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This is startup - 言葉の定義


【要約】

この文章は、言葉の定義の重要性について語る意見文です。著者は、言葉の定義が会話を成立させるための必要条件であり、また、抽象概念と向き合うキッカケになると主張しています。その例として、「スタートアップ」「知財」「戦略」という言葉を取り上げています。著者は、これらの言葉には人によって異なる定義があることを指摘し、自分の定義を示しています。著者は、定義をすり合わせることで、議論が楽しくなり、学びが深まると述べています。著者は、辞書の定義に縛られず、自由に言葉を定義することを勧めています。

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はじめに

言葉の定義は重要である。

言葉の定義のズレが認知されないままなされる会話には、オチがない。
いつからか僕は、このような会話を「日本人にスワヒリ語で語りかけているようなもの」と例えるようになった。

最もやっかいなのは、会話が成立していないことに気づかずに、全員が「わかった顔」をしてしまうことだ。

これらのボトルネックは、未定義の言葉にあると思っている。

本記事では、言葉の定義の重要性を改めて言語化しておきたい。
裏の狙いは、僕を評して「あれ?こいつ、やたら細かいことを気にするけど、さては小心者だな」と思う人を減らしたい、ということにある。

「スタートアップx知財」の世界で未定義の言葉三選

僕はここ数年、「スタートアップx知財」の世界で、様々な立場の知財家と、様々なテーマで会話をしてきた。

こなした会話の立場xテーマのバリエーションの広さには結構自信がある。

そうした多様な機会から、「スタートアップx知財」の世界で定義が揺らぐ言葉の傾向が見えてきた。

それが次の3つの言葉だ。

  • スタートアップ

  • 知財

  • 戦略

これらの言葉を一つ一つ紐解いてみたい。

スタートアップ

【僕の定義】社員がランウェイを認知している企業

「スタートアップ」。
僕の主戦場である。

「スタートアップ」という言葉が使われるとき、以下のような文脈である場合が多いように感じる。

  • 社歴の浅い会社

  • 社員数の小さい会社

  • 新しいことにチャレンジしている(新規事業を行っている)会社

しかし、「社歴の浅さ」、「社員数の少なさ」、「新しさ」の基準は人によって異なる。
つまり、上記の定義では、ある会社を指して「スタートアップ」と呼ぼうとした場合、呼び手によって「中小企業」や「ベンチャー企業」といった別の言葉を持ち出すことを許容しなければならなくなる。

これでは「定義」とは言えない。

では、「スタートアップ」とは何なのだろうか。

僕は、「社員がランウェイを認知している企業」がスタートアップだと思っている。

弊Blogでは、以前、スタートアップと大企業の違いについての記事を投稿した。

あれこれと思考を巡らせた結果、大企業とスタートアップの違いを「ランウェイ」で語ることが最もしっくり来る、との結論に言った。

弊Blog「This is startup - スタートアップと大企業の違い -」

この記事では、スタートアップと大企業の対比でよく挙げられる「スタートアップは大企業よりスピードが速い」件(つまり、スタートアップのスピード感)について解説している。

「スピード感」こそがスタートアップの特徴である。
そして、「スピード感」を生み出している一番の要因が「ランウェイ」だ。

ランウェイを知らずして「スタートアップマインド」を語ったとしても、そこにあるのは空想の世界に過ぎない。

平均的なランウェイは、1年6ヶ月とも言われている。
今日出した特許出願が公開される頃(出願日から1年6ヶ月後)には資金が尽きる企業。
それがスタートアップである。

前述の通り、ランウェイは最低でも1年間を目安に確保しましょう。一般的な企業は18ヶ月のランウェイ確保を理想としていますが、起業したてのスタートアップ企業には難しいはずです。最初は12ヶ月の確保を最低ラインとして、業績や事業拡大にともなって徐々にランウェイを長くしていくと良いです。

「スタートアップ企業に必要なランウェイとは|重要な理由や計算方法をご紹介」(Sales Cloud)

