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個人向けの遺伝子解析キットを提供する23andMeがシリーズFで$82.5Mを調達など:米国主要VC投資調査vol.24

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

今回は先週分と合わせて5件でした。

お知らせ

昨年7月から米国主要VC投資調査マガジンを始めました。

米国トップVCと呼ばれるAndreessen Horowitz、Kleiner Perkins、Sequoia Capitalの3社についてまとめています。スタートアップやベンチャーキャピタル、投資家の方の参考になれば幸いです。


【2020/12/21〜2021/01/03】

< Andreessen Horowitz:0件 >

< Kleiner Perkins:1社 >
・Neuron23 $80M / Series B / バイオ

< Sequoia Capital:4社 >
・Graphcore $222M / Series E / AIチップ
・Ironclad $100M / Series D / デジタル契約書
・Lalamove $515M / Series E / 物流
・23andMe $82.5M / Series F / バイオ(遺伝子解析)


< Kleiner Perkins:1社 >

Neuron23 $80M / Series B / バイオ

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参照元/HP:https://neuron23.com/

バイオテック企業のNeuron23はシリーズA、及びシリーズBで$133Mを調達。

Westlake Village BioPartners、Kleiner Perkinsが参加するシリーズAと、Redmile Groupがリード、Cowen Healthcare Investments、Acorn Bioventures、HBM Partners、Perceptive Advisors、Surveyor CapitalなどがシリーズBに参加しました。

Westlake Village BioPartners と Kleiner Perkins はフォローオンでBでも参加。

Neuron23は、2018年にドイツのバイオテクノロジー企業であるOrigenis GmbHと共同で設立。

分野として、パーキンソン病や多発性硬化症などの神経炎症性疾患、全身性の自己免疫疾患や炎症性疾患を含む神経変性疾患の治療法を特定するための治療法開発に取り組んでいる。

臨床試験に進める予定であるプログラムは、複数の中枢神経系(CNS)に加えて、全身疾患に対応できる可能性があるそう。

Neuron23のCEO兼取締役会議長であるNancy Stagliano氏は、「Neuron23のアプローチは、遺伝的に定義された神経疾患や炎症性疾患の治療方法に革命をもたらし、患者の生活を大幅に改善することができます」と述べています。

北沢:最近バイオ系企業を見かけることが多い気がしますが、何か、法律や制度の改正など追い風になることが起きているのでしょうか。

以前、某VCの方が「事業のタイミングを掴むためには、(国の動きを把握するために)首相官邸のリリースを常にチェックすべき」といったニュアンスのことを仰られているのを何かの記事で読んだことを思い出しました。

上に出てきた「中枢神経系(CNS)」が、聞きなれない言葉だと思い調べてみると、神経系の中で多数の神経細胞が大きくまとまっている部分を指し、ADHD(多動症)、統合失調症や双極性障害などが関係するそう。

知れば知るほど分からないことが増えてくる分野ですが、知らなかったことを知るのはおもしろいですね。

読んだ方も感じたと思うのですが、Westlake Village BioPartners と Kleiner Perkins は今回シリーズBでも参加しており、同時期にA、Bとなると、これはフォローオンになるのでしょうかw こういったケースは見たことがなかったので不思議だなと。



< Sequoia Capital:4社 >

Graphcore $222M / Series E / AIチップ

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参照元/HP:https://www.graphcore.ai/

AIチップメーカーのGraphcoreがIPOを視野に入れたシリーズEで$222Mを調達。

Ontario Teachers' Pension Plan(オンタリオ州教職員年金基金)がリード、Sequoia Capital、M&G Investments、Foundation Capital、BMW i Ventures、Fidelity International、Dell Technologies Capital、Microsoft、Baillie Gifford、など多くのVC、企業が参加しました。

イギリスのブリストルを拠点に2016年に設立されたGraphcoreは、英国ではなく、米国のナスダックに上場する計画がある、という噂が流れている。

Graphcore社が開発しているAIアクセラレータは、AIアプリケーション、特にニューラルネットワーク、ディープラーニング、機械学習を高速化するために設計された、特殊なハードウェアの一種である。

今年7月には、第2世代のフラッグシップチップGC200と、その上で動作する新しいIPUマシン「M2000」を発表しました。

CEO兼共同創業者のNigel Toon氏によると、Nvidia(競合)によるARMの買収については、特に驚くことはないという。またGraphcoreには買収の計画はないとのこと。

北沢:AIチップを開発するGraphcore。テック系のソフトウェア企業は、創業から上場まで早いことが多いなと思っているのですが、半導体やチップ系の企業もそんな傾向があるのかなと調べていて感じています。

