オンライン中国語学習のLingoAceがシリーズAで$6Mなど:米国主要VC投資調査vol.19
今週は6件です。近日中に過去記事のアーカイブを編集する予定なので、未読の方はこちらからどうぞ。
お知らせ
7月から米国主要VC投資調査マガジンを始めました。
米国トップVCと呼ばれるAndreessen Horowitz、Kleiner Perkins、Sequoia Capitalの3社についてまとめています。スタートアップやベンチャーキャピタル、投資家の方の参考になれば幸いです。
【2020/11/09〜2020/11/15】
< Andreessen Horowitz:1社 >
・Isovalent $29M / Series A / セキュリティ
< Andreessen Horowitz & Sequoia Capital:1社 >
・Fishtown Analytics $29.5M / Series B / データ解析
< Sequoia Capital:4社 >
・Lingoace $6M / Series A / Edtech(中国語学習)
・Remote $35M / Series A / HR
・SentinelOne $267M / Series F / サイバーセキュリティ
・Zhiketong Technology $50M / Series D / ホテルマーケティング
< Andreessen Horowitz:1社 >
Isovalent $29M / Series A / セキュリティ
参照元/URL:https://www.isovalent.com/
セキュリティプラットフォームを提供するIsovalentがシリーズAで$29Mを調達。
Andreessen HorowitzとGoogleがリード、Cisco Investments、SV Angel、Robin Vasanが参加した。
合わせて、これまでステルスで進めていたサービス、企業のアプリケーションの接続や監視・セキュリティ対策を支援するためのCilium Enterpriseを発表しました。
従来のサービスであるCilium Open Sourceでは、eBPFベースのGKEデータプレーンを提供しており、Adobe、Google、Datadog、GitLabなどの企業で利用されている。
CEOのDan Wendlandt氏と、CTOのThomas Graf氏は、Linuxカーネルでネットワーク製品の構築への深い経験を持っています。
北沢:CTOのThomas Graf氏に関しては、サービスの元になっているCilium(オープンソースセキュリティ)の創立者とあり、この分野の第一人者(?)の方なんでしょうか。
あいも変わらず、セキュリティ系は詳しくは分からないのですが、Googleが自社サービスであるGKE Dataplane V2(リンク)にもCiliumを導入しているのもあって、今回のラウンドに参加しているのかなと思いました。
GVからではなく、Googleからの投資だったのはそれが理由?
< Andreessen Horowitz & Sequoia Capital:1社 >
Fishtown Analytics $29.5M / Series B / データ解析
参照元/URL:https://www.fishtownanalytics.com/
データ解析ツールを提供するFishtown AnalyticsがシリーズBで$29.5Mを調達。
Sequoia Capitalがリード、Andreessen Horowitz、Amplify Partnersが参加しました。また、SequoiaのパートナーであるMatt Miller氏は、Fishtown Analyticsの取締役会に参加します。
同社は今年4月にシリーズAで$12.9Mを調達しており、この早いペースでの資金調達は市場の拡大・需要の大きさを示しているとのこと。
オープンソースのデータ解析ツール「dbt」を開発し、SQLの知識があれば、データの品質テストや、データの変換ワークフロー(?)を構築することが可能。
北沢:4月に$12.9Mを調達してから、11月に$29.5Mとはかなりハイペースな進め方だと思いましたが(通常なら1年程度は保つと思うので)、今回のラウンドは、セコイアのパートナーであるMatt Miller氏から打診があったそう。
創業者兼CEOのTristan Handy氏は、当初はこれを拒否したそうですが、最終的には今回のラウンドを進めることに。
詳細な記載はなかったのですが、セコイア社のパートナーシップに書いた40ページに及ぶメモと、タームシートを元に話を進めた様子。
TCの記事でTristan Handy氏は「これは私達にとって、非常に生産的なことでした。」と述べているため、両者納得のいく話し合いがされたとは思いますが、発表リリースで悪いことは言わないはずなので、もしかしたら...?
