ポッドキャスト用の広告&分析プラットフォームBacktracksがシードで$1.6Mを調達など:米国主要VC投資調査vol.26
今週は6件です。スタートアップ・VC界隈ではClubhouseが話題になっているのもあり、Backtracksをもってきましたw
お知らせ
昨年7月から米国主要VC投資調査マガジンを始めました。
米国トップVCと呼ばれるAndreessen Horowitz、Kleiner Perkins、Sequoia Capitalの3社についてまとめています。スタートアップやベンチャーキャピタル、投資家の方の参考になれば幸いです。
【2021/01/18〜2021/01/24】
< Andreessen Horowitz:1社 >
・TripActions $155M / Series E / 旅行予約
< Kleiner Perkins:2社 >
・Backtracks $1.6M / Seed / ポッドキャスト(広告&分析)
・Vera Therapeutics $80M / Series C / バイオ
< Sequoia Capital:3社 >
・CoinSwitch Kuber $15M / Series A / 仮想通貨取引所
・Darwinbox $15M / Series C / HR
・Lalamove $1.5B / Series F / 物流
< Andreessen Horowitz:1社 >
TripActions $155M / Series E / 旅行予約
参照元/HP:https://tripactions.com/
法人専用旅行予約プラットフォームを提供するTripActionsがシリーズEで$155Mを調達。
Andreessen Horowitz、Addition、投資家のElad Gil氏がリード、Zeev Ventures、Lightspeed Venture Partners、Greenoaks Capitalも参加しました。
2015年に設立されたTripActionsは、法人旅行の予約と管理を支援するソフトウェアツールを提供しており、今回の資金調達で評価額は$5billionへ。
Covid-19の影響で昨年3月下旬、TripActionsは数百人のスタッフをレイオフしました。ですが、法人旅行の回復を受け、同社の広報担当者は、現在は「週単位で」3%から6%の間で市場は回復しているといいます。
また、TCの今後の法人旅行市場について尋ねられると、「すぐに100%ではないかもしれないが、これから1年以内には75%にまで回復するだろうと、強く信じている」と述べている。
レイオフされた従業員の再雇用については返答待ちとのこと。
北沢:Covid-19で大打撃を受けていた旅行市場ですが、TripActionsに関しては、結果的に追い風になっているのではないか?とTCでは報じられていました。
海外ではワクチンの普及もあり、昨年を生き延びた企業にとっては、今年はいい意味で大きな変化の年に。逆にCovid-19によって伸びていた企業(ECやゲーム系)にとっては、実力が問われる年になりそうです。
家電系は巣ごもり需要でテレビや洗濯機などの売り上げが伸びたそうですが、買い替えスパンが長いものは、利益を前倒しで受け取ったという解釈をしているので、自らの首を絞めている可能性もありそう。中古マーケットもありますし、手放しで喜べるものではないかなと。
TripActionsの企業アカウントである、TwitterやInstagramに、数万単位でフォロワー(7.3万人と3.1万人)がいるのに驚きました。
国内でもシャープ(82.7万人)や、レゴジャパン(7.4万人)などの成功事例はありますが、法人専用サービスと考えると割と驚異的な数字ではないかなと。全てがファンだとは限りませんが(SNSに関しては、粗探しをするためにフォローしているパターンもあるとかないとか)、見込み客作りとしても運用が上手い企業だと感じました。
最後に関連として、気になったニュースを貼っておきます。
この辺りは詳細を調べていないのであれですが、延命治療に近いものがあるなと感じました。ただ、これによって受け入れ側は人出不足が解消されるなどメリットもあるのでそこは良いなと。
< Kleiner Perkins:2社 >
Backtracks $1.6M / Seed / 音声配信
参照元/HP:https://backtracks.fm/
ポッドキャスト用の広告&分析プラットフォームを提供するBacktracksがシードで$1.6Mを調達。
北沢:いや、これ、面倒だからまとめを書いてないわけではないんですw
本当にリリースだけだと何を言っているのか分からなくて。サイトを見てもしばらくどんなサービスか分からず。ポッドキャスト関連というのはわかったのですが、広告や分析もできるとあって、しばらく「???」状態でしたw
Backtracksのブログを読んでみると、ポッドキャスト専用のB2Bマネタイズおよび分析プラットフォームとあり、同社のOPA(Open Podcast Analytics)を利用することで、誰が、何を、いつ、どこで、どのように聴いているのかなどの詳細なデータへのアクセスが可能で、データ分析と広告でのマネタイズができるサービスだと分かりました。
