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第18章〜越境EC化によるPMF達成と成長

越境フリマアプリ進化のβ版ができた。まずはWEBで開発したが、すぐにアプリじゃないとリテンションが厳しいことがわかり、2週間でガワアプリ化した。中国語は繁体語と簡体語、英語の3言語でスタートした気がする。それぞれの言語がネイティブなメンバーをインターンで採用し、海外の人がはじめてみても、おかしな表記になっていないように翻訳をしっかり行ったつもりでいた。しかし、ここに思い込みという落とし穴があった

β版でテスト配信して数字を見ていくが、台湾で思ったように使われない。日本のリユース商品は人気で、町中に日本のリユースショップもあり、現地で日本から直接買えるサービスはないにも関わらず、だ。そこで、プロモーションのついでに台湾のお客さまに直接インタビューすることになった。当時、台湾で人気のあるスターで日本でもコスプレとグラビアをしており、実は5カ国語を操るシリアル起業家、という謎に戦闘力が高いV女史が、ザワットをサポートしてくれていた。彼女はWishScopeが出た際にインターン面接で会った明治大学の留学生だったが、「インターンっていうか、このサービスは台湾でも流行るから、私に売却してほしい」と、ぶっ飛んだ提案をしてきた時からのつながりがあった(実現はせず)。そこから自分で起業し苦労しつつも事業の売却まで成し得ていた。今こそ一緒にやろうか、と彼女の全面協力により台湾でプロモーションとβ版のユーザーテストを行うことになった

CAPSULE GROUP(日商點子膠囊)という元々アドウェイズ出身の起業家、埴渕さんが台湾で起業したYoutubeスタジオ的なチームと連携し、台北の渋谷と呼ばれる西門町という広場前にあるガラス張りのスタジオで、スマオクのプロモーションを行った。日本にゆかりのある現地のタレントさんをカプセル社が格安でアレンジしてくれて、ギャラリーとして集まった数十人の人と一緒にリアルタイムにフラッシュオークションをスマオクで楽しみ、その模様をYoutube LIVEなどで放送。前に渋谷でハンガーを無許可で配りまくったときはお叱りを受けたが、台湾では街の路上で商業活動をしてもお咎めがないらしかった(※現在は要確認)。街の一角がオークション会場になってギャラリーも集まり、TV局もかけつけた。一方で日本に好感を抱かない怖い団体の方々のデモ隊も押し寄せ、ドキッとした(大事には至らなかった)

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ユーザーテストはV女史が地元の友人や親のつながりを使って集めてくれた。ボタンの使い勝手やキャッチコピーなど細かい修正点もあったが、ある人が「なぜ日本から中古ブランド品を買えるアプリなのに、こんなにきれいな台湾語なの?おかしくない?逆に中国のアプリかと思った」という金言を発した。これはメカラウロコだった。丁寧にローカライズしたつもりだったが、それが仇になっていた。ではどんな感じだと良いのか?と聞くと、日本商品のイメージはひらがな、カタカナらしい。たしかに台湾の街中には「優の良品」とか「ふる里」みたいな謎な日本語が氾濫している。たとえば「日本の中古ブランド品」は「日式二手名牌」と翻訳していたが、「日式の二手名牌」とすることで、ローカルが漢字の意味を理解でき、ひらがなで日本らしさがでる文言になる。たしかに現地の感覚だとそういうことになるだろう。Walt Disney Japanが「FROZEN」を「アナと雪の女王」と訳していたような感覚!?。そのまま翻訳するというよりは、ローカルの感覚で直感的にFrom Japanであることがわかるようなクリエイティブに変更した。

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広告のクリエイティブを台湾でのローカライズの秘訣を採用して改善したところ、CPIがとたんに良くなった。日本にいながらfacebook広告で世界中にマーケティングできる良い時代だ。しかし、国によってはパフォーマンスが上がらないこともあったため、僕はふたたび、東南アジア中を格安航空券とゲストハウスのバックパッカースタイルで短期間で飛び回り、スマオクを実際にコアに使っていただけているお客さまに合ってフィードバックをもらったり、現地の質屋、リユースショップ店にグローバル飛び込み営業を行い、太客を掴みつつ1次情報を集めてきてプロダクト改善に活かした。香港、ベトナム、マカオ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、上海、北京、首都にありGoogleとMapで検索可能なリユースショップはほとんど飛び込み営業し、SNSでつながりをつくってきた。この旅も過酷すぎた。スニーカーがすぐダメになったほど、毎日クタクタになるまで移動しまくった。国によっては、マップ上、店舗がありそうな雑居ビルに入るものの廃墟、怖いお兄さんたちがタムロしてタバコ吸ってるだけ、みたいなハズレもあった。日本に買付に来るバイヤーから直接話しを聞くことができたり、収穫も大きかった。東南アジアのリアルのリユース市場は生で見てきたのでかなり詳しくなれた。

