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「大日さん」の森

 阪急西山天王山駅から大山崎駅方面へ線路沿いの住宅街を抜けると広大な畑が広がる場所に出る。この地域は山伏と呼ばれ古くから農業が営まれてきた場所である。

 広い畑の真ん中には「大日さん」と呼ばれるこんもりとした小さな森がある。森の中には三体の仏像が祀られており、賽銭箱と花、そして大量のどんぐりが供えてある。

「大日さん」の森

 この森の柿の木を切ったために災難に遭ったという話や、不治の病の村人が石仏に日参したところ病が治ったという話など「大日さん」には語り継がれたさまざまな言い伝えがある。

 ある時、山伏を代々耕してきた兵左衛門の家が火事で焼けた。家を建て直すためやむなく山伏の土地を売ることになった。
 すると次の日から夢枕に大日如来が現れて「ひょうざえもん、はようかえしてくれ ひょうざえもん、はようかえしてくれ」と毎夜唱えたという。
 手放した土地の中に山伏の塚という小さな森があり、大日如来の石仏が祀られていたのだ。
 祟りがあっては困るということで森は元通り兵左衛門の土地となった。

 この言い伝えには兵左衛門の夢枕に立ったという話、買主の夢枕に立ったという話、両方の夢枕に立った話等があるらしいが、いずれにしても森の土地は今でも兵左衛門の子孫が所有しているそうだ。

 大日如来の石仏はいつ頃からあるものか定かではないが、鎌倉時代に造られたものではないかと云われている。
 粗末に扱うと祟りがあるが大切に祀っていると願いをかなえてくださるということでいつしか村人たちに「大日さん」と呼ばれ、大切にされてきたそうだ。

 広大な山伏の畑も最近は宅地化工事が進められていて半分ほどが失われつつあるが、「大日さん」は今でも地域の人々や兵左衛門の子孫によって定期的にお参りが行われている。


参考文献
大山崎町商工会HP https://kyoto-oyamazaki-fsci.or.jp/know/dainichi/

大山崎町文化協会だより第2号(平成10年)

山城国大山崎荘総合研究別刷
円明寺の民俗

大山崎ふるさとガイドの会HP 
https://www.kyoto-ofg.org/dainichi.htm



(「宙の音」より)




展覧会のご案内

「宙の音」(そらのおと)

2024/1/23(火)-1/28(日)
11:00-18:00 入場無料

京都写真美術館2階
ギャラリー・ジャパネスク
(京都市営地下鉄東山駅下車徒歩5分)


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