檀香希

週一更新はどうなった。ぐだぐだですが書く時は書きます。

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マガジン

  • 射幸心

  • ジョンキル

  • 物理は苦手だったけど、少しだけ引力の話をしないか

最近の記事

神様は夜、爆睡してる

幸せな人が嫌いだ。 友達の多い人が、恋人がいる人が、学歴の良い人が、お金持ちの人が、身長やスタイルや容姿に恵まれた人が、才能のある人が、嫌いだ。 そして、全く逆の人もそれはそれで嫌いだ。その最たるものである私自身が嫌いだ。 どんな人も、63億人くらいいただろうか、全員が、心の底から大っ嫌いだ。 夜が好きだ。 でも夜には救いがない。 ただ昼よりは静かにものを考えられるというだけ。静かに考えすぎて、逆に悩みが深刻になってしまうことだって多い。 そもそも寄り添ってくれるフリをして

    • だいすきなものの話 #1 「SASO」

      バブル期真っ只中が青春時代だったうちの母は、オシャレさんではあるもののそこまでコスメや香水に対してこだわりはない人だ。まだ私が小学生の頃、授業参観の時もだいたいいつも同じ香りを纏っていた(いまだによく見かけるメンズ向けの香水で、クールな服装を好む彼女には似合っているので、別段「たまには変えてみたら?」と思ったこともない。) そんな彼女が妙によく記憶しており、何度も言及している香りがある。「SASO」という香水だ。漢字にして、「沙棗」と書く。当時はシャンプーやコンディショナー

      • 檀日記 #2 幸せについて本気出して考えてみたけどよく分からんかった

        お久しぶりです。有言実行が大の苦手です。早くも週一更新どころか年一更新になりそうな勢いだったのでとりあえず急ぎ戻ってまいりました。I can not learn. 前回まで連載(といってもまだやっとこさ3回なんですよね)の2作はちょっと構想がまだまとまらないので一旦お休み中です。方向性が定まってきたらまた書きます。くらいの意識低い系スタンスでもいいですかね…そういう物書きが1人くらいいてもいいと思うんです…(消え入りそうな声) ところで、またもや唐突に爆誕させてしまった

        • 小説「射幸心」 #1

          ちょっとした恩返しがしたかった、始まりはそんな気持ちだった。 10年も前の、中学生の時のことだ。今わたしの隣を歩いているマヤがまだ友達じゃなく、クラスメイトのひとりだった頃だ。ある日彼女から小さなストラップを貰った。 「ゲーセンでちょっと多めに獲れたから、お裾分けだよ」と微笑むマヤの、こっちが蕩けそうになるほどの甘い笑顔に当てられ思わず受け取る。 こんな可愛いの、貰っちゃっていいの?と問うた背中から、「いいよいいよ、200円しか使ってないし〜」と緩い返事が聞こえる。 他にも貰

        神様は夜、爆睡してる

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          1本
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        • 物理は苦手だったけど、少しだけ引力の話をしないか
          3本

        記事

          小説「ジョンキル」#3

          車から降りて、「お店の中では絶対に暴れないでよ、まぁあんたに限って無いとは思うけど」と釘を刺しながら、母は夢への入り口のような重たいアンティークの扉をそろりと開ける。 言葉通りいつも大人しかった私だが、この時ばかりは事前の忠告がありがたかったと感じた。行ったことなどあるはずもないが、ロココ朝時代のフランスのお菓子屋はこんな感じだったのだろうかと思わせる、狭いながらも華やかで止まった時計細工のような厳かささえ覚える店内世界。  甘やかな装飾に縁取られた棚に並んでいるのはマカ

