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英医療制度、無料という安心感

新型コロナが猛威を振るい、一時は医療キャパシティーが限界に到達し、崩壊するのではと言われていました。

私のいる英国でも、入院患者が増え、集中治療室もいっぱいいっぱいで、医療崩壊が起こるのではと不安の声が高まり。今まで通院していた患者さんが病院に行くのをやめたり、急を要しないがん患者さんなどの手術が後回しとなったり、という状況になりました。

幼い頃入退院を繰り返して以降、病院にはお世話になっていない私。生姜をたっぷり入れた紅茶を飲むなど、日頃からの民間療法のおかげで、インフルエンザにもかからず、風邪もほぼ引かず、という健康体を手に入れました。笑

この生活は英国に来てからも変わらず。もともと病院耐性もないため、異国の地で病院に行くことは絶対避けたくて、免疫を高めるよう務めています。

そんな私が、病院にかかることになりました。実は英国4年目にして2度目。今回はそんな英国の医療制度のお話です。

・英国の国民医療制度、NHS

日本は国民健康保険により、一般的に医療費は3割負担ですよね。この制度でもとっても安心して病院にかかることができます(かといって何から構わず行きまくるのも良くないけれど)。

皆保険は1961年に実現し、私たちが安心して暮らすことができる基盤となっています。これは社会保険モデルといって、社会保険を財源とし、医療サービスの提供者には公的・民間の両方が混在。日本のほか、ドイツやフランスがこれにならっています。

一方、英国の医療制度は、国営医療モデルといい、税金を財源とし、医療サービスの提供者は公的機関が中心。6カ月以上のビザを取得する際、申請費用にNHSにかかるための税金(?)が含まれており、これにより英国のNHSを利用することができます。

なんと治療費は無料!

米国とかだと、自由診療のため、うかうか病院にかかってしまうと高額な診療費を請求されるとの話も聞く中、英国は安心。こうしたモデルを採用している国にカナダやスウェーデンがあります。

ちなみに、処方箋を出してもらう際は、どんなお薬であれ一律9ポンド(税抜)です。

英国で病院にかかる際は、まずは一般家庭医(GP)に登録し、初診はここで見てもらいます。GPは基本的に住所の近くで登録しますが、たまに職場付近で登録する人もいます。

郵便番号から検索すれば、一発で近くのGPが出てくるので、そこに出向いて必要な個人情を登録するだけ。

ただ、問題点は予約が取りにくい、待ち時間が長い、診療時間が短い。

無料だからか多くの人がGPを訪れ、GPは処理するのに流れ作業のよう。ここでさらに大きな病院を紹介されるか、薬を処方されて終わりか、安静にしていなさいか、判断されます。

悪く言えば「ふるいにかけられる」わけです。

そういうこともあり、私はほぼGPには行かないのです。不安だからスコットランドでもロンドンでも登録はしているけど。

・病院に2度お世話になる

病院耐性ほぼゼロな私ですが、スコットランドとロンドンでそれぞれ病院にかかりました。

1度目はスコットランドで。咳が4カ月続き、心配になりGPに行きました。周りのスコットランド人の友達からも、行った方が良いと勧められ、現地人が言うならということで電話。

”予約取りにくいから、電話口でゴホゴホしながら死にそうな感じで喋れば良い”

こんなアドバイスをもらい、オープンと同時に電話。その日午前の予約を取ることができました。

ラッキー。

予約時間の10分前にGPに到着。(日本人らしいのかもしれない)結構待たされると事前に聞いていたので覚悟していましたが、結局45分くらい待ったかな・・・

予約の意味・・・。

そしてやっと先生とご対面。血圧・検温。37.4度と微熱でしたが、先生には平熱と言われました。

いや、でも私普段35度台なんです、と言っても

「こっちでは37度台は平熱だから平気」と。

唖然

いやいや遺伝子レベルで西欧人とアジア人は違うはずだから同じにしないでほしい〜〜。と心の中でツッコむ。小心者の私が出ていました。

「咳もよくあることだから、安静にしておきなさい」

え?え?お薬もないの??

「僕は薬飲まないから、あなたも飲まなくて大丈夫」

(あなた基準とか西欧基準に私を当てはめないで)

診察時間、わずか4分。なかなか疲れた記憶、今でも鮮明に覚えています・・・。

それもあってか、余計NHSにはお世話になりたくなかった。

しかし、事件起きる2020年9月某日。

階段から落っこちて足首を捻挫したようです。これが2度目の病院です。

・NHSの治療の流れ:今回のケース

華金と呼ばれる仕事終わりで、一週間ぶりの外出。玄関を出てわずか10秒。

階段を踏み外して落っこちました。

足首をひどくひねったようで、しばらく踊り場から動けず。

なんとか家に戻るも全く歩けませんでした。この状態が週末も続き、救急に行くことも断念。

グーグル大先生からは、もし骨折していたら堪え難い痛みに襲われるとご教示いただいたので、折れたりヒビが入ったりはしていないだろうと断定しました。

せいぜいちょっと重症の捻挫。

3年というビンテージものの日本産湿布を見つけた。貼って様子見。

少しは痛みがマシになったものの、やはり歩くのは困難だったので、結局水曜日のお昼にGPに行きました。

(ロンドンに越してから初めてでドキドキ・・・。どれだけ待たされるんだろうと心配)