この辺りはセコイア社の株式の保有数や、関係に大きく影響されると感じます。ただ、前回の初期ラウンド、シリーズAでは参加していないため、取締役会に参加するリーダーシップ(強引さが)あるシリーズBになったのでは。
< Sequoia Capital:4社 >
LingoAce $6M / Series A / Edtech(中国語学習)
参照元/URL:https://www.lingoace.com/
シンガポールの中国語学習プラットホームのLingoAceがシリーズAで$6Mを調達。 資金調達の総額は$13Mへ。
Sequoia Capital Indiaがリード、Shunwei Capitalがフォローオンでこのラウンドに参加しました。
シンガポールの統計局によると、東南アジアには人口の25.7%が5歳から19歳までの学生で、オンライン学習を必要とする子供や若者が約3億6300万人いるという。
同社は4歳から15歳までの非中国語圏の学生を対象とし、80カ国で10万人以上の学生にサービスを提供。今ではシンガポール以外にも、北京、武漢、ロサンゼルスにも進出している。
北沢:英語のオンライン学習はありましたが、中国語もオンラインで学ぶ時代なんですね、知りませんでした...
サイトを見ると、対象年齢に合わせたデザインになっていて、「知らない言語」というハードルが高いものに対して取り組みやすい設計になっていると感じました。
Covid-19の影響の中で、今後はAIやAR、VRなどの技術も取り入れていく予定とのことで、エンタメ系だけでなく、学習系コンテンツも学び方が多様になってくるのかもしれません。
言語学習で言えば、VRで全く知らない人と、アバターを介してコミュニケーションを取る授業とか緊張感があって面白そうです。ゲームなどを通じてさらに実践的な学習ができそう。
対面授業ができないことが、追い風になるジャンルだと思うのでこれは伸びるのではないかと。
その流れで、今後は既存の英語学習プラットホームを買収したり、されたりというのが出てくるのかもしれません(これも気になる)。
調べる中で出てきた、シンガポールと中国の関係性や、華僑の歴史など、興味を引くテーマがあったのが個人的には発見でした。好奇心が強いのか、知らないことを見つけると知りたくなりますw
Remote $35M / Series A / HR
参照元/URL:https://remote.com/
HRプラットフォームを提供するRemoteがシリーズAで$35Mを調達。
Index Venturesがリード、Sequoia CapitalやAaron Levie、Zach Weinberg、Kevin and Julia Hartzなどが参加しました。
国際的な給与計算、福利厚生、コンプライアンス、税金、ビザ関連など幅広く対応。
立ち上げ以来、顧客数が毎月2倍のペースで増加。また、今回の資金調達を利用して、事業を展開している現在の17カ国から30カ国に拡大する計画。
北沢:最初調べた時にremote.comのドメインがよく取得できたなと思いましたw 相当前から仕込んでいたのか、後から買ったのか分かりませんが、今なら一千万以上付きそうなドメインではないでしょうか。
Remoteはオフィスを持っていないそうで、社名の如く、全てリモートで開発や運用をしているとのこと。
この環境下で増えているのだと思いますが、 文化や社風などの、ある種の空気感はリモート組織の中でどう醸成されていくんだろうか?と調べていると感じます。
HR系のサービスは、自社で抱えるよりも(自社事業でない限り)アウトソーシングする方がコスト削減になり、浮いた人員を主力事業に回せたりするので一般的になるのかなと思います。
最近では、電通が全体の3%である230人を業務委託契約に切り替える、とニュースになっていましたが、今後こういった動きが加速する中で、自分の仕事はどうなっていくのか?を考えるキッカケになるかと。
SentinelOne $267M / Series F / サイバーセキュリティ
参照元/URL:https://www.sentinelone.com/
サイバーセキュリティ企業のSentinelOneがシリーズFで$267Mを調達。今回のラウンドで評価額は$3B以上に。
Tiger Global Managementがリード、Sequoia Capital、Insight Partners、Third Point Venturesが参加しました。