          小説「ジョンキル」#3

          小説「物理は苦手だったけど、少しだけ引力の話をしないか」 #3

          「何色にでも容易く染まる/君を嫌いになりそうで」 織ちゃんとのやり取りをかわしながら、私はくだんの「ミルク」を口ずさむ。 この歌にはどんな背景があるんだろう。作詞作曲はベーシストが担当している。みんなもそうなのかどうかは分からないのだが、昔から、歌番組などで新しい歌を聴くとどうしても歌っている人の実体験のように勘違いをしてしまいがちだ。実際には歌詞を書いた人と歌っている人が違うことはめちゃくちゃ普通にあって、十分分かりきっているつもりなのに。 ボーカルの表現力が高ければ高い

          小説「物理は苦手だったけど、少しだけ引力の話をしないか」 #3

          小説「ジョンキル」 #2

          私が趣味でアクセサリーを作り始めたのは、それより1年ほど前のことだった。夏の終わり、隣町にある大きめのスーパーでの買い物を終えた車で帰りがけに「ちょっと用事を思い出した」という母と向かったのは、地図上ではそう遠くないもののあまり見慣れない道だった。 あの辺りもまだ背の高いビルは少なくて、夕焼け掛かってゆく空がきれいに見えたのを覚えている。オレンジと青みの紫だなんて、たまにしか買ってもらえない外資系のアイスクリームショップがハロウィンの近い月にだけ出している限定フレーバーぐら

          小説「ジョンキル」 #2

          小説「物理は苦手だったけど、少しだけ引力の話をしないか」 #2

          「わかる!いいよね!ラスカル!」 秒で既読がつき、そんな返信がきた。 えらく可愛らしい略称だ。まだ残っていた公式ホームページのbiographyを押した時に表示された、俯き加減の若(いんだかそうでもないんだか、明度が意図的に低いので分からな)い男性と思しき3人組の写真との間に多少なりとも乖離は感じるけども。 織ちゃんはほんと、こういうのに詳しい。 音楽好き家庭に生まれたとか、楽器やってたとかって訳でもないのに良質な楽曲をたくさん知っている人間というのは、すなわちセンスの塊

          小説「物理は苦手だったけど、少しだけ引力の話をしないか」 #2

          檀日記 #1

          初めまして。 パーソナリティーは小説を書きたいと思いながら勉強したり働いたりしてるうちに10年くらい経ってしまい、一昨日くらいに突然「これはとにかく今すぐ何か書いて、よく分からないなりに世に出してみないことには一生書けずに終わるのではないか」ということにようやく気がついた人間です。浦島太郎プチ体験から帰還してまいりました。 このnoteでは現在2作品を試行錯誤しながら執筆しています。小説の書き方を勉強してからの方がいいかな、とか色々考えたのですが、そう言っているうちにまた

          檀日記 #1

          小説「ジョンキル」 #1

          無数の星が舞い落ちる。 先週末のワックスがけで表面だけツルツルして、若々しい老人のようにちぐはぐな印象のフローリング。 その薄茶色の地面の上に軽快な歌声を上げながら着地した、黄色のスワロフスキー ソロバン 4mmたち。 ビーズというのは、ぶつかったり落としたりするとほんとうにびびびびっと音を立てて跳ねる。だからビーズっていうのかな、と子供心に思った。 今この場にいる人間たちは少々緊迫した状況に置かれているはずなのに、転がる彼らの自由奔放な動きは寧ろ、テグスという窮屈な枷から解

          小説「ジョンキル」 #1

          小説「物理は苦手だったけど、少しだけ引力の話をしないか」 #1

          ロック(ンロール)という言葉の響きを「ださい」と思い始めたのは、いつ頃からだったろう。 初めて楽器を持ってバンドを組んだ高校の文化祭、杢のようなくすんだ色味の無地のブラウスに女の子らしいロールアップの水色ジーンズ(もちろん膝に破れ目なんて入ってるはずもない)を合わせた格好でアンプのセッティングをしているメンバーの背中を見ながら、ヴィレヴァンか古着屋あたりで買ったAC/DCのTシャツを着た金髪の私は実に不満だった。あんたら、それでもバンドやってる人間なのか?って本気で思っていた

          小説「物理は苦手だったけど、少しだけ引力の話をしないか」 #1