特に、すでにサービスを利用しているお客さまの話を聞くのは楽しかった。事前にメールで、「このサービスの社長なんだけど、いつもありがとう!x日に香港行くんです、xxカフェで1時間ほどお話をお聞かせいただけませんか」というメールを送ると、意外なほどレスポンスがあった。facebookのURL貼ったりプロフ写真などなるべく安心してもられるように心がけたのが良かったのかもしれない。

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海の向こうで実際にスマホに僕たちのアプリが入っており、見慣れた画面を毎日楽しみに開いているというお客さまに合って話を聞くのは、最高に幸せだった。ペルソナイメージどおり、若くてヴィンテージ・シャネル等を好むファッション偏差値が高いインフルエンサー系女子(IG等で販売もしている)か、ブランド大好きバブルAsianおばちゃんか、ポケモンやファイナルファンタジーなどが好きなクールジャパン大好きっ子が主だった。東南アジアでは偽物の流通がひどいので、Used in Japanの商品には特別な信頼感があり、憧れのブランド品が格安で手に入る。しかも個人売買なので余計な手数料も掛らないから、どこよりも最安で買えるというのが刺さっていた。為替差が大きいタイミングでは、大口で仕入れて地元で売る、というビジネスをしている人もいた。

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国内では競合に苦戦を敷いてきたが、越境EC化したことでニーズが分散し、新たなマーケットが開拓できた感があった。アービトラージが大きいので、チャンスもたくさんある。ここだけの話、シンガポールのマリーナベイサンズでプラダ大好きな大富豪のコアユーザーおばさまに食事に誘われ、いい感じに酔っ払ったときに、今夜、部屋でどう?と割と強めに言われ、危ういグローバル・コミュニケーションするところだった(何もなかったですよ、ええ)。某国では買取店の棚がくるっと回って偽物倉庫になっており、健全な買取店かと思ったら完全にアカンやつで、出口を塞がれて何かを買って共犯になるまで、店から出れないみたいな罠ステージもあった。海外なので、そういう危ないシーンも多々あったが、若い頃にバックパッカーとして世界中でいろいろな危ないこと(ラダックでヒバーク、その他、強盗、盗難、詐欺など)を軽めに経験してきたので危険アンテナは高く、いつもギリギリで突撃しつつ、リスクは回避できてきたと思う。(なので一般的にはこの方法はオススメできないです)

このように泥臭い現地感覚と開拓の結果はすぐに本社の開発&マーケチームに共有し、機能改善やクリエイティブ修正を行った。広告も台湾での学びを踏まえてクリエイティブや属性の掛け算を数百種類テストし最適化を図っていくと、ROI(Return on Investment)が100%を超える運用ができるようになった。100万円広告費を使うと、その広告経由で獲得したお客さまの翌月の利益が120万円など投資を1ヶ月で回収できるくらいの効率性だった。国内のCPIが500-1000円と高騰して勝ち目がなくなった中、海外のCPIは40-100円程度で獲得でき、ARPUも国内ユーザーより爆買してくれるお客さまが多いため、約1.5倍となった。そもそもオーガニック流入も商品購入までなめらかになり、ここでしか出せず、顧客が欲しがるものに合致している感があった。収益の方程式が改善されることでサービスは本質的にグロースする。ようやく、ユニットエコノミクスが合致した状態となり、スタートアップのサービスとして胸を張ってイケる!と確信できる状態になった。

広告を回せばグロースする、ということで各種KPIは慎重にモニタリングしつつ、プロモーション投資を踏んだ。GMVは伸びた。しかしPMFしたところで、まだまだ赤字事業だ。調達した運転資金はすぐなくなってしまう。

さらに、最悪の事態が発生。Facebook広告が世界に配信でき一番効率が良かったのだが、配信している広告クリエイティブに対しての通報が増え、アカウントが何度も停止されてしまう事態となった。原因は、利権者の通報。これは僕たちが究極悪いのだが、扱っている商材はリユース品で、例えばCHANELが最大70%オフ、のような広告の見せ方のものがあった。そうすると権利者のビジネスを毀損しているとして、権利者から広告の取り下げリクエストがあり、対応していくしかなかった。固有名詞を避け、さり気なくブランドを消し込んだ画像だけで、憧れのブランド品が最大70%オフ、のように考慮したものに変えても、次から次へ広告ストップとなってしまい、最後にはアカウントがBANされてしまった。現地の利権者の度を過ぎた嫌がらせもあったかもしれない。僕だけではなく他の経営者のFBアカウントから広告配信してみたり、カードを個人のものにしてみたりした。金額大きすぎて2回くらい個人的に支払い滞り、家に帰ったら電気止まっていたりした。(すぐお金借りてきて支払ったので今では住宅ローンも組めてる。意外と大丈夫)Facebookは賢い。社内で考えうるアカウントは関連性があると判定されているのか、片っ端から潰されてしまった。こうなると、せっかく見えた光、海外広告によるグロースも方法を変えねばならない。これは悔しすぎた。

せっかく見えた光明だ。ここで諦めるわけにはいかなかった。

次回、第19章〜メルカリによるM&Aと土壇場の大失敗
月の光は、愛のメッセージ。


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