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【文化財紹介】昭和初期のユニークなビル 〜福原ビル〜

【2023年5月1日/大阪歴史倶楽部】
風薫る五月。新緑の美しい季節となりました。今月は大阪市の天満橋てんまばし北浜きたはまの中間あたり、大阪市中央区にあります昭和初期のユニークなデザインのビルをご紹介いたします。


福原ビル

福原ビルについての資料はあまり残っていないようで、その詳細については分からない部分か多いようです。この建物は、国光生命保険相互会社の大阪支店ビルとして昭和初期[※]に建てられました。鉄筋コンクリート造5階建。設計は大阪府堺市出身の建築家久野くのみさお氏です。

国光生命保険相互会社は1908(明治41)年設立の古い生命保険会社でしたが1933(昭和8)年に解散しました。現在このビルは福原産業貿易株式会社さんの本社ビルとなっています(1972年〜)

[※]1930(昭和5)年または1932(昭和7)年頃の竣工だと言われていますが明確なことは分からないようです。

【豆知識】
久野くのみさお
大阪府堺市の生まれ。東京帝国大学建築学科卒。鉄道省初代建築課長などを務めて久野設計事務所を設立。おもな建築としては、南海ビルディング(高島屋大阪店)、近鉄宇治山田駅、大阪府立三国丘高等学校同窓会館(旧・三国丘会館)、三宮阪神ビルなどがあります。


外観の写真
以下は福原ビルの外観の写真です(2023年4月 大阪歴史倶楽部 撮影)。

福原ビル全体(南西から)
福原ビル 正面(南から)
福原ビル(北側/土佐堀川側から)
福原ビル(西から)


建物の特徴

このビルは、北側を土佐堀川とさぼりがわ、南側を土佐堀通とさぼりどおりに挟まれた三角形の狭い土地に土佐堀通に面して(土佐堀通を正面にして)建っています。外壁面は全体にわたって何度か改修されていますが、建物全体の姿はいまから約90年前そのままです。とても現代的なデザインですので昭和初期に建てられたとは思えないと思います。

特徴的なのは、西端の建物の角のアール(曲面)部分です。まるで土佐堀河畔に建つ塔や灯台のようなとてもユニークなデザインだと思います。

福原ビル 西側の角部分アップ(西から)


福原ビルへの行き方
福原ビルへは、大阪メトロ堺筋さかいすじ線または京阪電車の「北浜きたはま」駅1号出口から土佐堀通沿いに東へ約400m(徒歩約8分)です。途中で土佐堀川から南へ分かれる古い運河の東横堀川ひがしよこぼりがわ(現在は高速道路の下を流れています)を渡ります。

もしくは、大阪メトロ谷町たにまち線および京阪電車の「天満橋てんまばし」駅14号出口から土佐堀通沿いに西へ約600m(徒歩約10分)です。途中で天神橋南詰の「天神橋」交差点を渡ってすぐ(約200m)です。天神橋から眺める土佐堀川の風景もお勧めです。


【文化財データ】
福原ビル(旧・国光生命保険相互会社大阪支店ビル)
大阪市中央区北浜東6-14
昭和初期(1930〜32年頃) 竣工
鉄筋コンクリート造、地上5階建
設計:久野節
写真:2023年4月大阪歴史倶楽部 撮影


おわりに
今回は大阪・北浜の土佐堀河畔に佇む昭和初期に建てられたユニークな姿の福原ビルを紹介させていただきました。

福原ビル(旧・国光生命保険相互会社大阪支店ビル)は、いまから90年も前に建てられたとは思えないほどシンプルでユニークな姿をしたビルだと思います。まるで河畔に建つ塔や灯台のようです。大正時代の終わりごろから昭和初期にかけて大阪市が最も輝いていた時代「大大阪時代だいおおさかじだい」の先進的な雰囲気をよく伝えていると思います。

なお、ここで紹介いたしました福原ビルの建物を見学したり写真や動画などを撮影されるときには、所有者さんや管理者さん、周辺の方々に不快感を与えたりご迷惑にならないよう充分なご配慮をお願い致します。

また許可なく他の人の敷地内に入ったりしないようお願いいたします。とくに建物内部の撮影はセキュリティの関係もありますので、必ず所有者さんや管理者さんなどの許可を得てくださいますようお願いいたします。

今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。


【参考にした資料】
◎『国光生命保険史』国光生命保険相互会社 1926年
◎高岡伸一 他『大大阪モダン建築』青幻社 2007年
◎『日本の保険の歴史』スイス再保険会社(Swiss Re Corporate)2013年
◎「福原ビル」『日本建築めぐり』建築パース.com メガソフト株式会社(WEB版)
◎「久野節」『大阪文化財ナビ』大阪府建築士会 2023年版(WEB版)


(『大阪歴史倶楽部』第2巻 第5号 通巻13号 2023年5月1日)

©2023 大阪歴史倶楽部 (Osaka Historical Club)
剽窃・無断引用・無断転載等を禁じます。

※次号は2023年6月1日に投稿する予定です。

《次号予告》
【文化財紹介】
(内容未定)
いつものように近代の文化財をご紹介させていただきたいと考えています。

※予告内容は変更する場合があります。ご了承ください。


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