない風景だが、親としてはとても嬉しいシーンであり、親馬鹿の見本のような感情で心が温まった。
長女が「何か食べたい」と言うが、肝試しで1時間15分待ちである。行列を見るに、焼きそばに並んだら、間違いなく日が暮れる。そこで妻がはたと思い出した購買コーナーへ直行。無列の「ほっともっと」で親子丼を購入した。長女は、ようやく見つけた中庭のベンチで「美味いうまい」と食べていた。

6月*日
銀行、というのはそれにしても不思議なところだと思う。
先日、会社の積み立て満期の処理をお願いした担当さんから電話があって「異動になったのでお約束の日にお伺いができなくなりました」という。「つきましては後任は誰々で、彼から電話をさせます」と案内をちゃんとしてくれたので、特段問題があるワケではないのだけれど、せめて返すところまでは完結させてあげられないのだろうかとも思う。
それなりに色々とこれからのこともしゃべっているし、「重複するところもあるかと思うのですが」というイチからヒアリングにまた付き合わないといけないのかと思うと、気も滅入る。これが会社別に、付き合い銀行分あると思うと更に気も滅入る。
もちろん、この容赦のない分断が癒着やもみ消しへのメス入れになるらしいことも知っているし、証券会社に勤める弟は、ある日突然スマホとパソコンを取り上げられ10日間の調査休暇に入ったりするのも見ているので、分かるんだけど、やっぱり「金融って不思議な仕事だな」と思う。

6月*日
「ひとりずつの会」という企画を時々実行している。
これは、私と食事相手の友人がそれぞれひとりずつ誰かを連れて来て、4人で食事をするという会。この日は、前から食事に行こうと約束していたsoarというWEB媒体をやっている工藤瑞穂ちゃんと、ひとりずつの会だった。
わたしが連れて行った「ひとり」は、先日別の知り合いに紹介してもらった山本さん。とにかくキャリアも話も面白いから一度ご飯を食べたいと思っていた。期待に違わぬエピソード連発で、特にママ友からの悩みや愚痴をラップにして返す、という彼女流のコミュニケーションが秀逸だった。
といっても何のことか分からないかもしれないけれど、火にかけたらポップコーンが出来上がるように、愚痴や悩みを入れたらラップミュージックにして返してくれるという特技を持っていた。
瑞穂ちゃんが連れてきた「ひとり」は雑談のプロだというサクちゃん。彼女はジェン・スーさんとTBS Podcastでラジオ番組なんかも持っていて、人の話を聞くことを生業にしているらしい。予約して、話を聞いてもらう。どんな人が利用者なんですか?と尋ねたら、「普段聞き役に回りがちな人ですね」と言っていた。