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善し悪しは、ゲームセットの条件次第。

様々な場面で何度も思い出すエピソードや格言というものがある。私の場合は、マネックス社長の松本大さんのブログ記事である。前後編からなるエピソードは、松本さんが若い頃に経験した強烈な体験を描いたものだ。投資会社の先輩に連れていってもらったカジノで、勝負の勝ち方について教わったエピソードだ(金融と聞いて汚い世界だと耳を塞ぐ人が居るのはやむを得ないことだが)。

このエピソードが興味深いのは、勝負を分けるのは「何を勝利条件と定義するかに拠る」という考え方が示されているところだ。似たようなことを私はアートの世界から学んだ。「そもそもから当たり前を疑う」という言葉によって示されているアートならではのものの捉え方も、言い替えれば「条件の変更による価値の転換」のことを示している。そして現在ビジネスの世界でも求められる「柔軟で創造的な思考力」というのは、概ね上記のような言葉として言い換えることができよう。

私たちが見えている世界というのは、ある立場から見えている風景だが、その風景は、イームズのフィルムを引用するなら10の24乗から-16乗までズームアウト/ズームインが可能な世界の、任意に選ばれたスケールの一つでしかない。スケールを滑らかに変化させ、状況を引いて見たり寄って見たりすることで、全く異なる、時によっては真逆の印象を描きだすことも出来るし、または全く異なるスケールの中にほぼ同じ風景を描き出すこともできる。

範囲は必ず滑らかに変化しなくてはいけない。ある縮尺から別の縮尺に一瞬で切り替わるのではなく、Googleマップのようにアニメーションのように変化する必要がある。なぜならそれらの条件は、AからBへ急に切り替わるということではなく、滑らかに移行していくような性質だという認識が、重要に思えるからである。

「良い/悪い」を語る場合、「それはどんな条件の元で?」と自問するように心がけている。時間範囲、空間範囲、ゲームセットの条件その他様々な条件オプションを開陳した上で検討しないと、実際には善し悪しは決められないはずだし、条件がちょっとずつ変わるということは、良いと悪いの間には無限のグラデーションが拡がっている、ということでもあるのだ。

様々な意見が飛び交うこの世の中で、良いと悪いを分断して考える思考は、もうそろそろ脱ぎ捨てなければ先には進めないんじゃなかろうか。

マネックス証券 松本大のつぶやき 金融列伝 
アーブデスクその1
アーブデスクその2

「オーキ。どれをやっても長い時間やれば負けるよ。期待値が100%以下なんだから。90%も97%も大した差じゃない。負けるだけだ。唯一勝つ方法があるとすれば、ゲームオーバーとなるカジノ側の最大損が小さいゲームで、一気に潰しに行くしかない。」

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