Daiya Aida 会田大也

ミュージアムエデュケーター/YCAM artistic director 学校外での教…

Daiya Aida 会田大也

ミュージアムエデュケーター/YCAM artistic director 学校外での教育を創ってます。

最近の記事

村山悟郎「多の絵画」美を探求する姿勢 補論

テクノロジーはそれが実際どのように役に立つのか?という視点と同じぐらい、テクノロジーのアイデアや考え方そのものが私たちにどんな視点を提供してくれるのか?という哲学的な意味からも評価されて然るべきなのだろうと思う。 村山悟郎個展「多の絵画」についてのレビューを書いた。元々4000字という依頼だったが、作品タイトルなどに含まれる技術用語の説明に思いのほか文字数を使ってしまい結局1.5倍を超える文量となってしまったが、それでも語り尽くせないこともあった。 例えば、原稿の中でセルオー

    • 3つの質問をして、似ている傾向の人をグルーピングする方法

      非常勤講師を務めている大学で、学生をグルーピングする際に用いた方法をメモしておく。(今回はGoogleフォームと、その結果を書きだしたGoogleスプレッドシートを用いたやり方です。「MATLAB」などのデータ分析専用アプリがあればもっと複雑なことも簡単にできると思います。お金がある人はそっちを使いこなした方がよいでしょう。) さて、授業の中で学生にグループ制作をしてもらうことは色々意義深いのでぜひともやったら良いとは思うのだが、実際にグループを分けるとなると、その方法はな

      • 破綻と逸脱〜あそびのレジスタンス

        これまで、あそびという振舞いについて考えてきた先人たちは多くいます。「ホモルーデンス(遊ぶ人)」を著したヨハン・ホイジンガや「遊びと人間」のロジェ・カイヨワといった古典にはじまり、「人間はなぜ遊ぶか」のマイケル.J.エリスや、「クリエイティビティ」のチクセントミハイ、「遊びと発達の心理学」のジャン・ピアジェなど、枚挙にいとまがない程です。近年でも「遊びが学びに欠かせないわけ」のピーター・グレイや「プレイ・マターズ 遊び心の哲学」のミゲル・シカールなど目の離せない議論が尽きませ

        • フレーム

          ものごとの認識の枠組み、フレーム。一つの単語であったり、いくつかの言葉による概念であったりするが、これがさまざまな枠組みによって捉え方が変容するのが厄介でもあり、豊かさの源泉でもある。 「明日って暇?」という一言に対しては、「暇だけど」と答えることもできるが、心の中で(悩み事あるのかな?)とか、(僕のこともしかして好き?)とか、さまざまな受け止め方ができる問いかけでもある。 問いかけ方に幅を持たせたり、逆に誤解なく問いかけたり、といったことが柔軟かつ的確に出来る人は、コミ

        村山悟郎「多の絵画」美を探求する姿勢 補論

          善し悪しは、ゲームセットの条件次第。

          様々な場面で何度も思い出すエピソードや格言というものがある。私の場合は、マネックス社長の松本大さんのブログ記事である。前後編からなるエピソードは、松本さんが若い頃に経験した強烈な体験を描いたものだ。投資会社の先輩に連れていってもらったカジノで、勝負の勝ち方について教わったエピソードだ(金融と聞いて汚い世界だと耳を塞ぐ人が居るのはやむを得ないことだが)。 このエピソードが興味深いのは、勝負を分けるのは「何を勝利条件と定義するかに拠る」という考え方が示されているところだ。似たよ

          善し悪しは、ゲームセットの条件次第。

          山口新聞 東流西流 連載記事リンク

          山口新聞に掲載していただいた「東流西流」というコラム記事について、担当の編集者より許可を貰いこちらのnoteへ転載させて頂きました。 幸いなことに山口で出会う様々な人から「連載見ましたよ」と声を掛けていただくことが多く、手応えを実感しています。難解だと言われて久しいアートについて、そのもつれを解きほぐす作業は個人的にはとても面白い作業でもあります。 連載記事のリンクをまとめておこうと思いついたので、こちらに載せておきます。 山口新聞 東流西流  #1「分からない、の探

          山口新聞 東流西流 連載記事リンク

          山口新聞 東流西流 #7「ようこそミュージアムへ」

          山口新聞の担当の方から了承をもらい、こちらのノートへ転載していくことにする。 #7 ようこそミュージアムへ  アートが難しいと言われる理由を探る連載も今回が最終回となりました。  アートは確かに過去や歴史などの文脈に依存する側面があります。一方で読み解き方については不正解がなく自由だとも言われます。しかし、自由という言葉は、逆に人を不安にさせ、思考停止を招くようです。  実際アーティストは意図を持って作品を作ります。しかし実はこれに縛られる必要はありません。私の経験か

