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第14章〜千葉道場と海外VC

フリマアプリは広告でトライアンドエラーを重ねつつ、古物商の世界に入りEC的なアプローチも試していた。手数料10%で売上は立つものの、その売上はEC仕入れに回してフラッシュオークションの目玉商品の買付として利用し顧客還元していたため、実質毎月のバーンレートは上がる一方だ。広告を毎月数百万円使うだけで、前回調達したお金は一瞬で消えていった。当時、先行するフリマアプリなどの資金調達時のバリュエーションが業界のベンチマークとなっており、月間GMVの約10倍が時価総額という相場ができていた。次の調達は数億円単位で、と考えていたため、株式の希釈化を考慮し時価総額10億〜20億円で資金調達すると考えると月間1〜2億円の規模になっていないと資金調達が厳しい状態だったが、足りていなかった。また苦しい状況となった。それでも社内は多彩なメンバーが集まり、活気に溢れていた

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短期間で投資家に事業進捗と調達ニーズをアピールするためには、ピッチイベントはリスクもあるがコスパも良い。フラッシュオークションを武器にIVS LaunchPad(2回目...)に出場、またTSUTAYAが初めて開催していたT-Venture Programというイベントにも出場できた。後者は実はインターンが応募したら受かっちゃってた系なのだがw、当日、CCCの増田会長の目に止まったのか、特別賞となった。特典として増田さんの立派なご自宅にお邪魔して様々な秘蔵コレクションを見せてもらって食事をしたのは単純に嬉しかった。後日、5000万円の出資となったのだが、今回もリード投資家を見つけてくることが出資のトリガー条件となった。あと2〜2.5億円ほど集めなければならない。メジャーなVCはメルカリかフリルに出資しており、まさかそこには話を持っていけない。先行者の戦略的な資金調達により、兵糧攻めを食らっている状態だった。その他の20社くらいのVCや事業会社にあたるも、よいところまでいくがなかなか最終決議されない。業界的にすでにメルカリがあるじゃないか、それに対してまだまだ規模が小さいよね、というのが大きい理由だったと思う。たしかにそうなんだけど、こっちは違う戦いをしようとしているのにそれを言われちゃぁー何も起きねぇっす。

気がつくと資金があと3ヶ月持たない状態だった。アカン!(3回目...)

エクイティファイナンスは最初の商談から早くて3ヶ月、普通は4ヶ月位見ておかないと危ない、と言われている。現時点で進行中の話が全て飛んでしまい、冷静に考えるとキャッシュアウトが見えた。眠れない日々が続き、ピボット前の人間失格状態の再来気配があった。それまで積極的に起業家同士で集まって飲み会をするタイプではなかったのだけど、どうしても不安で相談したくなり、KDDI∞Laboで同期だったアオイゼミCEOの石井塾長に飲みながら自分をさらけ出して、相談してみた。「それはヤバいですね」という話になり、まずは両社の投資家だった千葉功太郎さんに相談してみよう、という話に。千葉さんに相談すると、同じような悩みを持つ会社が出てきているから、やるならちゃんと解決できるように勉強会方式でやろう。あ、幹事まるっとお願いね。という展開になった。

そして千葉さんの出資先スタートアップ7社を集めた、第1回千葉道場合宿を開催した。千葉道場というのは、江戸時代に坂本龍馬が修行し北辰一刀流を身に着けた千葉道場にインスパイアされたもので、ある意味黒船襲来している幕末な現代日本において、起業家同士で剣術を磨き切磋琢磨し合う場所、というテーマで、北鎌倉の寺を借りて開催した。幹事は僕だったがゼロイチで経営者向けイベント運営のスキルもなかったので、赤いマフラーの尾原和啓さんに設計や当日のモデレーション、コンテンツ作成のコツなど徹底的に叩き込んでいただいて、なんとか初回を開催した。座禅からはじまり、フスマでプレゼンするような会だった

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千葉道場で「もう来月末でキャッシュが尽きるのだけど、ほとんどVCには断られてしまい、もう融資も降りず、死ぬかもしれない(ぐふっ)」という話をしたところ、みんなが「いやそれかなりヤバイ」と、一生懸命アドバイスや紹介をしてくれた。翌日からまた猛烈に動き出した。

千葉道場はこの第一回がきっかけで半年に1回の定番イベントなり、毎回、有志の起業家同士で幹事グループを組成しイベント運営するという稀有なコミュニティ・イベントに進化し、次回2021年3月の開催で13回目となる。7社だった参加社は70社以上と大規模イベントに成長した。最近では千葉道場ファンドというVC機能もでき組織的に運営していて、僕はフェローという立場で現在もコミュニティマネジャー的なお手伝いを通じて貢献させていただいている。平たく言うと道場浪人。

👂ここで一旦CMです👂
千葉道場ファンドでは、まだ見ぬ幸せな未来を創造し、テクノロジーで世界の課題を解決するシード期のスタートアップを募集中。しかしHPに窓口はあえて設けていません。その意味を考え自ら道筋を見つけて門戸を叩かれよ!

