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NFTマーケットプレイスのOpenSeaがシリーズAで$23M調達など:米国主要VC投資調査vol.32

今週は10件。最近は国内でもコインチェックのリリースなど、NFTの勢いを感じています。

お知らせ

昨年7月から米国主要VC投資調査マガジンを始めました。

米国トップVCと呼ばれるAndreessen Horowitz、Kleiner Perkins、Sequoia Capitalの3社についてまとめています。スタートアップやベンチャーキャピタル、投資家の方の参考になれば幸いです。


【2021/03/15〜2021/03/21】

< Andreessen Horowitz:2社 >
・Insitro $400M / Series C / バイオ
・OpenSea $23M / Series A / NFTマーケットプレイス

< Kleiner Perkins:3社 >
・Secureframe $18M / Series A / サイバーセキュリティ
・Syndicate $1M / Seed / 分散型投資プロトコル
・Viz $71M / Series C / 医療

< Sequoia Capital:5社 >
・CopyAI $2.9M / Seed / ライティング
・Leap Finance $17M / Series B / 学生ローン
・OSO $8.2M / Series C / セキュリティ
・Stripe $600M / Venture / 決済
・PatSnap $300M / Series E / 知的財産(IP)管理


< Andreessen Horowitz:2社 >

Insitro $400M / Series C / バイオ

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参照元/URL:https://www.insitro.com/

バイオテック企業のInsitroがシリーズCで$400Mを調達。

Andreessen Horowitz、Canada Pension Plan Investment Board、ARCH Venture Partners,、Foresite Capital、GV、Third Rock Ventures、などの多くのVC、ファンドが参加しました。

ビジョンとして「機械学習の予測力を創薬に生かす」を掲げているInsitroは、「2020年はHaystack Sciences社(バイオ)を買収したことを含め、大きな成長を遂げた」と創業者/CEOのDaphne Koller氏は述べている。

バイオテック企業を調べていて感じたのが、単独で投資をするより、複数で「薄く張る」パターンの方が多いのかなと。今回のInsitroは初期から8社〜14社が入っており、今まで見てきた同分野の企業もそうだった気が。

だとすれば、「ポートフォリオのバランスを取るため」とか、「一次情報に触れるため」の理由がありそうだなと思うのですが、バイオ系のように見通しを立てるのが特に難しい(新薬の研究に早くて2,3年、そこから開発、臨床試験、承認、販売まで含めると10年以上など)分野は、薄く張るのが王道なのかもしれません。

余談ですが、リンク先企業の中外製薬は2002年にロシュ・グループ(世界有数の製薬企業)に買収されています。


OpenSea $23M / Series A / NFTマーケットプレイス

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参照元/URL:https://opensea.io/

NFTマーケットプレイスを提供するOpenSeaがシリーズAで$23Mを調達。

Andreessen Horowitz、Blockchain Capital、Standard Crypto、その他Naval Ravikant氏、Mark Cuban氏を含む、多くのエンジェル投資家が参加しました。

今週一番おもしろいと思ったリリースで、最近何かと話題になっているNFT(Non-Fungible Token / 代替不可能なトークン)のマーケットプレイスを運営するスタートアップが資金調達を実施。

2017年に設立と、早い段階からこの分野に張っていたことに驚きました。

現在は2,000万個以上のNFT商品があり、1日の取引量は1,000万ドルを超え、過去6ヶ月の合計取引量は100倍以上に増加したそう。

「今のNFTブームは異常な水準(バブル状態)にある」という投資家のツイートもあり、個人的にもそうだろうなとは感じています。新しいものに関心のある層(アーリーアダプター)のお金が流れ込んでいるのがNFTであり、それが過ぎる頃、落ち着く頃にようやくNFTが一般的になるのではないかなと。

大手オークションハウス「クリスティーズ」に続き、「サザビーズ」もNFTに参入するというリリースもあり、目が離せない分野だなと改めて感じました。

この分野で面白いのが、仮想空間で利用ができるデジタルインテリアとして、45万ドル(約4,500万円)以上を売り上げたデザイナーの方がいたり、資金調達をNFTで行うパターンがあったりすることですね。

NFTについては、「アート」という視点でマガジンも書いているので興味のある方はこちらもどうぞ。

note:海外アート最新動向マガジン



< Kleiner Perkins:3社 >

Secureframe $18M / Series A / サイバーセキュリティ

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参照元/URL:https://secureframe.com/

サイバーセキュリティのSecureframeがシリーズAで$18Mを調達。

Kleiner Perkinsがリード、Gradient Ventures、Base10 Partners、その他エンジェル投資家が参加しました。

2020年に設立されたSecureframeが提供するセキュリティプラットフォームは、数十社のクラウドプロバイダーやアプリと統合し、顧客の状況を把握することで「SOC2」「ISO27001」という2つの重要なセキュリティに関する認証の維持を支援。

この2つの単語について、SOCは2001年に米国で発生したエンロン事件を機に制定されたもので、ISO27001は国際規格の1つとして3年毎に審査があるなど、今回初めて知りましたが、セキュリティサービスの裏側を覗いたような感覚があり非常に興味深いなと感じました。

