【36枚目】Prince『Sign 'O' The Times』
Princeの9枚目のアルバム『Sign 'O' The Times』(1987)
2020年、皆さんどんな曲を聴きました?
Spotifyが今年聴いたお気に入りのアーティストと曲を教えてくれました。
私の一位はプリンスです!
プリンスの曲を合計4,511分聴きました。3日と3時間11分。Spotify以外でもかなり聴いてるから一週間くらいはプリンスに費やした時間があるってことか。プリンスの曲ってクセあるはずなのに不思議と飽きないです。
今回はお気に入りの曲「Adore」が収録されている『Sign 'O' The Times』
プリンスの最高傑作はこれか『Purple Rain』って意見がベタですね。
この作品は密室ファンクと呼ばれるそう。ガッツリ解説しているサイトはなかったんですが、密室感がある練られた音楽?「sly & the family stone」や「Miles Davis」の音楽に近いんだとか。プリンスがバンドを解散した後に地下室でシコシコと作った作品です。機材を好き放題使って自分の音楽を表現できたことが伝わってきます。
プリンスは多作家として有名でほぼ毎年リリースされるアルバム曲の他にも無数の未発表曲、ブートレグ流出曲がありますね。アルバムにモリモリ曲を入れたがる人でレコード会社と揉めがち。アーティストの理想の形で作品を世に出せないことは心外だと思いますが...会社側の気持ちもまぁわかる。漫画家にも言えると思いますが作者の暴走?をコントロールする存在って必要だと思うんですよ。
この作品は2枚組16曲という大ボリューム。企画段階では3枚組の予定だったそうです。西寺郷太著『プリンス論』からの引用ですが
①バンドと共同制作した『ドリーム・ファクトリー』
②変名アルバム『カミール』
③自身による作詞・作曲・演奏にこだわった『クリスタル・ボール』
この3作から選抜された曲+αが『Sign 'O' The Times』に収録されています。正直長い。ただ2枚組を活かして曲の多さを上手く消化している感じ。アルバムのボリュームは『Purple Rain』、『Controversy』くらいでバシっと終わる作品が好きかなぁ。(個人的に90年代のプリンスの作品は長尺で聴いてて集中力に欠けるところがありますね。)
この変名アルバム『カミール』の曲、アイディアが面白くて好きです。
プリンスが女性キーに合わせて録ったテープの回転数を変えることで歌声を高音化させてるんですね。少し不自然な子供のような甲高い声をプリンスは架空の女性シンガー『カミール』と名付けアルバム1枚分を作成した。とかなんとか、この独特な声が奇妙でたまらんのですよ。「Housequake」「If I Was Your Girlfriend」「Strange Relationship」に使われていますがどの曲もカミールがマッチしています。
まとめ『Sign o' the Times』は質・量を兼ね備えた名作。
前衛的でスタイルもバラバラな曲が詰まった作品ですが不思議とポップにまとまってます。アーヴァンギャルドで濃密な作品。
ただ全部の曲の感想を書くのはだるいな😉
※アルバム名は聖書から来ていて「Sign(しるし)」には、神の奇跡、神からのメッセージという意味があるんだそう。聖書ネタって厨二心をくすぐりますね。
【収録曲】
-DISC1-
1.Sign o' the Times
ちょっと難しい曲ですよね。何度も聞くうちに良さに目覚めた。ドラムマシンとベースの淡々とした進行が良い。サビは華やかですが終始落ち着いた感じ。静かに燃えているような迫力がある曲。
2.Play in the Sunshine
ご機嫌なナンバーだ。80年代って感じですね。内容モリモリでスピード感あって忙しい。聞きごたえのある曲。
3.Housequake
アングラな感じの曲。ヒップホップの要素あり。ワルそう。カミールの声が妙に可愛くてキマってる。ドラムマシンの鋭い音、ブラスの気の抜けるお洒落なフレーズが好き。不思議なグルーヴ感。
1988年のグラミー賞「最優秀アルバム賞」でU2の『The Joshua Tree』が受賞した際にプリンスが「何てことはない、だって僕でも彼等の曲は演奏できるけど、彼らには「Housequake」は作れないだろ?」と発言したエピソードが有名。なんかプリンスの発言は可愛げがありますね。
4.The Ballad of Dorothy Parker
3曲目のアングラな部分をそぎ落として落ち着いた大人な感じ。イントロのドラムマシンがいいな~。というかドラムマシンのリズムがずっと心地いい。ベースがだるだるなのに尖った音で変態チック。プリンスの歌声は品があって素敵。
5.It
激しいプリンス。ずっと緊張感や怒りを感じる曲。色気のあるギター。うーん、悪くはないけど好きでもないかな。
6.Starfish and Coffee
イントロのベルの音でビクっとするんすよね。ピアノの音と優しい歌声が心地いいポップス。プリンスにしてはお上品すぎ?曲名がちょっと変で可愛い「ヒトデとコーヒー」。つなぎの曲という印象もあるけど好きな一曲。
7.Slow Love
いや~良いバラード。エッチである。救われるような気持ち。曲名の通りスローなラブソング。歌い方はねちっこいですが上品で美しい。サックス、ストリングスの音がずるい。ムードがあります。
8.Hot Thing
「ホッッスィング!」イントロの声どこから出してるんだろう。音作りにちょっと時代を感じる。チープなファンク?危うい感じ。少しゲームミュージックっぽいかも(「真・女神転生」っぽい)中盤からアツい。
9.Forever in My Life
曲名の割にノリは軽い。気楽にいこう!みたいな感じかと思ったら真剣なラブソングだった。プリンスの声が絡み合ってます。地味に素晴らしい一曲。
-DISC2-
10.U Got the Look
DISC2は元気のあるスタート。ドラム、リズムに元気を感じる。シーナ・イーストンとのデュエット。女性ボーカルが映えてる。
11.If I Was Your Girlfriend
結婚式のようなイントロが意味深。憂鬱な感じ。メランコリー。可笑しいカミールの声が特にハマってる曲だと思います。2:50~の笑い声が悲痛で印象に残る。中毒性のある良曲。3:45~あたりから音がずれていって怖い。
12.Strange Relationship
明るさのなかに切なさや危うさを感じられる曲。聞きやすいメロディ。「Strange Relationship」おかしな関係。こういった奇妙で性を感じる曲はプリンスの魅力が特に溢れてると思います。女々しい。メンヘラ。
13.I Could Never Take the Place of Your Man
明るいキラキラした曲。悲壮感が全くない。聞いてて楽しいですね。メインのフレーズに若さ、フレッシュさを感じます。4:00~はセッション風、シンプルなポップスとは違う仕上がり。
14.The Cross
ギターの音色が色っぽい、ねちっこいですね。徐々に盛り上がる構成。ラストは音が入り乱れて熱い。もっとアウトロが聞きたくなります。「The Cross」(十字架)という曲名の通り重みのある曲に感じる。
15.It's Gonna Be a Beautiful Night
ライブ音源ですね。テーマパークのようなワクワク感がある。楽しくやりたい放題。9分は長いけど聞き心地はずっと良い。
16.Adore
正統派バラードなのかな。優雅で美しい。プリンスの曲だけじゃなくバラードの括りでもトップクラスに好きな曲です。イントロのファルセットから心持ってかれる。幸福感、安心感のある素晴らしいサウンド。プリンスに苦手意識のある人は特に聞いてほしいですね。
※2020年に聞いた曲のトップ5はこちら。落ち着いた曲ばっかり。
おおはた雄一「おだやかな暮らし」は良い曲なので是非聴いてほしい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?