見出し画像

セミファイナルファンタジー

長ネギが家に余っていたし麻婆豆腐でもつくろうと、木綿豆腐を買った帰り道。

恐れていた事態が起きました。


……………………………………。

玄関のドアの前にあいつが……

嫌いな虫ランキング殿堂入りの……

夏になると日中夜問わずうるさく鳴きわめいて……

耳障りな羽音をたて……

他の虫と比較して圧倒的に質量・サイズ感がバグってる……

あいつが!!!あいつ!!!

せ、セミ…(おええええええ)

だめだ文字面だけでもキモい

SEMIが!!!!!!!(おええアルファベットでもまだキモい)

Sの者が!!!!!!!

いる!!!


私たち夫婦が汗水垂らし働いて家賃を払っている、癒しの我が住処の!ドアの!真前に!!!!

いる!!!!!!!!!!

うわあああああああああああああああ


画像5


------------------------------------

パニックになった私は、とりあえず家から離れ、最寄りの某ブッ◯オフに避難することに。

願わくば、外している間に飛び立ってどこかに行ってほしい。

もう一度戻ったら「なーんだ!もういないじゃん♡」となってほしい。

立ち読みをして心を鎮めようと思いましたが、どんな本を手に持っても、どれだけページをめくっても、あのSの姿が頭から離れません。

「FIREでセミリタイヤがなんちゃらかんちゃら〜」

という中古本のタイトルを見ても

セミ・リタイヤ……!??」

と睨みつけてしまう始末です。


そうだ、「セミが生きているか死んでいるかの見分け方」という話を昔Twitterで見たような。

思い出した私は「セミファイナル 見分け方」と検索。

Sの画像が大量に出てくる!!!きもすぎ!!!

おええええええええええ

震える指先を働かせ、懸命に調査した結果、足が閉じてるとお亡くなりになっているらしい。

脳裏に焼きついた、家の前のSの足は完全に開いていた。

はい、終わった。もう終わりです。


もうこれは、夫が帰ってきたら一緒に家に入ることにしよう。しばらくここにいよう。寺田心くんの店内放送を聞いていたら多少は気が紛れてきた。1人はこわいけど、2人ならなんとか退治できるかもしれない。


残業中の夫に事情をLINEし、一緒に家に入りたい旨を伝達。

しかし……

画像1

ガーーーーーン


終わった。


ずっと店内にもいられないので、覚悟を決めた私は再度自宅に向かうことにした。

画像3

ハローキティのデザイナー山口さんの本を見つけたので、避難させてくれたブッ◯オフへの感謝の気持ちも込めて購入…。

まるで私の心と同化しているかのような、キティちゃんの涙。

------------------------------------

家に帰るのに、丸腰では心もとない。

コンビニに寄り「殺虫剤」「ビニール傘」を購入した。攻撃と防御だ。この際、金に糸目はつけない。

店員さんに

「傘すぐ使われますか?ビニール外します?」

と聞かれ、私は力強くこう返した。

「お願いします!」

全く雨は降っていない。しかし、すぐ使うのだ。

私には今、運命の暴風雨が吹き荒れている。

------------------------------------

家に向かう道すがら殺虫剤のビニールを外し、数度草むらに試し撃ちをした。

セミ用ではない(当たり前)が、強力なジェット噴射だ。

画像2

「虫にきびしく、人にやさしい」

パッケージのこの言葉に、優しく背中を押されるようだった。

------------------------------------

再び家の前に行くと、やはりまだいる。

まずは観察。まったく動かない……

死んで……いるのか?

傘を左手に構え、さながらフェンシングの選手のように殺虫剤をもった右手を精一杯伸ばし、殺虫剤を吹きかけてみる。

画像4

バタバタバタバタバタバタ

ギャーーーーーー!!!!!


だめだ生きている。

これは長期戦になるぞ……

Sの隙を見て、殺虫剤を吹きかける!

暴れるS!

ギャーーーーーー!!!

傘で防御!

距離を取る!

動かなくなったタイミングで傘で物理攻撃!

暴れるS!

イヤーーーー!!!!

いったん休戦!離れた場所から睨みつける。

ハアハア……

このような異常行動に、道行く人は怪訝な目で私のことを見ています。


次第に、私の頭の中にはBUMP OF CHICKENの「グングニル」が流れ出しました。

容易く人一人を値踏みしやがって

世界の神ですら彼を笑う権利なんて持たないのに

シュー!!!

バタバタ…バタバタ……


死に際のセミ

その手にキンチョール

狙ったセミは!!!必ず!!!貫く!!!!

シュー!!!!


だいぶ弱ってきたけど、ずっとどかすことが出来ず格闘していると、

「虫?取りましょうか?」

背後から声をかけてくれたのは、ワンちゃん散歩中のひとりの男性。

「セミか。良ければ、蹴っ飛ばしますよ。」

そう言ってまだジタバタしているSをヒョイ、ヒョイ、ヒョイと足でドリブルして遠くへ追いやってくださいました。

ワンちゃんは突如飼い主さんの始めたセミドリブルに合わせて、ワン♪ワン♪ワン♪と楽しそうに尻尾をフリフリしておりました。

「ウチの娘もセミがダメなんですよ。苦手な方多いですよね。」

そう優しく微笑んで、神は去ってゆかれました。


そうして、再び平穏が訪れたのです。


もし私が時の権力者であれば、この災禍における苦難から救ってくれたあの神とシェットランドシープドッグの功徳を末代まで語り継ぐため、「蝉蹴犬寺(せみけけんじ)」を建立し、日々手を合わせることでしょう。

そしてシェットランドシープドッグの絵馬やお守りをつくり、後世にもその功徳を伝えていくのです。

画像6

「どんな苦しみの中にあっても、蹴飛ばし平穏をもたらす」蝉蹴犬寺のご利益……


そんなことは出来ないのでnoteに書きました。


本当にありがとう………



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?