また、この半年間で、ソフトウェアのHasuraや、Y Combinatorを卒業したOmni(AIを活用した営業や電話対応のサポート)など、100社以上の新規顧客を獲得し収益の伸びが10倍以上になったと、共同創業者/CEOのShrav Mehta氏は述べています。

今後は前述した2つの認証以外にも、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)のような医療に関するものや、PCIコンプライアンス(クレジットカードのデータセキュリティ)などを含めたリスク・コンプライアンス管理プラットフォームへ成長させていく予定。


Syndicate $1M / Seed / 分散型投資プロトコル

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参照元/URL:https://syndicateprotocol.org/

分散型投資プロトコルを提供するSyndicateはシードラウンドで$1Mを調達。

IDEO CoLab Ventures、Electric Capital、Delphi Ventures、CoinFund、Robot Ventures、Kleiner Perkins、DeFi Alliance、Nascent、その他18人のエンジェル投資家がこのラウンドに参加しました。

現在はプライベートベータ版として運営されているそうで、サイトを見ても画像のように「Coming soon」状態のため、全体が掴めないのですが、仮想通貨関連サービスのようです。

記事に「DeFi」という単語が出てきたのですが、意味としては、「Decentralized Finance:分散型金融」で、ブロックチェーン上に構築された金融アプリケーションを表す用語。

内容も掴めなかったのですが、金額が$1M(約1億円)というのも意外な感じがしました。VCや投資家の数・分野として、もっと集まりそうなイメージがあるのですが、あえて抑えたパターンかもしれません。

仮想通貨で思い出したのですが、コインチェックがNFTを取引するマーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」の提供を開始(3月24日より)するとリリースがありました。

海外アート最新動向マガジン(OpenSeaでも触れましたが)も読んで下さっている方はご存知方と思いますが、NFTにも関心があるため、以前から動きのあったコインチェックのリリースは見ていたのですが、それが形になることにワクワクしていますw


Viz $71M / Series C / 医療

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参照元/URL:https://www.viz.ai/

AIを活用する医療スタートアップのVizがシリーズCで$71Mを調達。

Scale Venture Partners、Insight Partnersがリード、Greenoaks、Kleiner Perkins、Threshold Ventures、CRV、Innovation Endeavors、Susa Venturesがこのラウンドに参加しました。

内容として、AIを活用したケアコーディネーション(?)サービスとあり、意味が掴めなかったのですが、2018年のBRIDGEの記事によると、「脳卒中の脳スキャンを分析するソフトウェアプラットフォーム」を提供しているそう。

深層学習のアルゴリズムを活用して、Viz.aiのソフトウェアはCTスキャンを分析して、脳卒中を示す兆候を見つけ、自動的に神経学の専門家にアラートを送る仕組みになっている。これらが数分のうちに行われ、患者にとって良い結果をもたらす確率を高めることが重視される。

引用元:脳梗塞などの早期発見を目指すAIヘルスケアスタートアップViz.aiが2,100万ドルを調達、Kleiner PerkinsとGVが投資(リンク

今後はこの技術を脳卒中だけでなく、心臓病、肺疾患、外傷などの他の分野にも拡大していく方針。



< Sequoia Capital:5社 >

CopyAI $2.9M / Seed / ライティング

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参照元/URL:https://www.copy.ai/

ライティングヘルバーツールを提供するCopyAIがシードラウンドで$2.9Mを調達。

Craft Venturesがリード、Atelier Ventures、Sequoia Capitalもこのラウンドに参加しました。

昨年設立されたCopyAIのサービスを利用することで、ユーザーが入力した単語を元に、広告のキャッチコピー、記事の見出しなどを自動で作成することが可能。

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Source:https://www.copy.ai/

HP上でもお試しで動かすことができるのですが(単語の指定はできませんがイメージを掴むのには良いなと)、Chromeの拡張機能でも使えるそうなので、興味のある方はこちらからどうぞ。

多分、Twitterだったと思うのですが、「人が見えない記事やコンテンツは、誰が書いても同じに見えてしまうので、独自のコンテンツと、それに付随するコミュニティを作る必要がある」といったツイートを見た覚えがあったことを思い出しました。

まさにこういったサービスが普及することで、クラウドワークスやランサーズなどのアウトソーシングで作られている「人が見えないコンテンツ」は淘汰されていくのではないかと思います。

これはすでに、CopyAIのARR(年間経常収益)の643,200ドル(約6430万円)という数字にも表れていて、この金額分のシェアが全て「人間⇨自動化」されたわけではありませんが、仮にこの3割だとしても、約2000万円分が今では誰かの売り上げだった数字から減ったことになります。

サービス公開から2日間で、約700人の登録があったことでマネタイズが可能だと判断し開発を進めてきたそう。まだシードの段階ではありますがとても気になるサービスだなと感じています。

テキストコンテンツに限らずですが、日々積み上げているものが、ちゃんと今後の土台になっているのか?未来の自分を助けるものになるのか?を考えながら取り組んでいきたいと思いました。