話を逸らしますが、今回参加しているBMW i Venturesは、名前の通り、BMWのCVCとして2011年に設立。Crunchbaseで見ると、65件(その内リードが23件)に投資して、Exitが11件。打率6割と好成績(打率が全てではありませんが結果として)。

日本でもサイバーエージェント、GREE、ドコモなど多くの企業がCVCを持っていることは知っていましたが、海外のCVCは全然知りませんでした...これもまとめてみたいw

また、NvidiaによるARMの買収についてですが、ニュースで話題になっていたのでリリースを見た方も多いかと思います。

今回の調達リリースの中で、CEO兼共同創業者のNigel Toon氏は「我々はNvidia ARMとの取引が良いことだとは考えていない。」と述べていますが、過去にToon氏はNvidiaに事業売却したことがあることに対して、記事の編集者に「それは皮肉な話だ」と書かれていて面白いなとw

分野自体への関心は低いのですが、投資家として参加しているマイクロソフトや、他テック企業との関係次第では注目かなと思いました。


Ironclad $100M / Series D / デジタル契約書

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参照元/HP:https://ironcladapp.com/

業務契約書の作成・管理をソフトウェアで支援するIroncladがシリーズDで$100Mを調達。評価額は$950M以上へ。この評価額はIroncladの予測年率収益の約50倍に相当するという。

メアリー・ミーカー氏が率いるBondがリード、Sequoia Capital、Accel、Emergence Capital、Y Combinator Continuity Fundが参加しました。

2014年に設立されたIroncladは、ノーコードで電子契約書を作成できるソフトウェアを提供しており、法的な専門家でなくても、ドラッグアンドドロップで作成することができます。

顧客にはDropboxやMastercard、L'Oréal、Staples、Box、Foxなど、多くの企業が名を連ねています。

過去には、2019年度の収益が197%成長した後、4月に終了した四半期の収益成長率は前年同期と比較して162%に鈍化し、Ironcladの財務報告書によると、成長率は昨年同期と比較して7月の四半期には144%にさらに鈍化した。

同社は、来期の収益は、今期に比べて74%増加すると予想しており、年間損失はわずかに増加すると予想している。

北沢:電子契約書作成サービスを提供するIronclad。SalesforceやDocuSignとも連携しており、電子署名のリクエストや、Salesforceに入っている顧客情報をもとにIroncladで契約書を作成することも可能。

話題のノーコードサービスというのもあり、注目が集まりやすいのかなと。YouTubeにもいくつか動画がありました。

ただ、DocuSignを使えば、電子契約書作成から、電子署名、契約書管理、と全て出来ることを考えたら、Ironcladを使う必要がないのでは?と感じたのですが、創業者/CEOのJason Boehmig氏曰く「企業の法務部向けに作っている点」が強みとのこと。

法務部向けに作っていることは強みになるのか?一貫してDocuSignを使う方が企業として見たらコスト的にも良いのでは?と思ってしまうのですが、Fortune 500の企業も導入していることを考えると、そんな単純な話ではないのかもしれません。

海外のスタートアップについて調べていると、大企業がスタートアップのサービスを導入している事例が時々出てくるのですが、どんな意思決定があったのかが不思議だなと毎回感じています。

今後の動きとしては、DocuSignと連携しているので、このまま買収されるのがいちばんあり得そうですね。

事業拡大を考えたらバチバチになることは目に見えていますし、DocuSign側としては、Ironcladが伸びればOK、伸びなくても安く買えるポジションを取れているため強いなと。

DocuSignについては、nekoさんの記事が非常にわかり易かったので未読の方はこちらからどうぞ。

その他参考記事&動画


Lalamove $515M / Series E / 物流

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参照元/HP:https://www.lalamove.com/global

オンデマンド物流企業のLalamoveがシリーズEで$515Mを調達。前回の調達は2019年2月の$300Mで、ユニコーン企業になって以来の資金調達に。

Sequoia Capital Chinaがリードし、Hillhouse CapitalとShunwei Capitalが参加しました。これら3社は、いずれもフォローオンで参加している。

2013年に配送サービスとして設立されたLalamoveは、貨物サービスや引っ越し事業、車両レンタルなどの事業展開するまでに成長しました。現在では、中国本土の352都市に加え、香港、台湾、ベトナム、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイまで事業規模を拡大。

