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第8章〜マーク・ザッカーバーグとの対話

ユーザーの声を聞きながらサービスの改善に取り組む単調な毎日を過ごしていたある日、Facebookが主催するFacebook mobile hack Tokyoというイベントのお誘いを受けた。エンジニアのためのイベントだったのと、東京ミッドタウンのイベント会場で開催されるらしくご飯が美味しそうな気配があったので、気分転換がてらチームで参加してみることにした。会場には大勢のエンジニアが集まり、facebookが広めようとしているOpen graph API(だったかな...)を利用して「Facebookをハックする」簡単なサービス/機能を1日で作るハッカソンに挑んでいた。僕たちは2つのサービスを作ることにした。

1つは既存のサービスWishScopeの拡張機能でfacebookの「Request Dialog API」を利用したバイラル性向上のための新機能を作る。もう一つは完全に遊びで、画面に出てきたfacebookの友達の名前を連続100正解することを目指すクイズゲーム「ダレカナ?」。どちらもハッカソン内で作り上げた。

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モクモクと開発していると会場にざわめきが起きた。facebook創業者のマーク・ザッカーバーグが会場に到着していた。彼はいつもどおりパーカーにジーンズの出で立ちで、飄々とした雰囲気で各テーブルのハッカー達に声をかけて回っていた。

僕たちの席にも来てくれて、彼と少しだけ話すことができた。「コンセプトがクール。これはFacebookの情報を上手にハックしているし、本当はfacebookでも大学内でこういうクラシファイドな取引を活性化したかったんだよね。どんどんバイラルさせる仕組みがあるといいね」と話した。「僕がこれは実名制でクラシファイドの取引を通じて新しい出会いを作るもので、知り合った二人は結果としてfacebookでつながることになる。facebookを利用してfacebookの価値を高められるサービスだ。僕たちはやるが、facebookでやらないのか?」と聞くと、「ニーズは理解しているが、今facebookは実際の友達同士のコミュニケーションをネットで繋げるということにフォーカスしているので、今はやらない。でも、全世界でそれが実現できたら、いつかはやるかもしれない。このアプローチはとても良い」という回答だった。あくまで今やるべきミッションにフォーカスしているという信念が伝わり、エッセンシャルで良いなと思った。

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彼との話が割とキャッチボールできて盛り上がったのがよかったのか、そのイベントではBest of All(最優秀賞)をいただいた。個人的には5時間でスクラッチで作ったダレカナ、のほうが面白かったと思うのだが。

賞よりも、実際に自分が起業する際に影響を受けた人物とプロダクトについて少しの時間でも議論ができたことのほうが嬉しかった。数年後、facebookはグループ内で直接の知り合い以外ともモノの売買や意見交換、クラシファイドのやり取りができる機能を出して、繋がりを広げていく方針をとった。

なおそのイベントと僕とマーク・ザッカーバーグの写真がニュースに載った後すぐ、サービスの商標を悪徳商標ブローカーに取得され、どう考えても僕たちが元祖なのに、それを証明するのに過去のメディア掲載記事をかき集めたり、サービスの説明をしたりしたが、商標は先着順で1番の申請主がどうしても強いという謎ルールがある。しかもアナログな世界である。実際、取り返すのに時間と数十万円のコストがかかった。また、同時期に他の有名スタートアップでも、商標を取らないまま成長してきたが、知名度が上がってきたところで大手企業にその名前を利用するなと通告され、泣く泣くサービス名変更&全面リニューアルせざるを得なかった会社も存在する。非常に良いサービスだったが、それにより沈んでいったのを見た。商標は申請に50万円くらいかかるもので、初期はなおざりにしがちだが、流行ってきた時に取ろうとしても世の中には悪徳商標ブローカーというどうしようもないヒマで可愛そうなビジネスをしている人たちがいる。

スタートアップは、サービスを公開する前に商標(とできれば特許)は少なくとも申請しておくことをオススメする

回、第9章〜スマホファースト
ぜってぇ見てくれよな!

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