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シズライフ 第2話

〇中村家リビング (日曜日、PM12:00頃)

-シズ・台所で調理をしている。その後ろには死神が立っている。
-茜・リビングのソファーで雑誌を読んでいる。
-時計は正午を指している。

シズ(83): そろそろ出来上がるから、お皿用意してくれる?
茜(23): うん。

-茜・立ち上がり、シズの隣に行き料理を覗き込む。

茜: 今日はお母さんの好きなモノばっかりだね
シズ: この前電話があって、これ食べたい、あれ食べたいって言ってきたのよ。
茜: お母さん、海外じゃ絶対生きてけないよね。

-階段をドカドカと下りてくる音がする。
-健一・リビングに入ってくる。

健一(20):  あー、腹減った。

-健一・寝ぐせがついて、眠そうな顔。

シズ: おはよう健ちゃん。もうすぐできるから顔洗ってきなさい。

-健一・あくびをしながら洗面所へ向かう。
-茜のスマフォにLineの着信音が鳴る。Lineを開く。

茜: お母さん、駅でタクシー捕まえたって。
シズ: あらそう。じゃあ、もうすぐね。

-健一・洗面所から戻ってくる。肩にタオルをかけ、顔を拭いている。冷蔵庫を開け、牛乳をコップに注ぎ、リビングのソファーに座る。

健一: 母ちゃん、もう着くの?
茜: 今、駅からタクシーで向かってるって。あんたも手伝ってよ。

-茜・皿をテーブルに並べている。
-健一・返事はせず、スマホをいじりながら牛乳を飲む。

<少しの沈黙>

茜: ねえ、変な事聞くけど、おばあちゃんの後ろ、何かいる?
シズ: えっ?

-シズ・驚いた表情で茜を見る。
-健一・牛乳を吹き出しそうになる。驚いた表情で、茜と死神を交互に見る。
-死神・ゆっくりと茜の方を向く。

死神: 私が見えるのか?

-茜・死神の言葉に反応しない。

シズ: 茜、それどういうこと?
茜: あの、別におばあちゃんを怖がらせようとかじゃないよ。ここ最近、いつもじゃないけど、おばあちゃんの近くに透明の塗料を塗った、透明人間みたいなのが見えるの。多分、それ今私の方を向いてると思う。

-茜と死神は正面に向かい合う。

シズ: あなた、さっきの声聞こえた?
茜: 声?どういうこと?おばあちゃん、何か知ってるの!?
健一: 何となく見えるけど、声は聞こえないって事か。
死神: お前の様に見えるわけではないようだ。
茜: はっ?ちょっと健一、あんたも何か知ってるの?
シズ: ねえ、茜。冷静に話を聞いてね。

テロップ: 10分後・・・

-若シズ・若い姿になって、茜の前に立っている
-茜・放心状態で立ち尽くしている。

健一: おい!

-健一・茜の目の前で手をパンッと叩く。
-茜・はっと我に返る。

茜: ちょっと待って、話を整理すると、そこにいるのは死神で、おばあちゃんの寿命は180日。死神に触れれば若返り、もう一度触れれば元に戻る。
若シズ: まあ、賢い、その通りよ!
茜: 二人には死神の姿も声もはっきり分かって、私が分かるのはその存在だけ。
死神: それだけでも特別な事だ。
若シズ: それだけでも特別な事だそうよ。
茜: あの、本当におばあちゃんだよね?

-茜・若シズに近づき、まじまじと全身を見る。その瞬間、

茜: クサーーーッ!!!

-茜・叫び声をあげ、床に倒れる。

茜: クサイ!クサイ!クサイ!クサイッ!!!!

-茜・あちこちに転げまわる。

若シズ: 茜、大丈夫!!?

-若シズ・茜を抱きかかえる。

茜: クサーーーーイッ!!!!!

-茜・エビ反りになって跳ね上がる。

健一: ばあちゃん!!
若シズ: わ、私のせい!?

-若シズ・急いで置いてあったファブリーズを脇に吹きかける。

テロップ: 数分後

-茜・頭に冷えたタオルを乗せ、椅子にもたれかかっている。
-シズ・元の姿に戻っている。

健一: 若返りの直後は近づくなよ。死ぬぞ。
茜: は、初めに教えて欲しかった。
シズ: も、もう、大袈裟なんだから。
茜: 私、一応理系だから、この話すぐには鵜呑みにできないわ。
死神: お前の知らない世界がある。
健一: お前の知らない世界がある。
茜: それは次元の違う世界って事?
死神: お前には理解できない話だ。
シズ: 失礼ね!!! 茜が馬鹿だっていうの!?
茜: えっ?私、馬鹿にされてるの?
健一: 落ち着けよ。姉ちゃんも死神の力を見たろ。この話はほんとだよ。
茜: おばあちゃんが死んじゃうってことも?
健一: ・・・・
シズ: ええ。だから、残りの時間、今まで出来なかった事をやろうって決めたの。
茜: ・・・おばあちゃん、切り替え早すぎない?

