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コロナ禍で働く現役言語聴覚士のインタビューのまとめ

患者さんに寄り添いながら適切なサポートを行うリハビリ職種は、必然的に患者さんとの物理的な密接度も高くなります。
食事やコミュニケーションを支援する言語聴覚士も例外ではありません。
そして、新型コロナウイルスが流行して以降、その「距離の近さ」が問題視されるようになりました。

嚥下機能や発声発語機能のリハビリをするうえで、避けては通れない飛沫や接触を、現役の言語聴覚士はどのように対応しているのでしょうか。

今回は、日本言語聴覚士協会監修「めざせST.com」に掲載されていた、現役で働く言語聴覚士の声を「コロナ禍での働き方に関するインタビュー」としてまとめました。
言語聴覚士を目指している方は「コロナ禍における現場のリアル」を知っておくと良いでしょう。

園田 さくらさん(医療法人寿芳会 芳野病院)

園田さんは、訪問リハビリテーションの言語聴覚士として働いています。
対象の疾患は、嚥下障害や構音障害、失語症、高次脳機能障害など幅広く、食事や言語の障害に関わる患者さんの治療を行っています。

コロナ禍での働き方|感染症対策の徹底

園田さんの勤める訪問リハビリテーションでは、訪問リハビリの際はフェイスシールドの着用や手指消毒などを実施しています。
さらに、患者さんの家族や、患者さんが利用されているデイサービスで感染者が発生した場合は、訪問リハビリテーションを休むように規定を設けるといった対策も行われています。

初回の緊急事態宣言の際は、患者さんから「しばらく休みます」と連絡があったため、一時期はリハビリが中止になったケースもあったようです。

患者さんから感謝の言葉をいただいたとき、言語聴覚士としてのやりがいを感じるという園田さん。
どのような職業においても、自分が必要とされている、人の役に立てていると実感できる瞬間は「この仕事をしていてよかった」と思えるものですよね。

今後においても、新型コロナウイルスが終息するまでは感染対策を万全に、患者さんに寄り添い治療していくと語っています。

増井 仁美さん(医療法人社団永生会 みなみ野病院)

増井さんは、医療療養病棟で言語聴覚士として勤務しています。
対象の疾患は、脳卒中による後遺症の方や神経筋疾患、肺炎などで、各患者さんに合った嚥下機能の評価・訓練や構音訓練を行っています。

コロナ禍での働き方|いままで出来ていた訓練に支障が出ることも

増井さんが育児休暇から言語聴覚士として復帰した際に、ちょうど1回目の緊急事態宣言の期間と重なったそうです。
初めての緊急事態宣言によって社会全体で混乱が起きており、さらに保育園の登園自粛要請で思うように職場復帰ができなかったと語ります。

いざ現場に復帰してみると、新型コロナウイルスの感染対策によって、今までのリハビリとは違う不自由さを感じたといいます。

たとえば、マスクの着用が徹底されたことから、患者さんとのコミュニケーションに支障がでたり、発声に関するリハビリも制限されたりするようになりました。

言語聴覚士のリハビリは、コミュニケーションをするうえで、口の動きを見てもらったり、発声してもらったりするため、飛沫対策が徹底されているなかでは、最高のパフォーマンスがしにくくなっているのが現状です。

そのような状況下ですが、増井さんは今置かれている環境でコツコツ経験を積みながら、患者さんにより良いリハビリを提供できるようにしたいと語っています。

インタビューは「仕事と育児を両立しながら言語聴覚士として成長していきたい」という気持ちで締めくくられており、増井さんの誠実な人柄が伝わってきました。

中嶋 崇博さん(山梨県立中央病院)

中嶋さんは、救急医療・周産期医療・がん医療に注力している三次救急医療機関で言語聴覚士として働いており、小児から成人まで幅広くリハビリを行っています。
対象の疾患は、救急患者、脳血管障害、哺乳障害、がんなどの患者さんを対象としています。

また、中嶋さんの働いている医療機関では、緩和ケア病棟も有しているため、術前後のがん患者さんへのリハビリのみならず、緩和期の患者さんへのリハビリも提供しています。

コロナ禍での働き方|リハビリ室の環境が大きく変化

中嶋さんの従事している医療機関では、新型コロナウイルスの感染症対策として、リハビリ待合室での密の回避を行っています。
具体例として、多職種と連携した時間調整や外来・入院患者の動線を分けるといった工夫がされています。

なお、リハビリ中においても、新型コロナウイルスの感染症対策を徹底しているようです。
たとえば、嚥下障害の方へのリハビリをする際、他のリハビリと比較して接触や飛沫感染のリスクが高いことから、アイゴーグルの着用やパーテーション越しでのリハビリを実施していると語ります。

上記のように、新型コロナウイルスの蔓延はリハビリ室の環境を大きく変化させましたが、中嶋さんはそのことについて「感染症対策を見直す良いタイミングだった」とポジティブに受け止めているようです。

病院でリハビリをする際には、新型コロナウイルス以外の感染症に対しても常に意識して、取り組まなければいけません。

リハビリを通し、患者さんとその家族が笑顔になる瞬間を共有できることに仕事のやりがいを感じている中嶋さん。今後も感染対策を徹底しながら、常に患者さんに寄り添える臨床に励んでいきたいと意気込みを語っています。

【まとめ】コロナ禍であっても言語聴覚士の思いは変わらず

本記事では、日本言語聴覚士協会監修「めざせST.com」掲載の「コロナ禍での働き方に関するインタビュー」を通し、現場で働く言語聴覚士の声を紹介しました。

言語聴覚士のリハビリは、ほかのリハビリ職種と比較して、接触や飛沫感染のリスクが高い仕事です。コロナ禍となった現在は感染対策の徹底が重視されるようになり、環境がガラリと変わったのは言うまでもありません。

しかし、言語聴覚士の根本的な思いは変わらず、コロナ禍においても「患者さんによくなってほしい」「患者さんにより良いリハビリを提供したい」と感じているようです。

言語聴覚士を目指している方にとっては、本記事を通して「コロナ禍における現場のリアル」を、より知るきっかけになったのではないでしょうか。
コロナ禍であっても、患者さんに寄り添えるような素敵な言語聴覚士を目指して、実習や勉学に取り組んでください。

めざせST.comには、今回ご紹介したST以外にもたくさんのインタビューが掲載されています。
参考にしてみてください。

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