SentinelOneは、エンドポイント保護(EPP)を中心としたセキュリティプラットフォームを開発。アンチウイルスなどを使ったマルウェア感染から、パソコンやスマートフォンなどの端末を守るサービスを提供。
また、エンドポイントでの検出と対応(EDR)で、被害が表面化する前のウイルスを見つけることもできるEPPとEDRの2重セキュリティを備えています。
この技術で世界中3,500社以上の顧客を獲得。前回の2月のシリーズE以降から、同社の年間経常収益が前年比2倍以上になり、Fortune500の企業からの問い合わせ・予約が140%急増した。
北沢:エンドポイントという単語自体はどこかで聞いたことがあるかなーぐらいの認識で新鮮だったため、好奇心をくすぐられるリリースでしたw
EPPとは「Endpoint Protection Platform」の略称で、マルウェアによる攻撃を水際で防ぐことを目的にしているそう。現状では、万単位でウイルスが日々増えているとも言われているため、後述するEDRと組み合わせて対策することが重要とのこと。
個人が日頃生活する中で、サイバー攻撃やウイルスを意識することはそうないと思うのですが、企業としては死活問題のため需要は間違いなくある分野だと感じます。
EDRとは「Endpoint Detection and Response」の略称で、端末内に侵入したウイルスやランサムウェアを見つけることが目的。EPPをすり抜ける高度なサイバー攻撃もあるため、やはり組み合わせて対策することが必須かと。
どうしても目に見えないものを軽視しがちですが、被害が出てから対処しては遅いので、先手先手の対策がこれからはより重要になると思いました。
簡単にできることだと、スマホはOSを最新のバージョンにしておく、端末のデータのバックアップを取っておくこと!サイバーお兄さんとの約束だ!w
Zhiketong Technology $50M / Series D / ホテルマーケティング
参照元/URL:https://www.zhiketong.com/
WeChatを活用したホテルのデジタルマーケティングツールを提供するZhiketong Technologyがシリーズで$50Mを調達。
CYTS Hongqi Partnership、Vision Plus Capitalがリード、Axiom Asia Private Capital、Sequoia Capital China、Shunwei Capital、Yijing Capitalが参加しました。
同社はこれまで7回のラウンドを経て、$119M以上の資金調達を実施。
創業者でCEOの劉華氏は「中国の3,000以上の五つ星ホテル(Wyndham/Rosewood Hotelなど)が、Wechatを活用したZhiketongのマーケティングツールを採用した。」と述べている。
北沢:Zhiketongは中国語で「直客通」という意味だそうで、サービスにピッタリな名前で良いですね。
Wechatについてはトランプ大統領がダウンロードを禁止にする!と、一時期ニュースになっていましたが、現状はカリフォルニア州の連邦地裁が米大統領令の執行を差し止めたため、まだ利用可能とのこと。
その影響が同社にとってどんな影響が出ているのかは、リリースでは触れられていませんでしたが、中国国内ユーザーがメインのため、大きな影響はなく、今回の調達もできたのでは?と予想。
顧客のホテルには上記以外にも、リッツカールトン、セントレジス、シェラトン、パークハイアット、ヒルトンなどが含まれており、今では80%以上の5つ星ホテルがZhiketongを利用しているそう。
どんな料金プランになっているのか記載がなかったのですが、Zhiketongを利用することで相当数の申し込みや、リピートがあったためこれだけの顧客基盤を築くことができたのでないでしょうか。
以上です。
シリーズFで$267Mという巨額の調達をしたSentinelOneの方が、メインとしては華があったと思うのですが、個人的には開花途中のLingoAceに期待しています。
合わせて、VR空間でのコミュニケーションの取り方について考えてみるのも面白そうだと感じました。
来週は、23日月曜日に更新予定です。
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