<ガチャッ> 玄関のドアが開く音

中村芽衣子(53): ただいま!
シズ: あ、帰ってきた。

-廊下をリビングに向かって歩く音がする。リビングのドアが開き、芽衣子が入ってくる。大きなトランクを引いている。
-芽衣子・身長171cm、パンツスーツ姿、キャリアウーマン風、骨太体型、顔はシズの面影がある。

シズ: おかえり、芽衣子。
芽衣子: ただいま、お母さん。もうお腹ペコペコよ。
茜: お帰り、お母さん。
芽衣子: ただいま、茜。

-健一・椅子に座って、スマホをいじってる。
-芽衣子・健一の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

芽衣子: お帰りぐらい言え、高校生。

<昼食>

-シズ/健一/茜/芽衣子・ダイニングテーブルで食事をしている。
-死神・シズの後ろに立っている。

芽衣子: やっぱりお母さんの料理はおいしいわ。海外の料理はすぐに飽きちゃうのよ。日本人はやっぱり和食よね。

-芽衣子・美味そうにハンバーグを食べている。

茜: それ洋食だけどね。
シズ: 韓国はどうだった?
芽衣子: 韓国じゃなくてバンコクね。もう若者が多くて、凄い活気だった。きっと高度成長期の日本ってあんな感じだったのね。
茜: 仕事はうまくいったの?
芽衣子: うん、幾つかの繊維工場と話が進んでる。これでうちのブランドも本格的なアジア展開よ!話がまとまればアジアの統括部長も夢じゃないわ。
シズ: よかったわね~。
芽衣子: お母さんが大学まで入れてくれたおかげよ!ありがとう!

-芽衣子・シズにハグする。

芽衣子: ところで健一。アンタ、高校卒業したらどうするの?
健一: 別に決まってねえよ。どっかで就職するんじゃねえの。
芽衣子: つまり何も考えてないって事ね。あんたやりたい事無いの?
健一: 知らねえよ。

<健一の回想:貴方も自分の寿命が分かれば、自分のやりたい事をするでしょ。>

-健一・シズの言葉を思い出す。

シズ: 健ちゃんなら大丈夫よ。私の孫で、貴方の息子なんだから。
茜: ところでお母さん、なんか変だと思わない?
芽衣子: えっ、なにが?
茜: おばあちゃんの周りをよく見て。何か気付かない?

-芽衣子・シズの顔を間近で凝視する。二人の顔が交互にアップになる。

芽衣子: スーパーモデル?
シズ: やだもう~!

-シズ・芽衣子の肩を軽く叩く。
-二人は顔を見合わせ爆笑する。

茜: 違う!おばあちゃんの後ろの辺り見て!
芽衣子: 後ろ?

-死神・シズの後ろに立ち、芽衣子を見つめている。
-芽衣子・怪訝な顔で、シズの後ろをジッと見つめる。死神と触れるほどの距離。

芽衣子: 何?分からない。教えてよ。
茜: えっ?

テロップ: 数時間後

-茜・台所で洗い物をしている。
-健一・換気扇の下で煙草を吸っている。
-シズ・リビングのソファーに座って、ノートに何かを書いている。

茜: お母さんには死神が全然見えないんだね。あんたは、おばあちゃんが半年で死ぬってほんとに思ってる?
健一: ・・・ばあちゃん本人はそう思ってる。俺はまだ分かんねえよ。ただ、ばあちゃんのやりたい事は手伝いたい。
茜: そう、じゃあ私、死神の事調べてみる。科学からオカルトまで文献漁ってみるよ。何かおばあちゃんを助ける方法があるかもしれない。死神ってどんな姿なの?
健一: 黒づくめの人間で、いきなり消えたり、天井に逆さまに立ったりできる。はじめて見た時はマジでビビったけどさ・・・。
茜: 何?
健一: いや、確かにあいつは普通じゃないんだけど、そんな悪い奴じゃないかもって。
茜: ・・・あんたさ。
健一: 何だよ。
茜: (洗い物を)いい加減手伝えよ。

シズ: できたわ!!

-シズ・キッチンにいる健一と茜を見る。

茜: 何ができたの、おばあちゃん?
シズ: 二人共こっちに来て。

-健一/茜・シズの横に座る。

シズ: これからやりたい事を書いてみたの。また増えるかもしれないけど,
見てみて。

-健一/茜・ノートを覗き込む。

健一: もうできたんだ。結構あるな。
茜: ・・・あのさ、おばあちゃん。私まだ半信半疑だけど、おばあちゃんのやりたい事を手伝いたい。もし、本当におばあちゃんが半年で死んじゃったら絶対後悔するから。
シズ: ありがとう、茜。

-シズ・茜の手を握る。

茜: (ノートを指差して)これとこれ、あ、これもあんたのとこでできるでしょ。これなんか私のほうで何とかできる。
健一: おい、勝手に決めるなよ。

-3人はワイワイと楽しそうに話している。

健一: で、何から始めるんだ?
シズ: それはもう決めているの。

-シズ・ノートのある箇所を指差す。

テロップ:数日後

〇介護施設・スタッフルーム

-朝礼の為、職員が集まっている。健一と瞳(23)の姿もある。
-長谷川(室長)・部屋に入ってくる。手をパンパンと叩き、皆の注目を集める。

長谷川: おはようございます。今日から新しく働いてくれる方を紹介します。どうぞ中に入ってください。

-若シズ・部屋の中に入ってくる。
-職員から歓声があがる。

若シズ: はじめまして、中村シズと申します。今日からよろしくお願いします!

-若シズ・髪を束ね、エプロン姿。


<数日前、シズが健一、茜とノートを見ている場面>

-シズが指さした箇所に「働く」と書いてある。

テロップ:シズの寿命、残り「174日」


第1話 https://note.com/daisy301/n/n4b4002a877f6

第3話 https://note.com/daisy301/n/n047ce718e85c

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