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もしタイムマシンができたら。

子どもの頃うちは両親共働きで、給食がない土曜日は近所で働く母親が1時間の昼休憩の間に家に戻って昼食を作って一緒に食べてまた職場に戻って行くという感じだった。

僕が小1か小2だったある土曜日、学校で午前中に手作りパン教室があり、粘土細工が好きだった僕はカメの形をしたパンと、あれなんて名前なんだろ?たまにパンに乗ってるカラフルで小さなグミみたいなレーズンみたいなのを母親に褒めてもらいたくて宝石みたいにたくさん並べたパンを作った。

とても美味しそうに焼けたパンを持ち帰り、母親の帰りを待ったが12時半を過ぎても帰って来る様子がない。少食な子どもだったからそれほど空腹だったわけではないと思うが、パンがあるという状況を変に意識してしまい時間の流れもやけに遅く感じ、母親を待ちきれずにふたつとも食べてしまった。

13時を過ぎると母親が帰って来た。うろ覚えだが、母親の昼休憩は12時からと13時からのふた通りあり、後者の日だったのだろう。

帰って来た母親の第一声は「パン上手にできた?」で、作ったパンの形と食べてしまった話をしたら、母親は特に僕を責めるでもなく悲しそうにするでもなく「お母さんも見たかったな」と軽く言って昼食の準備を始めた。

自分でも特別後悔したという記憶はないのだが、もしタイムマシンができたらという想像をする時、なぜかいつもこの時のことが頭をよぎる。

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