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介護はもっとずっと、身近にある〜丸くなって対話しよう⑷〜

人生100年時代、何歳になっても住み慣れた家や地域で安心して暮らしていくにはどうしたらいいのでしょうか。前半では、大切なご家族を介護している町民さんと、介護される側の町民さん、介護保険外サービスを提供する看護師、そして医療の担い手である医師が、それぞれの立場から介護について語ります。後半は、介護と共に生きていくために、過ごしやすい社会やこれからの介護、教育について。介護は思っているよりも、実はもっとずっと身近にあるようです。縁起でもないと思わずに、いつかくるその時を、「今」考えるきっかけに。

※この記事は、ケーブルTV大山チャンネルで2021年9月に放映された「大山100年LIFEシリーズ〜いつか行く道 在宅介護〜」のスタジオトークの語りを元に再構成しています。
出演者:井上道彦さん(60代)、勝部翠さん(60代)、二宮靖徳さん(60代)
かんべたかこさん(介護保険外サービス「わたしの看護婦さん」代表)
井上和興さん(大山診療所所長)、中山早織(進行・看護師)

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介護を当たり前に受けるために、過ごしやすい社会とは?

道彦:プライバシーの時代というんですけれど、近所が助け合う雰囲気を作ったらと思います。私は人が喜ぶことをやってしまう方で、さつまいも蒸して近所に配ったり、草が生えとったらよその家のを刈ったりするんですよ。すると、近所の人がえらい優しくて、梨やスイカをくれたりいろんなことしてくれるんです。自分がやっている以上に人から素晴らしいことをしてもらってるので感謝しております。

勝部困っている人が声をあげることも大切かなと思います。私もはじめは、外に介護の話もできないしじめっと暮らしていたんです。でも、ケアマネさんとか住宅改修の大工さんとか在宅介護や訪問リハビリなど、入れ替わり色々な人が家に来るようになってから、私の気持ちが変わりました。今までみたいに玄関の鍵を閉めておかずに網戸にしておいたら、「今日は調子どうですか?」ってフランクに入って来られる。初めはびっくりしましたけど、主人も構えなくて済むしいいなと思い始めて。慣れたらいろんなことも相談できるし、私の気持ちもすごく楽になりました。こういう人達に助けてもらえば、私一人が頑張らんでもいいんだと思ってね。

それからは、近所の人にも「うちのお父さんが今大変なんだ」なんて言うと、「それはえらい(大変だ)なー」とか立ち話をしてくれたり、野菜をくれたり、ええ情報を教えてくれたりして。

近所の人も、本当は気になっているんだけど、昔から住んでる人と違って私みたいに町外から入ってきた人の場合、入っていく具合が分からんというか。この頃は、私が自分から発信しないといけないということに気がつきました。

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最新の技術も昔ながらのつながりも、受け入れていく柔軟さ

かんべ:これから介護をしていく40〜60代は、タブレットやスマートフォンを使いこなしていくというのが大事かなと感じています。
介護保険だと資格がある人が訪問しなくちゃいけないというルールがあって。最短だと20分程のコースがあって、ヘルパーが内服薬のチェックをしたりするんですけど、そこに行くために車に乗って往復で1時間かかったりする。そうなると、例えばタブレットを置いておいて「お薬飲んでください」って遠くで離れた介護人材が声をかけるという方法もあるわけです。

中山同時に、超ローカルな近所付き合いをやっていくことも大切なのではないかと思いました。30分かけて遠くのご家族や有資格者が来るよりも、隣の家の人が顔を見に行ったりするのもいいんじゃないかなと。周りの人も「こんなことしたらお節介かな」って思うこともちょっとやってみるといいのではないでしょうか。

かんべ:資格がなくても愛情があればね。ちょっと声かけようと覗いたら倒れとる!診療所に電話しましょうとか、そんなコミュニティができると素晴らしいなと思います。THE昭和な生活なんですけど。

井上:基本は柔軟に適応していく力かなと思って。最新の技術も受け入れつつ、今までの生活も受け入れる。そういう人が増えてくると、介護や人生の捉え方が変わってくるのかなって。「しんどいんです」ってポロっと言えるような社会になると、「良い技術があるよ」とか「こういう人がいるよ」ってことがつながっていくのかなと。弱みを見せられる大山町になっていくためには、自分が弱みを見せるという事がまず重要なのかなと思ったので、これからも弱みを出していこうかなと思います。

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ロールプレイや語りによる「介護の教育」を

かんべ:今の学校教育では、障害を持った人や介護を受ける高齢者の感覚を擬似体験する体験はするんです。でも、もし自分の親の介護が始まったらってことはライフデザインで勉強しない。これから大山町を出ていく子どもたちに、あなたが仕事をしている最中や、あなたの育児が始まった時に親の介護も同時にやって来るかもしれないということを、是非とも想像して欲しいですよね。自分に出来るのかなあって。

井上戦争の語り部とかみたいに、介護の語り部に小学校とか中学校とかで語ってもらうとか。僕自身も中学校の時に祖父が家で亡くなった経験があるので、家で母親がしていた介護をちょっとはイメージできるんです。でも、核家族の場合はそういう自然な教育がないので、学校教育や地域の教育で取り組んでいくっていうのもアリなのかなと思いました。

かんべ:なかなか10代の子達に介護と言っても難しい部分はあると思うんですよね。
私どものところにも、県外にお住まいの50〜60代の男性の方からの相談事が多いです。自分が育った時には、親御さんから「しっかり勉強していい大学を出ていいところに就職しなさい」って教わってきた。でもまさか自分が親の介護をすると思わなかったから、「地域包括支援センター」とかの検索ワードが分からないわけですよ。どうにかしたいけど、どうしたらいいかわからない方も沢山いるのが現状かもしれません。
とにかく、困ったら親御さんが住んでいる町役場に相談してみてください。これだけ慰安旅行とか充実してる大山町ですから、窓口に電話しても担当課に繋げてくださると思います。

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記事制作:中山 早織
元書店員の助産師・コミュニティナース。2014年に東京より鳥取へ移住。現在は大山町で地域活動や聞き書きを行う。大山100年LIFEプロジェクトメンバー。映画では小道具・衣装を担当。

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