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第7章〜β版公開とawabarの小さな奇跡

クローズドβ版に大学生の投稿がある程度集まったところで、IVS Launch Padというピッチイベントのお誘いがあった。新進気鋭のスタートアップが数百人の経営者の前でプレゼンを行い、その日のうちに資金調達や事業提携がガンガン決まる、入賞すれば世間の注目も高まり、しいては採用に繋がるというもので当時は数少ないスタートアップの登竜門となっていた。

当然プレッシャーはかかるし、せっかくのアイデア・プロダクトを下手すると大手起業にパクられるリスクもなきにしもあらずだが、営業&PR的な観点で考えると、たった6分のピッチで可能性を最大化できるならコスパがよいし、恥をかいても失うものは無いので受けて立つことにした。何度かの審査があって無事にファイナリストとなったものの、優勝はできなかった。ちなみに優勝者は、当時まだ大学生だった@mocchic の「すごい時間割」、2位がDisneyでも一緒に仕事したコミュニティファクトリー@Ryo_matsの「DECO PIC」だった。まさか数年後、六本木ヒルズの同じソウゾウのオフィスで一緒に働くとは、この時は予想していなかったので、運命は不思議なものだ。

IVSの壇上でオープンβ版として一般ユーザーの登録開始を宣言した。新しいネットサービスをいち早く利用している大学生のたくさんのお願い・需要・欲望、そんな投稿がたくさん詰まっている状態での一般公開だった。会場のネット業界の経営者たちは、いち早く触ってくれた。サービス登録時にfacebookのフィードに「○○さんがWishScopeをはじめました!」的な投稿が任意で流れる設計だった。この時、よくわからないけどなんだかかわいいOGP画像、にこだわったのが良かったかもしれない。その後登録経路をリサーチすると「なんかよくわからないけど、facebookで友達のフィードにかわいいのが送られてきたからとりあえず登録した」と社会人の女性も登録してくれていることが多かった。広告で汚れてしまった現世のSNSではありえないことだ。なんてイージーな時代だったんだ...経営者が使うとその会社の社員も登録してくれるので、大学生の次に集めたかった本命ユーザーのネット業界のアーリーアダプターの登録はなめらかに進行した

後日、IVSでピッチを見た大手の有名な方から、サービスもメンバーも良い。会社ごと買収したい、x億円なら即決する、という連絡をいただいた。スタートアップって噂どおりこんなことがあるのだなぁと感動しつつ、まだ起業して間もない状態、当時の興奮とワクワク感はx億円の価値を遥かに超えていた。しかもこれから1兆円になるかもしれないサービスを売る気はないので、後ろ髪を引かれながらも丁重にお断りした(この後の経験も考えると、ここで売らなくてよかったと思う)

その帰りにCTOと一緒にスタートアップ業界の人の溜まり場になっていた六本木のawabarという立呑バーに行ってみた。「いや〜今日売ったら僕たち、超短期で億万長者だったね〜断ったのはアホだったかな?でも今が最高に楽しいよね。ここからfacebook倒さないと!チクショウ飲もう!」と反省会している間にも、招待×SNSへのOGP配信でバイラルが起きており、ユーザーが増え続けてサーバーがパンクしそうになっていた。

嬉しい悲鳴に立呑みながらPCでAWS EC2を積みましていると、「君たち何やってるの?」とロマンスグレーな紳士が話しかけてきた。こっちはかまっている余裕は無かったので、割と雑な対応をしていたと思う。すると紳士がサービスを触ってくれて、これはいい!と言ってくれた。「ぜひつかってくださいー(え、何この人?ただの六本木の酔っ払い?こういう立ち呑み屋はすぐ絡まれるから厄介だわー早く帰ろう)」と雑な対応をしつつメンテナンス作業に勤しむ僕たち。「おじさん、友達多い方だから、友達招待ボタン押して広めておくね〜でもこの招待ボタンの設計、毎回読み込み走って重いね〜処理変えないとサーバー辛いかもね、今夜あたりちゃんと招待しておくね」と。酔っぱらいにしてはわかったような口を効いてきたが、たしかにそのような負荷がかかる設計になっていたので、その場でCTOがすぐ改修をはじめ、オフィスに残るメンバーと連携して直した。

awabarの翌日、さらにサーバーに負荷がかかっていた。原因調査すると、昨夜awabarで友達招待を約束してくれた紳士経由のトラフィクがめちゃくちゃ多い。しかも招待されたユーザーの質や再度招待やフィード投稿してくれる率がめちゃくちゃ高い。一体どんな紳士なんだ・・・とプロフィールを確認してみると、さくらインターネット創業者メンバーでawabarオーナーでもある小笠原さん@ogasaharaだった。最高のギフトをいただいた!

しかし、その節は大変申し訳ございませんでした!!そして小笠原さんとも今はメルカリのR4Dという組織で一緒に仕事しているという不思議。

そんな形で登録数は、お金を使わずに自然に増えていくようになった。

次回、第8章〜マーク・ザッカーバーグとの対話
過激にファイヤー!

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