広告の形として、ポッドキャストなどを再アップロードする必要はなく、ファイルをアップロードするだけで、過去の配信にも広告を入れることができるため、積み上げてきた音声資産の活用としてとてもいいなと感じました。
テレビやラジオにスポンサーが付くように、ポッドキャストにもスポンサーが付けれる・付けることが一般的になるのかなと。国内だとVoicy、Stand.fm、ラジオトークなど音声配信サービスがありますが、キングコングの西野さんが読み上げる形で広告を入れているそう。
また、企業からの支援総額が1億円を超えたともVoicyのリリース(リンク)にはありました。
「次のトレンドは音声配信‼︎」と(主にTwitter)では言われていますが、個人的にはあくまで「情報摂取の補完」として一般的になるのがゴールかなと思っています。
YouTubeやVRと並べるものではなく、そういった視覚の娯楽が楽しめない時の「ながら聴き」のポジションが、音楽から音声になるという感じ。
プレイヤーとしてはInstagramやYouTubeに続くトレンドかもしれませんが、ユーザーとしてはSpotifyで米津玄師を聞くか、Voicyで西野さんの話を聞くかの違いであり、「時代」というサイズではないように感じています。
もちろん、新しい市場として「声で稼ぐ」人はこれからもっと出てくるでしょうし、始めるハードルが低いのでやってみることは否定しませんが、他のプラットフォームで力のある人が横展開するのにベストなものが音声配信なのかなと。
ゼロイチで始めるのであれば、何か1つのネタに特化(高校生あるある的な)すれば音声のみでも可能性はあるかも?
Vera Therapeutics $80M / Series C / バイオ
参照元/HP:https://veratx.com/
バイオテクノロジー企業のVera TherapeuticsがシリーズCで$80Mを調達。
Sofinnova Investments、Longitude Capital、Fidelity Management & Research Company LLC、Surveyor Capital、Octagon Capital、Kleiner Perkins,、GV、Alexandria Venture Investmentsが参加した。
Gilead社(世界第二位のバイオ製薬企業)で臨床研究のシニアディレクターを務めていたMarshall Fordyce医学博士が2016年に設立。
Vera Therapeuticsは、遺伝子編集技術で患者の生活を改善する免疫疾患・炎症性疾患の治療法の開発に焦点を当てたバイオテクノロジー企業。
対象となる疾患は、鎌状赤血球貧血や嚢胞性線維症、その他の重篤になり得る遺伝性疾患など。
北沢:変わった時期は不明ですが、元々「Trucode Gene Repair」という社名だったそう。
「遺伝子編集技術」とは、ゲノム編集とも言われるそうなのですが、本当に分からない分野でなので、大枠が掴めるような、参考になりそうなものを貼っておきますw
引用元/URL:ゲノム編集の歴史と基礎
引用元/PDF:あなたの疑問に答えます(ゲノム編集の特徴は? 遺伝子組換えとどう違うの?):農林水産技術会議
ゲノム編集技術を用いた視力回復についてのリリースもありました。
< Sequoia Capital:3社 >
CoinSwitch Kuber $15M / Series A / 仮想通貨取引所
参照元/HP:https://coinswitch.co/
インドの100以上の仮想通貨を扱うプラットフォームのCoinSwitch Kuberが、シリーズAで$15Mを調達。
Ribbit Capital、Paradigmがリード、Sequoia Capital India、Kunal Shah氏(CRED創業者)が参加した。
2017年に設立されたCoinSwitch Kuberは、インドのバンガロールを拠点とし、ユーザーにとって安全でユーザーフレンドリーな取引所で、様々な支払いオプションを提供。
創業から6ヶ月以内に、プラットフォームは100万人以上のユーザーを獲得。同社は次の1年でプラットフォーム上に1000万人のユーザーを持つことを目指しているそう。
同社は、決済サービスプロバイダーにAPIを提供しており、それらのプロバイダーが提供する支払い手段を増やすことを可能にしている。
北沢:リードで参加しているParadigmは、Coinbaseの共同創業者Fred Ehrsam氏によって設立された仮想通貨専門ファンド。もう一人の創業者はMatt Huang氏で、以前はセコイアでパートナーを務めていたとのこと。
インドの取引所といえば、CoinDCXが最も大きく、最近ではシリーズBで$13.9Mの調達と、新規の5000万ユーザー獲得を狙う仮想通貨取引アプリの提供を始めました。
CoinDCX社によると、人口13億人を超えるインドで、暗号資産の投資経験を持つ人の割合は0.5%程度とあり、未成熟な市場、どちらも同時期(2017年)に設立というスタートであり、CoinSwitch Kuberが奪えるシェアもまだまだあるなと。
ユーザー数の表示がパッと見つからなかったのですが、3年で(あくまで経験者数が)0.5%という数字が多いのか少ないのか。伸び代しかないとも言えますが、時間をかけてもあまり伸びない可能性もあるのかなと。
ただ、13億人いれば、1%で1,300万人、10%で1,3億人になるので、1%のユーザーの手数料でもそこそこの利益にはなるのでは?
