MUSICAL『阿国』が忘れられない話
1行で要約すると、
「同じ舞台を何度も観に行く楽しさについて」
の記事です。
繰り返すことの価値や意義に関してはもういろんな方が考察をして発信をしていらっしゃるかと思うので、
この記事は、
「私は同じものを何回も観るのが好きや!なぜ好きになったのかというきっかけの思い出話をダラダラと書くんや!」
という意図で書いています。
書きたいことを書きたいように書いてるだけですよ。わはは、わはは。
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アニメ漫画原作舞台(2.5次元舞台という表現に最近少し引っ掛かりがあるので、意地でもこの長い言い方を使う)が観劇履歴の大半を占める私ではありますが、
実は一番好きで忘れられない作品は木の実ナナさん主演のMUSICAL『阿国』だったりします。
ご存知の方はいらっしゃるでしょうか。
いらっしゃったらぜひ語りたいのでコメントをください、語りたいので。
語りたいので!!!!!!!!!
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初演は1990年。
6演めとなる2007年の冬に、親に連れられ家族で京都の南座へと観劇しに行きました。
>400年前に京都・四条河原に現れたと言われる女性、出雲の阿国。愛と芸に生きた彼女の半生を描くミュージカル『阿国』は、90年の初演以来、92、93、95、03年とスケールアップしながら再演を重ねてきた。
(引用元)
シアターガイド MUSICAL『阿国』製作発表 2007年1月24日
池畑慎之介さんの艶やかさ
若松武さんの動きの綺麗さ
そして何と言っても木の実ナナさんの全身から放たれる力強さが印象的。
演者全体が踊り出す歌唱のシーンはとかく圧巻で、
なぜ観客だけが座っていなければならないのだろうかと不思議に思うようなレべルでした。
毎公演毎公演がさながらお祭りのような楽しさだったと記憶しています。
上々颱風(シャンシャンタイフーン)の奏でる色鮮やかな音楽がさらに劇場内の熱気を底上げしてくれていました。
もちろん、思い出補正はあるのですが・・・。
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確か1度目は父と母と(弟もいたかも)観に行き、
観劇日のその日のうちに感動した父がチケットを増やし、2回目のあとも順調に父がさらにチケットを増やし(もうこのあたり、血を感じます)、おそらく4,5回は観に行ったんじゃないかな…?
京都公演の千穐楽も行くことができました。
「明日のチケットまだあるみたいだよ!!」
1度目の観劇後にそう私に報告をしてきた父の嬉しそうな声色を、今でもはっきりと覚えています。
何回かは学校帰りに合流して制服のまま観に行ったんじゃなかったかな…。
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ストーリーは同じ、歌われる歌も同じ、Wキャストでもないので出ている人も同じ。
でも確実に毎回絶対に違う。
今日はあのセリフに熱が入っていた。
こんなアドリブがあった。
あれ、こないだ観た時こんな動きをしていたかな…?
今日観たものはきっと、明日に観るものとは違うのだろう。
私はこの時に、このワクワクを身をもって知ってしまったのだと思います。
中には変化を嫌う人もいるかもしれません。常に等しい演技演出であるべきではないかと。でも、私にはその違いが酷く楽しい。
それがマイナス方向の変化だって、ある程度は構わないです(さすがにお金返せというレベルのものなら辛いですが)。
役者さんのその時のベストがどう変わってくるかを知れるのも、舞台の醍醐味の一つだと思います。
編集して一番いい瞬間を集めたものも素晴らしいですが、
ただその一瞬しかないものも本当に尊いと思う。
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今年の梅雨前ごろに観たとある作品にて、お昼の公演で主演の女の子が舞台のワンシーンで声が出なくなり、
「ごめんなさい、出ない」
と掠れ切った涙声でそのシーンで対話をしていた共演者に伝えた一瞬がありました。
対話相手の方はその子に比べると歳も親子以上に離れたベテランの役者さんで、
その子に対しては祖父のような立ち位置の役でした。
元々その会話シーンの後すぐ2人ではける展開だったこともあり、
「大丈夫大丈夫」
ととても優しい声で勇気づけ、かつ自然な流れでその子の手を取り下手へと消えていきました。
十数分後に再度登場したその子はもう完全に復活していて、
声もしっかり出しており、表情も豊かに動かしていました。
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実はこの昼公演、Wキャストだったその女の子にとっては前楽にあたる日。
まだ別日に公演が残ってはいたのですが、同日の夜公演が彼女の千穐楽でした。
最終日のことで悔しかったろうに、舞台袖にいる間にこれほどしっかりと気持ちの切り替えをしてきたのだなということにまず感心し、
年齢は己よりもだいぶ下だけれども、誇りをもって仕事(役者業)に臨む立派な女性の役者さんなのだなと感じました。
かつ、誰かに何かトラブルがあったとしても、稽古を重ね関係を築いてきた周囲の共演者がしっかりとサポートをする様子を目の当たりにでき、これにもまた感動しました。
どちらもこの日だから観られたこと。
この日のこの公演に自分がいたからこそ、湧いた思い。非常に貴重なものだと感じています。
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趣味と生活のバランスをとるためにも同じ作品はなるべく2公演まで!という自戒の記事まで書いている身なので、
「好きなものは何回でも行ったるで!」
と高らかに宣言できないのですが、
観劇という時間の中で起こる一期一会を、可能な範囲でこれからも楽しめたらなぁと思っています。
いやしかし、阿国を観たのもう11年も前なのですね。
願わくばもう一度、この目で観たい作品としてずっと心に在り続けているMUSICAL『阿国』。
自分の記憶を円盤代わりに(阿国、円盤が無いので…)、ずっと反芻していきたいなと思います。
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DVDやBDの存在って本当にありがたいなと考えはじめましたが、そのことについてまで書き始めると長くなりすぎますので今日はこのあたりで。
読んでくださってありがとう。ではまた。