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1995 タイ -21-

サムイ島で3ヶ月弱程のタイ語修行を終え、遂に元々の予定地であったネパール行き飛行機に搭乗する日が近づいてきた。サムイ島からバンコクへ戻り約一週間後にネパールを目指す。

タイに着いたときの居候先の隣にあった食堂で働く女性に恋をしたのがきっかけで、タイ語修行をする為にサムイ島行きを決めた。約3ヶ月後にその女性にタイ語で私の想いを伝える事が出来る程には上達していたと記憶する。

しかし悲しいかな、そもそものスケジュールの立て方が間違っていた。サムイ島でのタイ語修行は良いとしても、ネパールに行く直前まで、そこまで、サムイ島で頑張るべきだったのか。否である。

その女性に告白する日がゴールになっていて、告白したあとの期間を考えることが出来ていないという。。。言わば告逃げだ。そんな浅はかな私には当然の報いが待っていた。

連日、胸を躍らせてその女性を探しに食堂に通ったものの、彼女は一向に姿を現さない。アレレ。。もしかして辞めちゃったのかな。嫌な予感は的中。店員さんに聞くと彼女はもういないよ、と。本当か?と思って厨房までくまなく探したが本当に見当たらない。話すために修行に出たのに話す事ができないという、手段が目的化した典型となった。

結局、その女性とは一度も会話することも無く、ただ、私が食堂の片隅から彼女を見つめていた時の記憶だけを心にしまい、タイを後にすることになった。

もし、当時再会を果たし、告白をしていたらどうなっていたのだろう。看板娘に日本人がチョッカイを出したと言って、追い出されていたかも知れない。むしろ、思い出は美しいまま胸の中で生かし続け、後悔の中での最善と考えるべきかと我を慰めた。

いよいよ、ネパール行の飛行機に搭乗する。搭乗口付近のカウンターで、もう当分は話すことがないタイ語をいつくしむ思いで空港職員と世間話をしていた。会話は弾みすぐに仲良くなったせいだろう。彼女は私にこう言った。

ねぇ、そのタイ語、ちょっと話し方が上品じゃないと思うわ。。。その話し方、やめた方がいいと思うの。。

(苦笑)

私が身に着けたであろうタイ語って、どんなタイ語? それ以来、タイ語が話せるとは思いつつ、オフィシャルに使うことにはためらいを禁じ得ず、故に、真面目にタイ語学校でゼロから学ぶことにしたのだ。

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