          山口新聞 東流西流 #7「ようこそミュージアムへ」

          山口新聞 東流西流 #6「アートが成り立つ条件」

          山口新聞の担当の方から了承をもらい、こちらのノートへ転載していく。 #6 アートが成り立つ条件  先週まで、マネやデュシャンによる歴史を揺るがした作品が、発表当時においては必ずしも評価されていなかったことを述べました。それは、アートの評価基準そのものを揺さぶったため、評論家がどう評価すれば良いのか分からなくなってしまったためです。しかし時が経ち評価基準が醸成され、現代ではマネやデュシャンは大きく評価されています。  アートは難しいといわれる理由を探す本連載においては、今

          山口新聞 東流西流 #6「アートが成り立つ条件」

          山口新聞 東流西流 #5「芸術とは何かと問う」

          山口新聞の担当の方から了承をもらい、こちらのノートへ転載していく。 #5 芸術とは何かと問う  前回、神や権力といった文脈から独立した作品を制作し、「アートは難しい」と言われる端緒となった作家、エドゥアール・マネを紹介しました。今週はもう一人の作家を紹介します。  それが、マルセル・デュシャンです。椅子の上に車輪を取り付けた「自転車の車輪」や、男性便器を横倒しにした「泉」という作品で有名なアーティストです。特にこの「泉」は、当時のアート界に衝撃をもたらしました。専門家で

          山口新聞 東流西流 #5「芸術とは何かと問う」

          山口新聞 東流西流 #4「文脈を断った絵画」

          山口新聞の担当の方から了承をもらい、こちらのノートへ転載していく。 #4 文脈を断った絵画  前回はニューヨークMoMAのアート鑑賞メソッドについて紹介し、作品を語り合う創造性の話をしました。  作品鑑賞の現場で「私はアートは詳しくないので…」といった声を聞くと、アートは知識を持っていないと楽しめない?という問いが生まれます。いや、そんなことはない、というのが先週の話でした。知識という外部から借りてきた言葉ではなく、作品そのものを良く観察し、自分の言葉を紡ぐことが大切な

          山口新聞 東流西流 #4「文脈を断った絵画」

          山口新聞 東流西流 #3「芸術は教えられない」

          山口新聞の担当の方から了承をもらい、こちらのノートへ転載していく。 #3 芸術は教えられない  前回は俳句を例に挙げ、形式を知ることで、作品を楽しめることを示しました。今回は知識に頼らず鑑賞を楽しむメソッド(手法)について紹介します。  MoMAの名称でも親しまれるニューヨーク近代美術館では、1980年代後半からある鑑賞の手法を研究し始めました。当時のニューヨークはスラム街もあり、優雅にアートを鑑賞する機会に恵まれない子どもたちも多く住んでいました。そこで当時のMoMA

          山口新聞 東流西流 #3「芸術は教えられない」

          山口新聞 東流西流 #2「知識は理解と同じ?」

          山口新聞の担当の方から了承をもらい、こちらのノートへ転載していく。 #2 知識は理解と同じ? アートが分かりにくいと言われるのはなぜか?というテーマの二回目です。前回は内容と形式という話から、アートの形式だけでも知っていれば理解の助けになる可能性を示しました。今回は形式としては馴染み深い、世界最短の文学「俳句」を例に考えてみます。  「古池や蛙飛び込む水の音」芭蕉の詠んだ有名な句です。もし、五・七・五という形式を知らなければ、意味のわからないただの短文と思うかもしれませ

          山口新聞 東流西流 #2「知識は理解と同じ?」

          山口新聞 東流西流 #1「分からない、の探求」

          2021年5月13日から毎週一回7週間山口新聞の「東流西流」というコラムを書かせてもらった。何を書いても良いという条件であったが、せっかくならば7回の連続したコラムに出来たら、ということで、「アートは難しいと言われる理由」について考えてみることにした。毎回540文字に収めるのに難儀したけれど、ローカル紙と言えども、普段届かない人へも届く可能性があるのでなるべくシンプルに一つのメッセージが伝わるよう心がけた。今思えばもう少しお楽しみ要素を入れれば良かったな、という反省はある。

          山口新聞 東流西流 #1「分からない、の探求」

          あいちトリエンナーレ2019 コーディネーター×会田大也 座談会

          収録日:2019年10月24日 参加者: [コーディネーター] 野田智子 近藤令子 谷薫 松村淳子 山口伊生人 山口麻里菜 [キュレーター(ラーニング)] 会田大也 ※ 本原稿は、あいちトリエンナーレ2019 ラーニング報告書 に掲載された座談会の未編集元原稿になります。報告書には紙面の関係でカットされた内容なども含みます。(約15000文字) ––今回の経験を経て、新たにつくられた理想とは? 会田|理想というのは常にどこかにあるわけだけど、その理想に向かって、現

          あいちトリエンナーレ2019 コーディネーター×会田大也 座談会