同社は10月に米国に初進出し、現在は月間アクティブドライバー数が約48万人、月間アクティブユーザー数は約720万人としています。

COVID-19の影響で、年初に出荷量が93%減少したが、W11(独身の日)の前にもかかわらず、受注量が前年比82%増加するなど、強力な回復を見せている。

北沢:バイオ系も多い印象ですが、物流も増えてきている感覚があります。

Stordはソフトウェアによる物流の管理ですが、物流版Uberと呼ばれるManbang Groupは、トラックの運転手と物流業者をマッチングするアプリ+金融サービスを提供しています。

シリーズEまで来ると、予想も何もない気がしてしまうのですが、上に挙げたManbang Groupとは同じ物流でも、若干毛色が違うので競合にはならないのかなと。マッチングサービスを始めるとすれば話は別ですがw

多分、これを読んでいる方の多くは、物流よりも「W11・独身の日セール」に関心があると思うので(少なくとも僕はそうですw)、少し掘り下げてみましょうw

そもそも、なぜ、11月11日が独身の日かというと、1が並んでいるため、「1人が並んでいるように見える」ことから始まったとか。

「11月11日に祝われる「独身者の日」のこと。「独身の日」ともいう|引用元:Wikipedia

2009年から始まったW11ですが、12回目となる今年のセールでは、過去最大の25万以上のブランドが参加し、8億人以上のユーザーが利用、流通総額は4,982億元(約7兆7,000億円)を記録。

記載の中に「国・地域別の流通総額ランキングでは日本が2016年から5年連続で1位」とあったのですが、これ凄いことだなと。

流通総額で1位ということは、それだけ日本人に消費欲があることに加え、本場の中国のユーザーよりも消費に回すお金を持っていることの表れでもあります(解釈が違っていたら教えて下さい)。

いやー、独身の日セールの売り上げがすごいとは知っていましたが、ECとしての強さや、流通総額が右肩上がりで増えているのは知りませんでした。

アリババグループ取引額
・2009年:0.52億元
・2010年:9.36億元
・2011年:33.6億元
・2012年:191億元
・2013年:350億元
・2014年:571億元
・2015年:912億元
・2016年:1207億元
・2017年:1682億元
・2018年:2135億元
・2019年:2684億元

引用元:Wikipedia

昨年が2684億元だったのに対して、今年は4,982億元(約7兆7,000億円)と、その勢いは留まることを知りません。

まあ、ご存知の通り、独身の日というネーミングは形だけで、欲しいものが安く手に入るのであればお金は回るのだと当たり前のことを感じましたw

時間切れでここまでになりますが、もっと調べたいと思える話題でした。


23andMe $82.5M / Series F / バイオ(遺伝子解析)

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参照元/HP:https://www.23andme.com/

遺伝子解析サービスを提供する23andMeがシリーズFで$82.5Mを調達。これまでに調達した累計額は$850M以上へ。

Sequoia CapitalとNewView Capitalがリードでこのラウンドに参加しました。

2006年に設立された23andMeは、個人向けの在宅遺伝子テストキットの提供をしており、このテストを行うことで、自身の健康状態や、遺伝子に基づく家系図について知ることができる。

テストで収集したデータを、Covid--19の感受性にどのように影響するか、またサードパーティーの研究を支援するために活用する計画。ただし、プライバシーの問題があるため、匿名化されたデータで共有される、と23andMeは強調している。

同社は今年初め、サービスの売上が伸び悩みを理由に14%の雇用を削減した。

北沢:始め見たときは医療・製薬系かと思っていたのですが、少し違ったようで、個人向けのDNA解析サービスという珍しいスタートアップ。

料金体系は3つ。99ドル・199ドル・499ドルと内容によって分かれているのですが、特性レポートはおそらくストレングスファインダーの遺伝子版といった感じでしょうか。それ以外がよく分からず。

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家族の健康履歴ツリーは、罹りやすい病気が分かるとか、耐性がある疾患が分かりそうなイメージですがどうなんだろう。

設立が2006年ということですが、遺伝子解析という分野でこれだけの知見があるなら、これまでに大手バイオ企業から買収提案がありそうな気が。

14年以上もこの分野で戦い続けるのは並大抵のことではないはずなので、そうした姿勢も投資家に評価されていると感じます。

今回のCovid-19の影響もあり、こうした健康だけでなく、自分自身を知ることへの検査についてのハードルがだいぶ下がっていることも、23andMeの追い風になっているのではないかと思いました。

僕もこれは興味があるのでやってみたいですね。偏見ですが、ストレングスファインダーの結果に納得している方は遺伝子解析にも興味がありそうw


以上です。

来週は、11日月曜日に更新予定です。


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