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潤い

 もう春もそこまで来ているというのに、湿度計を見れば連日のように空気が乾燥している。それを感じさせるように、人と話をしていると喉がガラガラして、「失礼」と詫びて何度も咳払いをする。唇もパサパサと乾いて、仕舞いには切れてしまうこともしばしばだった。

 毎年、唇の切れには市販のリップクリームを塗ってその場を凌いできたが、体質に合わなくなってきたのか、更に唇は荒れだし、ベビーワセリンに変えて対処してきたが、昨年末、どうしようもなくなった。唇のトラブルに悩んでいる人は、案外多いのではないだろうか。

 毎年、この時期はフィギュアスケート選手の宇野昌磨選手が見事な演技を披露し、金メダルや銀メダルを獲得する姿を見てきた。

 彼が演技後にインタビューを受けている時、アップになった顔を見て私は彼の唇に目をやった。それは痛々しいくらい、ガサガサで、ひどい時には縦にひび割れている。体質もあるのだろうが、無意識に唇を舐めずにはいられない質なのかもしれない。あれは唇にとっては非常に良くないという。しかし、悪い癖というものは何があってもそう簡単には抜けないものである。それに加えて、まめに唇の手入れをしていないのだろう。
 ここ数年、宇野選手の唇はずっとガサガサのままだった。それが、今年は潤っている。やはり、いや、これ以上は言うまい。言うだけ野暮というものである。

 唇がガサガサで困っている人は、唇を潤すきっかけを作ること。それができない人は皮膚科へ行くのが賢明である。私は昨年末、唇のガサガサは皮膚科で良くなることを知った。
 私の唇は例年になくガサガサで、荒れ放題に荒れ果て、ついには縦に切れてしまった。こうなるともうお手上げである。
 食べても痛い、笑っても痛い。元通りになるまで一週間近くかかるのである。その間、私は酷く愛想の悪い人にならなければならない。うっかり笑おうものなら、やっと接着し始めた唇がピリッとまた割れてしまう。この何日かの辛抱が水の泡になってしまうのである。そんな思いをずっとしてきた私だったが、蕁麻疹で診察してもらうついでにこの唇についてドクターに訊ねた。すると、ロコイドとプロペトという塗り薬を処方してくれた。

 早速、家に帰ってから唇に一日二回、しっかりと塗り込むと、三日目くらいには嘘のように唇の状態が良くなっていた。それからというもの、私はプロペトを唇が乾いたなと感じる度に唇に塗り込んだ。普段から乾燥させないこと、そして、唇を舐めないことが唇の乾燥を防ぐいちばんの予防である。

 あまりにも唇の荒れや切れが酷い人は、一度、皮膚科を受診してみては如何だろうか。


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