完全にノーマークだったVCを紹介され、ダメ元で訪問してみた。どうやら米国に本社があるVCと共同出資をしているらしく、そのVCの担当者があと1時間後に来るが、会ってみるか?ということだった。海外VCはノーマークだったので、カフェで全集中の呼吸を駆使しプレゼン資料と事業計画書をウソ英語で書き直した。相手はアジア地区の責任者ということで、中国の方だった。僕の片言のAsian Englishで事業を説明する。ちょうど近しいブランド品のC2B2Cの会社(米国では上場を果たす)に出資検討していたところだったが、スマオクのほうが伸びそうだということで急ぎ比較検討してくれることになった。どうやらメルカリを徹底研究していたらしいが、出資できるフリマアプリがそんなに存在しない中、棚からボタ餅だったようだ。また、TSUTAYAのTポイントは彼らも知っていて、そのTSUTAYAと資本業務提携を行うという話は非常に有効だった。バリュエーションは10億円を超えていたが、米国・中国の相場観から考えると、ノールックなシード案件レベル、米粒みたいな金額だろう。基本合意して進めましょう、と短期間で決まった。考え方のスケールが大きかった(反面このスケール感に後半苦しむのだが...)。

2.5億円の資金調達となり、海外VCがリードするということで、契約書は全て英語になり、企業のデューデリジェンスもトップ弁護事務所が数日間オフィスに滞在し、Day1からの書類が全て問題なく揃っているか見ていく&経営者インタビューされまくる厳しい審査となった。何も不正などしていないし、社会人経験もあるので毎月の締めなどちゃんと行っていたつもりだが、狭いマンションの個室の端っこでスーツを来た有名弁護士が数日占拠して書類をひっくり返して調査が入っている状況には、社員が一番ビビっていた。たぶん何か悪さしたからガサが入ったと思われていたと思うw書類関係、ちゃんと月末月初処理&書類保管していないスタートアップが思ったよりも多くてビックリするけど、IPOでもM&Aでも絶対大事だから、毎月ちゃんと締めておきましょう

デューデリジェンスも終わり基本合意書の締結となった。クロージングは資金が尽きる4月末までに行いたかった。しかしここでハプニングが。米国VCのアジア担当は頑張ってくれていたが、米国VCの本社(US)の承認が必要で、その米国本社の動きがめちゃくちゃ遅くてレスがない。でたこれ。Disneyでさえ米国との連絡で何回もあったやーつ。日本人と異なり、海外との仕事は優先度を挙げてもらわないと、優先度が低い仕事の期日はスルーが当たり前でちゃんと進まない。しつこく何度も、いかにこの対応の重要度が高いかを伝え続けた。月末には対応するよ!という話になったが、資金繰り限界の4月末日が来た。銀行口座にお金は、なかった。役員はもちろん報酬ゼロだったがそれでも一部の社員に給料が払えず、なんとか翌月まで待ってもらえるようお願いした(本当にごめんなさい)。これからゴールデンウィークというルンルンな時期にだ。4/30にメールで契約書が届いたが、日本はゴールデンウィークに突入。僕たちのゴールデンウィーク(黄金週間)は無一文でなかなか来ない英文契約交渉の返信を不安現に待つブラックウィーク(暗黒週間)となった。楽しそうな余暇の写真がSNSに上がり続ける中、全力出勤して紛らわすしかなかった。GW返上で英文契約書を一緒に対応しれくれたAZX様、投資家の皆様には大変感謝しています。

5月末、CTOが新婚旅行の予定だったが、会社が過去最大の資金危機に面しており泣く泣くCTOの新婚旅行も延期となってしまった。US以外の国内VCからは5月末に先んじて入金してもらい、なんとか魔のブラックウィークからの5月末は乗り越えることができたが、不甲斐なさでいっぱいだった。米国VCからの入金は6月に入り完了し、また戦う準備ができた。

次回、第15章〜明日から全員営業です
絶対見るナリよ~

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