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給与ってどう決まるのか?企業視点で考える給与の上げ方

これまで1000人以上のキャリア相談に乗り、100人以上の転職を支援してきた黒岡です。

その中で数多くの「オファーレター」を見てきました。私自身も転職の際、オファーレターを提示いただいてきました。

その上で、「給与とはどの様に決まるのか?」と言う話をしていきたいと思います。

そもそも、給与制度とは?

給与について考える前に、「給与制度」について考える必要があります。全ての給与は、何らかの「給与制度」の元提示されているからです。

給与制度の目的は、社員の「貢献度」と「成長度」を見える化する為に存在しています。

「貢献度」は、社員の経営計画への「貢献度」を意味しています。その社員がお客様や会社に対してどれだけ貢献したか?を金額にして、来期もそれと同等かそれ以上の成果を残してほしいという「期待」をこめて給与が提示されます。

転職の場合は、前職での成果を踏まえて、自社でも同等の貢献をしてほしいという意味で、給与が提示されます。

「成長度」は、経営計画の実現に向けた育成基準に対しての、社員の「成長度」に対して評価し、昇給や賞与で反映します。

給与制度は人事施策の中で極めて重要

20代の第二新卒の様な若手が多く入ってくるけど、30代前後の社員が続々と辞めていく会社というのが世の中には沢山在ります。

このシンプルな要因は、「この会社で頑張っていても自分の給料が上がっていかない、生活が豊かになっていかない」と感じられてしまっている事です。

給与制度が曖昧だと、5年後、10年後の収入がどうなるか分からないので、自分自身の将来設計が出来ません。

また、人は「イメージできる目標」を持つ事で、その目標との差分にモチベーションを感じますが、給与制度が明確でない会社は、イメージできる目標が無い状態なので、モチベーションも持ちづらい状態になってしまいます。

そうすると、その会社で働く理由を見失ってしまい、「離職」となってしまうのです。

社員のパフォーマンスを引き出し、育てる給与制度とは?

①育成計画に合わせて、階段を設定する(JACさんの場合)

全ての人事制度は「経営計画の達成」の為に存在していると思うので、まず「自社が掲げる経営計画に対して、どんな組織を作っていくべきか?その際に、どんな人材が必要で、どう育てていくべきか?」と言う事から考えましょう。

例えば、私の在籍していたJACリクルートメントは、基本的には主軸の人材紹介事業を育てていく事を決めているので、人材紹介事業をマネジメント出来る人と、人材紹介業を極めていく人の2パターンの人材を育てるという事を決めていました。

また、それぞれのコースにおける「階段」が何十階層にも分かれて設定されており、社員はその階段を「売上」と言う分かりやすい評価基準の元、登っていくという形です。

キャリアパス(JAC HPより)

この制度によって、毎年の目標設定は非常に明瞭ではありました。また、毎年の評価についても、売り上げと言う分かりやすい基準のみで評価されるので、不満を感じた事もありませんでした。

一方で、人材紹介業の様に、全社員が同じ仕事をしていて、「売上」と言う分かりやすい基準で評価される仕組みだから上記の給与制度・評価制度が成立していたのも事実で、職種が違う人たちを同一の給与制度・評価制度で評価するというのは難易度が高いと言えるでしょう。

②もはや、評価しない(Ubieさんの事例)

これは画期的過ぎるなと思ったのが、Ubieさんの事例です。

そもそも、「人を評価する」と言う事を撤廃して、すべての人が「事業にだけ向き合える」状態を徹底的に作るというものです。

Ubieさんは、プロダクトカンパニーの印象が強いので、プロダクトを育て上げていく事に集中しようとなった時に、必要となる組織が「事業開発人材」と「エンジニア人材」だけだと。

そして、これらの人々は、「個人でどれだけ成果を上げたか」と言うよりも、「チームで成果を上げる事」の方が求められる。

その為、「個人個人への評価を撤廃」し、「事業が成長すれば、皆、給料が上がる」「事業が成長すれば、皆、SO報酬をより高く獲得できる」という共通のメリットを追いかける。

「MRRの上昇」という分かりやすい基準を持って、皆で追いかける。

そして、その仕組みに対して違和感を感じない人、むしろ気持ちよく働ける人を採用する。

この制度は本当に入り口段階での採用のマッチングが肝になるのだろうなとも思いました。

③本人希望と社内・外市場評価による決定(サイボウズさんの場合)

「100人いれば100通りの働き方がある」

この考え方を制度まで徹底的に浸透させているのがサイボウズさんです。
サイボウズさんの画期的な仕組みとして、個人が「自分が貢献できる価値と欲しい給与・求める働き方」を提示し、社内のマネージャーや部長から「オファー」を貰いそれに対して本人が受け入れる事が給与が決定されるというもの。

サイボウズさんの場合、Kintone以外にも複数事業がある事から、自律分散型組織を作っていきたいという意図からこの様な形が出来ているのではと推察します。

また、社外の給与データ等も参照にしながら、給与を決めているとのことです。

本人の納得感は高いと思いますが、社員には自身のキャリアや報酬についての自立が求められますね。

個人が給与を上げていく為に出来る事

ここまで、組織視点で給与を見てきましたが、それでは個人は給与を上げていく為にどの様にしていけばよいのでしょうか?

上記の制度等の視点から逆算していくと、大事なのは「経営計画や事業計画を正しく理解し、その達成に向けて貢献する事」また、「その計画を一緒に実現したいと思う組織に入社する事」だと言えるのではないでしょうか?

株式会社の目的はどこまで行っても利益の追求にある事は間違いなく、利益の追求をしていく為には顧客に価値提供をする必要があり、顧客に価値提供する為には、競合等との競争で勝てる独自の戦略を持つことが必要であり、その戦略戦術を実現する為に、社員を採用・育成するわけです。

その計画の実現に向けて、「私はこうやって貢献できる。なぜならこういう経験があり、こういうスキルがある。だからこの位の給与が欲しい。」この様にキャリア自律しながら、組織と対等に対話できるようになる人が増えると良いのでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は「給与」について、組織視点と個人視点で書いてみました。給与と言うのは数字で分かりやすく「自身の価値」を評価されるものなのだと思います。

ただ、給与が高くても不幸せな人もいれば、給与が低くても幸せな人もいます。

その違いは「納得感」なのだと思います。

納得感を持つ・持たせるためには、個人は自分と世の中について理解する事。企業は制度を作って個人と明瞭なコミュニケーションを取る事。

これが重要なのだと思います。

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