知財

【僕の定義】広義の知財

「知財」、正式名称は「知的財産」。

日本弁理士会九州会ウェブサイトには、「知的財産」の定義がわかりやすく示されている。

知的財産とは
人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物などには、財産的な価値を持つものがあります。そうしたものを総称して「知的財産」と呼びます。知的財産の中には特許権や実用新案権など、 法律で規定された権利として保護されるものがあります。 それらの権利は知的財産権と呼ばれます。 主な知的財産権には以下のものがあります

日本弁理士会九州会の公式サイト

この定義に異を唱える知財家はいないだろう。
たしかに正解が書かれている

ありがたいことに、「スタートアップx知財」という題目で講演の依頼を受けることがある。
しかし、大半のケースにおいて期待されるのは、「知財」ではなく「特許」の話だ。

なぜ、僕に講演の依頼をオファーする人は、「スタートアップx特許」という題目を提示しなかったのだろうか。

ましてや僕は、「広義の知財」や「再定義された知財」という考え方を持っている(話が長くなるので、僕にとっての「知財」の定義は、近日連投予定の別の記事達に委ねることにする)。

すると、講演の主題が、「一般的な知財」(日本弁理士会九州会が定義した意味)なのか、「広義の知財」なのか、そもそも単なる「特許」なのかがわからなくなる。

主題のわからない講演は明確性要件違反であり、特許に限定された事項を「知財」と呼ぶのはサポート要件違反だ。

特許の実務家にそのような話をする勇気は僕にはないし、知財の右も左もわからないスタートアップ関係者に誤った言葉を浴びせることは専門家のはしくれとして断固回避したいと思っている。

「知財」という言葉は民主化され過ぎた。
良くも悪くも、安易には使えなくなってしまった

「知財」

それは、自分の専門領域を表す大切な概念だからこそ、最も真摯に向き合いたい言葉でもある。

戦略

【僕の定義】リソース配分とシナリオ

「知財戦略」という言葉に触れる機会が増えた。
僕に依頼される講演の頻出テーマの1つでもある。

だがしかし、「戦略」が定義された上でスタートした会話は一度もない。
ほぼ毎回、「戦略」の定義の議論をけしかけている気がする。

僕は、「戦略」を「リソース配分とシナリオ」と定義している。
もちろんこれは絶対正解ではないが、定義がなされないまま「戦略」の話が進むことに猛烈な違和感を覚えるようになって久しい。

僕にとっては、「戦略」ではなく、「作戦」や「戦術」の話をされていると感じるときも、お相手は「戦略」と呼んでいる。

戦略・戦術・作戦・兵站、それぞれ説明できますか?【マーケティング】
(しょうご, 2021/02/06)

ちなみに、僕自信、「戦略」を未定義の言葉として使ってしまったことがある。
そのときに会話をしていた経営者(元戦略系コンサル)から一喝された。
僕自身、「戦略」という言葉の魔力を身をもって味わった知財家の1人である。

まず言葉の定義からはじめよう

まず言葉の定義からはじめよう。

本記事で僕が言いたいことは、これに尽きる。
言葉を定義することは、会話を成立させるための必要条件だからだ。

更に、言葉を定義することには、副次的効果もある。
それは、今まで安易に使っていた抽象概念と向き合うキッカケになることだ。

「スタートアップ」、「知財」、そして「戦略」。

これらの言葉の定義を全員ですり合わせた上で、議論を始める。
それはそれは楽しい時間になるだろう。

定義は人それぞれ違っていい。
「お互いの定義が異なる」こともまた学びの宝庫だ。

言葉を定義することには、メリットしかない。

まとめ

本記事では、「言葉の定義」の重要性を語った。

「言葉の定義」は自由だ。

辞書はあくまで「共通定義」(出発点)に過ぎない。
辞書の定義をそのまま使う必要はない。

大事なことは、どんな定義にするかではなく、定義することそのものだ

まず言葉の定義から始めよう。

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Prompt is 言葉の定義を説明するブログのキャッチ画像を作って下さい。
辞書をモチーフにした画像が良いです。

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