しかし、来てすぐにお医者さんに呼ばれました。

触診後、レントゲンを撮った方が良いと言われ、St.Thomas UCCというウオータールー近くの病院に行くことになりました。

紹介状を渡され、今すぐ言っておいでとのこと。

ウーバーを呼んで、その足で病院へ。

ここは、テムズ川沿いに立つ英国最古の病院の一つ。改装・改築はされているんだろうけど、確かに全体的に見た目はボロい。ナイチンゲールが看護学校を創設した病院と知られています。

ちなみに新型コロナに感染したジョンソン首相も、この病院にお世話になっていました。

話を戻しましょう。

私が行くよう指示されたのはUrgent Care Centre、略してUCC(コーヒーやんと静かにツッコんでおきました)

とどのつまり救急外来?

紹介状には「St Thomas UCC」としか書いていなかったけれど、救急救命科(A&E)の傘下。

このA&E、救急のはずなのに待ち時間がとっても長いことで有名。4時間以内に治療を受けられた患者の割合は8割前後で、昨年10月の数値は、国民医療制度(NHS)イングランドが調査を開始して以来、最悪を記録したそうです。

しかし、パンデミックのおかげかここ数カ月は患者さんが少ないんだそう。私は受付から先生の診察を受けるまで15分くらいかな。全ての行程が終わって病院を出るまで3時間弱でしたが・・・。

A&Eの建物に到着し、まずは受付で紹介状を渡して、基本情報を入力してもらいます。ここで検温と血圧もチェック。

ものの5分で番号札を渡され、呼ばれるまで待機します。

ここもそこまで待たず、番号を呼ばれました。また、問診されます。いつ怪我したかなどの質問はGPの予約電話から数えて既に4回目。(記録してないの?)

ともあれ十個くらいの質問に答え、いよいよ先生の元へ通されます。

私を担当してくださった先生、結論から言いますととっても肝っ玉母ちゃん的テキパキドクター。(注:褒め言葉です)

ぶっきらぼうだけどとっても良い先生でした。

触診され、色々聞かれ。その後、レントゲンを撮ることに。

また、このレントゲン室までが遠いの。松葉杖を渡されてこれでゆっくりゆーっくり歩きなさい、と言われたのですが、不慣れなためすんごく不便で歩きにくい・・・。

汗だくだく、息も絶え絶えになりながら目的地に到着しました。

5〜10分待ち、先生に呼ばれてレントゲン室で骨の写真をめっちゃ撮る。

そして先生の元までゼエゼエ言いながら戻ります。ここでの待ち時間が一番長かった。ちょうど立て込んでいて、母ちゃんドクターが一人で患者をさばきまくっている様子。でも私の顔を見て、ちゃんと声をかけてくれた。

「15分まってね」

実際は30分なんだろうな〜と思っていたけど、その配慮が嬉しいですよね。

本当は1時間弱まったよ。笑

結果は骨折でも骨にヒビが入っているわけでもなかったのでひとまず安心。けれども重度の捻挫には変わりなかったので、痛み止めを処方してもらい、絶対安静と言われました。

基本歩かない!

歩くときは松葉杖!!

そしてゆっくり歩く!!!

「松葉杖は、あなたが今身体障害者であることを示すもの。あなたが歩いているときは、他の人や車はあなたを優先してくれる。あなたは自分を最優先してこけないことだけを考えなさい」と言われました。

ちょっとNHSに対するハードルが下がってよかったと思えた経験でした。そして一連の診療は全て無料です。

・病院の新型コロナ対策

総じて安心できました。

最初は、感染のリスクが高まるかもしれないと思って行くのもためらっていたのですが、めちゃくちゃ掃除担当のスタッフさんはいたし、あらゆる所にアルコール消毒が置かれているし、マスクの着け方間違っている患者さんには指導が入るし。

待合スペースの座席も社会的距離が保たれていたしね。

全体的にやっぱり患者さん少ないのかな?

病院でクラスター発生とかほんとシャレにならないですよね。案外、一番気を使っている場所なのかも。そしてコロナ病棟は全く別の場所にあるらしく、私たちが感染患者さんと接触することもないそうです。

病院耐性が少し上がるとともに、また一つ度胸レベルが上昇しました。

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