【 アストリッドとラファエル 文書係の事件録】
NHKで放送されていた、フランス発の本格ミステリードラマ、『 アストリッドとラファエル 文書係の事件録』が、先日、最終回を迎えた。
私が、このドラマに関心を持ったのは、ただ単にミステリードラマという枠を超えた、人との付き合い方に気づかせてくれる、そんな別の側面がとても興味深かったからである。
アストリッドは自閉症で、様々な制約というか、病気の症状が彼女の日常生活の邪魔をすることが多いのだが、それでも彼女は捜査資料を基に、事件の解決に於いて実に類稀なる才能を発揮する。
一方、警視のラファエルは、はじめはそんな彼女との接し方が分からず、戸惑いを隠せなかったが、共に事件を解決させていくうちに、自閉症であるアストリッドにしか気づけないことにハッとさせられたり、そんな彼女の行動パターンが理解出来るようになって来たことで、彼女が本来持っている人としての魅力に気づき、惹かれ始めて行く。
それからというもの、二人は適度な距離感を保ちつつ、心は非常に親密な関わりを持つように変わっていった。
自閉症の患者の皆が皆、同じ症状ではないにしろ、自閉症の患者のベースにある特徴的な症状というものを教えてくれたドラマでもあり、これから、私が自閉症の患者と会う機会があった時に、どう接すれば良いかということを、僅かながらでも知れたこと、その点でも非常に得るものが多かった。
私は、このラファエル役を演じた、ローラ・ドゥヴェールがどちらかと言うと好きなのだが、
その理由は、彼女の声の吹き替えを担当した、声優の林真里花さんの声が一因でもある。
ラファエルを演じるローラの持つ雰囲気に、彼女の声がピタリと私の中でハマったのだった。
彼女のお父様が、著名な俳優である林隆三さんだったことを知った時は非常に驚いたが、それ以上に驚いたことがもう一つあった。
ラファエルを演じたローラの父、 パトリック・ドヴェールは1982年、彼女が三歳の時、35才の若さでライフル自殺を遂げていた。
私は、その事実を知って非情な衝撃を受けた。
私は、ローラ・ドゥヴェールの存在を、このドラマで初めて知ったのだが、彼女の纏う少し寂しげな雰囲気が、何だか妙に私の心に酷く残ったのだった。
その理由が、彼女のお父様の不幸な出来事が原因だったかどうかまでは、私には分からないが、その事実を知った時、私は何だか妙に納得したのだった。
いつもだったらきっと、アストリッドを演じた繊細で不安定なサラ・モーテンセンを、私は迷わず好きな女性として挙げたと思うのだが、今回に限ってはラファエル刑事を演じた、頼り甲斐のある姐御肌のローラに興味を惹かれた。
どうも私は、こういう悲劇的でドラマチックな人に惹かれる傾向が強いようであることを、改めて認識したのである。
来年五月まで、気が遠くなるが楽しみに放送を待つとしよう。
2022年10月3日・書き下ろし。
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