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今敏『パプリカ』のオマージュの意味は?:ギュスターヴ・モロー『オイディプスとスフィンクス』

 名作映画やアニメには、オマージュが付き物です。最近で言えば、『シン・エヴァンゲリオン』はオマージュだらけですし、Netflixでアカデミー賞候補にもなっている『マンク』は作品自体がもはや『市民ケーン』のオマージュですね。さて、今回は名作アニメ映画、『パプリカ』に出てくるオマージュの意味を考えます。作中では『ローマの休日』や『ターザン』などの名作映画が引用されています。そして、モローの《オイディプスとスフィンクス》も登場します。そのシーンでなぜ本作が出てきているのでしょうか?

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ギュスターヴ・モロー《オイディプスとスフィンクス》1864年

【終盤のひと場面】
 乾理事長と小山内が事件の黒幕だと知ったパプリカは、夢の中で追い詰められ、逃げ惑います。そんな中、ある部屋へ逃げ込むと、そこには”オイディプスとスフィンクス”をテーマにした絵画が5枚飾られております。そして、それらの中央にあるモロー《オイディプスとスフィンクス》の作品の中へパプリカが逃げ込みます。パプリカがスフィンクス、小山内がオイディプスになり、絵画作品の中で戦いと、罵り合いが始まるのです。以下、パプリカと小山内のやりとり。

 小山内「あなたにスフィンクスは似合わない」

パプリカ「昼は賢い研究員、夜は理事長の素敵な僕、それは何?」

 小山内「言うな。いくつもの顔がある。それが人間だ」

パプリカ「理事長に支配されたあなたはオイディプスがとってもお似合いよ」

 小山内「黙ってくれ」

 さて、このやり取りで多くの方の頭を悩ませたのが、パプリカが放った「理事長に支配されたあなたはオイディプスがとってもお似合いよ」というセリフです。この真意を知る為に、オイディプスの物語を抑えましょう(詳細は下記記事にて)。

『オイディプス王』の物語からわかるオイディプスの特徴は以下の3つです。

①父殺し
②母と交わる
③人の知恵や力をどう工夫して挑もうと、運命には逆らえない。

 そして、この中でパプリカの真意に当てはまるのが、③だと考えます。つまり運命=神に支配されたオイディプスの人生と同様に、小山内もまた理事長に支配されているのです。そこから逃れ、自由に生きたい(パプリカ/千葉敦子をものにしたい)と願うが、理事長はそうさせてくれない。そんな彼を揶揄した発言だったのではないでしょうか。

 いかがだったでしょうか。この他にも、映画『パプリカ』には芸術にまつわるモチーフが出てきます。それは次の機会に紹介したいと思います。

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