Leap Finance $17M / Series B / 学生ローン(フィンテック)

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参照元/URL:https://leapfinance.com/

インドで学生ローンを提供するLeap FinanceがシリーズBで$17Mを調達。

Jungle Ventures、Sequoia Capital India、Owl Venturesが参加。

毎年何十万人もの10代の若者が、高等教育を受けるためにインドから異国の地へ移り住む中で大きな課題となっているのが、現地でのクレジットヒストリーがないことによって、さまざまな金融サービスを受けることができていない状況(できたとしても割高な料金が必要に)。

例として、米国に留学しているインド人の学生は13%を超える金利で融資を受けるのに対し、現地に住む学生は、その半分以下で融資を受けることが可能。

2019年にLeap Financeは、この問題を解決するために設立。現在は230以上の大学と提携し、これまでに(翻訳が正しければ)234億ルピー(約352億円)相当のローンを学生に提供しています。

学生に適正なローンで融資するための取り組みとして「彼らが生成したデータ(代替データと派生データ)をインド自身で評価する」と翻訳されたのですが、これは現地の金融機関でなく、Leap Financeが、学生のインドでのクレヒスを参考にして融資すると解釈。

まだまだ人口が増え続ける環境の中でどうなっていくのか。シェアを考えたら追い風であることは間違い無いと思うのですが、インドは増える人口に対して雇用が追いついていないという問題も抱えているため、その辺りもうまく改善できると良いのかなと。

これまでにもセコイアインドの投資先として、インドという国について何度か調べてはきたのですが、今回はこんなサイトを見つけました。

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Source:Invest India(https://www.investindia.gov.in/ja-jp

サラッと流し読みをしただけですが、インドについて知ることは今後ますます重要だなあと感じているのでちゃんと読みたい。


OSO $8.2M / Series A / セキュリティ

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参照元/URL:https://www.osohq.com/

認証系(?)スタートアップのOSOがシリーズAで$8.2Mを調達。

Sequoia Capitalがリード、SV Angel、Company Ventures、Highland Capitalがこのラウンドに参加しました。

「開発者向けにオープンソースのライブラリの作成、アプリケーションに認可機能を簡単に組み込むことができるようしている」とあり、日本語でも探してみたのですが、情報がなかったためよく分からず。

「承認」「認証」「Okta」という単語が出てくるので、IDaaS分野のサービスだとは思うのですが、Oktaの競合にはならないという一文もありました。

調べる中で不覚にも笑ってしまったのがこちら(OSOブログより)w

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Source:https://www.osohq.com/developers/blog


Stripe $600M / Venture / 決済

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参照元/URL:https://stripe.com/en-jp

オンライン決済サービスを提供するStripeがベンチャーラウンドで$600Mを調達。評価額は$95Bnへ。昨年4月の資金調達で$36Bnだった評価額は、1年足らずで約3倍に。

Sequoia Capital、National Treasury Management Agency (NTMA)、Allianz X、Axa Group、 Baillie Gifford、Fidelity Management & Research Companyが共同リードでこのラウンドに参加。

このニッチなマガジン読者に知らない人はいない(はずの)フィンテック企業Stripe。Forbesの記事によると年内の上場が噂されているそう。



PatSnap $300M / Series E / 知的財産(IP)管理

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参照元/URL:https://www.patsnap.com/

知的財産(IP)プラットフォームを提供するPatSnapがシリーズEで$300Mを調達。

Tencent Holdings、SoftBank Vision Fund Ⅱがリード、Sequoia Capital China、CITIC Industrial Fund、Shunwei Capital、Vertex Venturesが参加しました。

共同創業者のJeffrey Tiong氏が10年以上前に医療機器業界で働いていたときに、技術の世界では知的財産や特許がいかに重要であるか、を実感したことがPatSnap創業の原体験になっているそう。

2007年にシンガポールで設立されたPatSnapは、グローバルな特許検索データベースを構築、そこから科学論文、政府の研究開発助成金、市場レポートなどの2億5000万件以上のデータを解析することで企業の支援を行なっています。

同社は現在、50カ国以上で1万人以上の顧客、700人の従業員が各国で働いているのですが、顧客には、Tesla、PalPal、Walt Disney、Spotify、NASAなどの大手企業がずらりと。

NASAもそうですが、ウォルトディズニーが入っているのは驚きました。ですがこうしたエンターテイメント企業は、キャラクターの問題があることを思えば納得。

上記以外にも、ハイネケンやダイソンといった企業の名前もあり、幅広い企業がPatSnapを利用していることがわかります。

知的財産(IP)管理という、ニッチな分野ではありますが、間違いなくニーズがある中で、これだけの企業が利用しているというのは競合がいたとしても強いですね。ここを新規で獲りに行くスタートアップもなさそうな気がしますし。

この分野について調べた事がなかったのですが、国内でもいくつか見つかったので興味のある方はこちらからどうぞ。

参考:【2020年】特許・知的財産管理システム5選を比較


以上です。

来週は、28日(日曜日)に更新予定です。

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