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絵画歴史のイノベーション その3抽象絵画の誕生

これまで印象派、ピカソのキュビズムを取り上げてきましたが、どちらの絵画も何が描いてあるかは分かるかと思います。ピカソの「泣く女」といっても、確かに泣いている女の人に見えます。対象となるモデルをどのように観たらそう見えるのかは分かりませんが(笑)

いよいよ、絵画を見ても、一瞬何をモデルとして描いているのかが分からない絵が誕生します。それがカンディンスキーのコンポジションシリーズです。

大学講師から画家に転身したカンディンスキー

コンポジションシリーズの第一作目が1910年に発表されていますので、ピカソのキュビズム作品発表(1907年)とほぼ同時期となります。違いで言えば、ピカソ(1881年生まれ/スペイン人)は幼少期からスペインで画家を目指し美術学校に入学し、1900年以降フランスで絵画活動をしていましたが、カンディンスキー(1866年生まれ/ロシア人)はロシアで弁護士になるためにモスクワ大学法学部入学し、卒業後大学に残り、30歳の時に法学部の講師となります。その後、1895年にモスクワで開催されいたフランスの印象派展でモネの作品「積藁」に影響を受けて、輝かしい大学での地位を捨てて、画家になることを目指し、ドイツで創作活動をスタートさせました。その創作活動の中で、今回紹介する抽象絵画「コンポジションシリーズ」を発表しています。晩年、1934年にはフランス(パリ)に移住しています。
しかし、人の人生を変えてしまう絵画の力は本当にすごいですね。。。

モネ「積藁」(1985年)カンディンスキーが見た積藁かどうかは分かりませんが・・・

カンディンスキーのすごさ

まず、カンディンスキーが発表したコンポジションシリーズを見てみましょう。

カンディンスキー「コンポジションⅤ」(1911年)
カンディンスキー「コンポジションⅧ」(1923年)シリーズで最も有名な作品

みなさんにはこれが何を描いた絵に見えるでしょうか?

芸大で習ったときは、これは音もしくは音楽のイメージ世界を造形表現にしたと習いました。そもそも「コンポジション」とは構図という意味ですが、他にも音楽作品という意味もありますので、そうだと思います。
ただ、そういっても絵画は自由に観て、感じるものなので、それが正解ということはありません。
上の絵画は指揮者がタクトを振っているようにも見えますし、上部にはカニのようなものも見えますね(笑)一方、下の絵画は線や円、四角形など、図面がたくさん見られます。後にカンディンスキーは円に興味を持ち始めるのですが。

これまでの絵画は目の前の情景(画像)をキャンパスに表現していたのですが、カンディンスキーは目に見えない世界をキャンバスに表現したことがすごくイノベーティブなことだと思いました。印象派、キュビズムに続くようなイノベーションだと理解して頂いたでしょうか(笑)

カンディンスキー

カンディンスキーはなぜ抽象絵画を描けたのか?

カンディンスキーがなぜこのような絵画を描くようになったのかは、いろいろと調べてみましたが、実際のところはよく分かりません。しかし、私が思うのは、カンディンスキーのキャリアと影響があると思います。
多くの画家は幼少期から美術学校に通い、芸術アカデミーなどで芸術センスやスキルを磨いていきます。学校では当然ながらデッサンを中心としますので、目の前の造形を描くのが当たり前です。しかし、カンディンスキーは大学の講師で美術の専門家ではありませんでした。そのスタートの違いが、美術の世界で当たり前となっている考え方から脱することができたのではないかと思います。ビジネスの世界でもそうですが、イノベーティブなことをするのは、その業界にいる人ではありません。よそ者、馬鹿者、若者が常にイノベーションを推進していくのです。美術界から見たらよそ者だったカンディンスキーだからこそ抽象絵画が描けたのかもしれないですね。私も経営コンサルタントという立場からアートの世界に入り込んでいこうと考えていますが、その視点でイノベーションを推進できればと考えています(笑)

シュプレマティズム(絶対主義)の表現

私の根拠のない感想はこのぐらいにして、カンディンスキーのことを調べるなかで面白い解説があったので共有しておきます。

《コンポジションVIII》は、ワシリー・カンディンスキーが30年ほどかけて取り組んだ10枚の《コンポジション》シリーズの中の一作品である。制作された1923年は、彼がバウハウスで教鞭を取っていた頃であった。絵画や彫刻、建築、工芸に革新的な方法を用いたドイツの総合造形学校である。
作品の特徴
本作は、前作の《コンポジション》V(1910年)、 VI(1913年)、VII(1913年)を特徴付けていた色彩のうねりや折り重なる流線、それらが生み出すカオス的な雰囲気とは一変した作風となっている。本作では円や半円が互いに呼応するかのように点在し、大小様々な三角形と多数の長方形が画面全体に黒い線によってリズミカルに刻まれている。そして画面左上の大きな黒い円がすべてを統合するような存在感を見せている。
シュプレマティズム
落ち着いた色彩を背景に、幾何学的な要素のみでダイナミックに構成されたこの作品は、まさに美術におけるシュプレマティズム(絶対主義)を代弁するものである。シュプレマティズムとは、ロシアの画家マレービッチが1913年に提唱した抽象絵画の観念。絵画は四角、円、三角形、十字形で構成され、それ自体で価値をもつべきとするものである。カンディンスキーは1911年に『芸術における精神的なもの』において、「芸術の第一目的は作家の奥にある感覚の表現である」と述べている。まさに、この作品の「内的必然性」は私たちに多くを語りかけてくるのである。

MUSEYより

お恥ずかしいことにシュプレマティズム(絶対主義)とか初めて聞いたのですが、そのような考え方がカンディンスキーにも影響を与えたのかも知れないですね。

次は、「絵画歴史のイノベーション その4コンセプトアートの誕生」を紹介します。

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