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【文化財紹介】昭和のはじめの銀行建築 ~堺筋倶楽部~

【2023年11月1日/大阪歴史倶楽部】
大阪歴史倶楽部です。今月は大阪市中央区にあります、昭和初期に建てられた銀行建築「堺筋倶楽部」(旧・川崎貯蓄銀行大阪支店ビル)をご紹介いたします。

この堺筋倶楽部の建物は、もとは川崎貯蓄銀行の大阪支店ビルとして1931(昭和6)年に建てられました。その後2001(平成13)年にイタリアンレストランの「堺筋倶楽部 AMBROSIAアンブロシア」として開業し、2021年に現在の「パンとエスプレッソと堺筋倶楽部」という名のカフェに業態を変更しました(2023年11月1日現在)。

【豆知識】
川崎貯蓄銀行
関東の財閥であった東京川崎財閥系の銀行。この大阪支店(現・堺筋倶楽部)の竣工から5年後の1936(昭和11)年に川崎第百銀行に合併し、現在の三菱UFJ銀行の前身のひとつとなりました。


外観の写真
以下は堺筋倶楽部(旧・川崎貯蓄銀行大阪支店ビル)の外観の写真です(2023年9月 大阪歴史倶楽部 撮影)。

堺筋倶楽部正面(西から)
堺筋倶楽部(南西から)


堺筋倶楽部(南西角)
堺筋倶楽部(南東角)
堺筋倶楽部(北西から)


建物の特徴

この堺筋倶楽部の建物(旧・旧川崎貯蓄銀行大阪支店ビル)は、1931年(昭和6年)に川崎貯蓄銀行の大阪支店として建てられました。当時の大阪市のメインストリートであった堺筋さかいすじに面して建っています。

なお、現在のように御堂筋みどうすじが大阪市のメインストリートとなったのは1933(昭和8)年に御堂筋とその下を走る地下鉄御堂筋線が開通してからのことです。

この建物は、大阪市福島区に現存(2023年11月1日現在、現存)している旧・川崎貯蓄銀行福島出張所(現・ミナミ株式会社社屋/国の登録有形文化財)と同じく、当時の銀行建築らしい非常に重厚感のある石張りの外壁やシンメトリーなファサード(建物正面)、威厳のある古典的な装飾を施した外観などが特徴的です。

この建物は、大阪市が近代史上最も繁栄していた(大正時代後半から昭和初期にかけての)いわゆる「大大阪時代だいおおさかじだい」の銀行建築の一例です。


堺筋倶楽部への行き方

堺筋倶楽部(旧・川崎貯蓄銀行大阪支店ビル)へは、大阪メトロ堺筋線さかいすじせんおよび大阪メトロ長堀鶴見緑地線線ながほりつるみりょくちせんの「長堀橋ながほりばし」駅2-B出口を出て、そのまま堺筋沿いに真っ直ぐ北へ250m(徒歩約5分)ほど行ったところ(堺筋を挟んで向かい側)にあります。

長堀橋駅から真っ直ぐ北へ進むとこのように見えます
(手前の大通りは堺筋)

【文化財データ】
堺筋倶楽部(旧・川崎貯蓄銀行大阪支店)
大阪市中央区南船場1丁目15-12
1931(昭和6)年 竣工
鉄筋コンクリート造り地上4階、地下1階建
設計:川崎貯蓄銀行建築課
施工:竹中工務店
写真:2023年9月 大阪歴史倶楽部 撮影


おわりに

今回ご紹介した堺筋倶楽部(旧・川崎貯蓄銀行大阪支店)の建物は、川崎貯蓄銀行建築課による設計とされていますが実際に設計業務に携わったのは建築家の矢部又吉氏と伝えられています。

矢部又吉氏は明治時代から昭和初期にかけて、横浜を中心に活躍した建築家です。工手学校(現在の工学院大学)建築科を卒業した後にベルリンへ留学して建築を学び、帰国して銀行建築を多く手がけました。

とくに横浜市内に建築設計事務所(日本庭園会社)を設立し、川崎財閥系の建築物を多く手がけました。彼の設計による古典的な様式の建物は精緻で彫りの深い装飾が施されている事が特徴だと言われています。

堺筋倶楽部(旧・川崎貯蓄銀行大阪支店ビル)

なお、堺筋倶楽部の建物を見学したり写真や動画などを撮影されるときには、所有者さんや管理者さん、周辺の方々に不快感を与えたりご迷惑にならないよう充分なご配慮をお願い致します。

また許可なく他の人の敷地内に入ったりしないようお願いいたします。とくに建物内部を撮影される際にはセキュリティの関係もありますので必ず所有者さんや管理者さんなどの許可を得てくださいますようお願いいたします。

今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。


【堺筋倶楽部さんの公式サイト】


【参考にした資料】
◎高岡伸一 他『大大阪モダン建築』青幻社 2007年
◎堂下浩 他「川崎銀行(第百銀行)の遺構が示唆する銀行建築のあり方
-佐原三菱館を修復・保存する意義を考える-」早稲田大学クレジットビジネス研究所 2020年
◎「ミナミ株式会社(旧川崎貯蓄銀行福島出張所)」『国指定文化財等データベース』文化庁 2023年版
◎「堺筋倶楽部(旧川崎貯蓄銀行大阪支店)」『船場navi』一般社団法人船場倶楽部 2023年版(WEB版)
◎「旧川崎貯蓄銀行大阪支店(堺筋倶楽部)」『大阪中心』大阪市中央区 2023年版(WEB版)
◎「ミナミ株式会社(旧川崎貯蓄銀行福島出張所)『大阪文化財ナビ』大阪府建築士会 2023年版(WEB版)


(『大阪歴史倶楽部』第2巻 第11号 通巻19号 2023年11月1日)


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剽窃・無断引用・無断転載等を禁じます。

※次号は2023年12月1日に投稿する予定です。

《次号予告》
【文化財紹介】
(内容未定)
いつものように近代の文化財をご紹介させていただきたいと考えています。

※予告内容は変更する場合があります。ご了承ください。

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