この辺りもう少し具体的に調べて見たいと思いました。
Darwinbox $15M / Series C / HR
参照元/HP:https://darwinbox.com/
インドで人事管理ソフトウェアを提供するDarwinboxがシリーズCで$15Mを調達。
Salesforce Venturesがリード、Lightspeed India Partners、Sequoia Capital India、Endiya Partners、3one4 Capitalが参加しました。
2015年に設立されたDarwinboxは、AIと機械学習を活用したクラウドベースの人事管理ソフトウェアを提供し、従業員の雇用から退職までをサポート。
Darwinboxの共同創業者であるChaitanya Peddi氏は、「60カ国500社で100万人以上の従業員にサービスを提供しており、2019年後半には、50カ国約200社から大きく増加している」と、TechCrunchのインタビューで述べている。
また、収益は前回の資金調達、2019年9月から300%も膨らんでいるとも述べた。
北沢:今回セールスフォース(CVC)がリードで参加しているのですが、インド企業には初出資とのこと。
これまで(2021/01/21時点で)、486社に投資、EXITが96社と、打率2割と悪くない数字です(DocuSign、MongoDB、Box、Snowflake、Dropboxなど)。
シリーズCの段階で、プーマやウィーワーク、ニベアなど、500社に導入されているというのは非常に大きな数字であり、料金体系の記載はなかったのですが、SaaSというビジネスモデルを考えると利益は充分出ているのでは。
参考になるかと思い、国内HR企業のSmartHRの数字を持ってこようかと思ったのですが分からず(よく考えたら参考にならないですね)。
まだIPO路線かと思いますが、インドだけでも「Sapience Analytics」「Aasaanjobs」「Belong.co」などの競合がいるのでM&Aの可能性もありそう。
セコイアを調べていると、中国とインドも多いので、国・分野毎のパワーバランスを把握したい。
Lalamove $1.5B / Series F / 物流
参照元/HP:https://www.lalamove.com/global
オンデマンド物流企業のLalamoveがシリーズFで$1.5Bを調達。
Hillhouse Capital、Sequoia Capital Chinaがリード、Vitruvian Partners、D1 Capital Partners、Boyu Capital、Tiger Fundが参加しました。
2013年に配送サービスとして設立されたLalamoveは、貨物サービスや引っ越し事業、車両レンタルなどの事業展開するまでに成長しました。現在では、中国本土の352都市に加え、香港、台湾、ベトナム、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイまで事業規模を拡大。
北沢:先月にシリーズEで$515Mを調達したばかりのLalamove。その時にも取り上げたのですが、リリースの中にあった「独身の日」について調べるのが楽しかった覚えがありますw
競合に当たる「物流版Uber」と呼ばれるManbang Groupは、トラックの運転手と物流業者をマッチングするアプリ+金融サービスを提供していますが、若干毛色が違うのでバチバチにはならないのかなと。
Lalamoveのこれまでのラウンドをまとめると、
2014年:シード / $1.5M
2015年1月:Series A / $10M
2016年:Series A / $10M
2017年1月:Series B / $30M
2017年10月:Series C / $100M
2019年:Series D / $300M
2020年:Series E / $515M
2020年11月:Series F / $1.5B
参照元/URL:Crunchbase
Uberのコンセプトの応用から始まったスタートアップとして、昨年10月に米国に初進出し、現在は月間アクティブドライバー数が約48万人、月間アクティブユーザー数は約720万人越えと躍進を続けており、遮るものがない無双状態ですね。
シリーズE以上になると、予想も何もない気がしていますが、Lalamoveが上場したら、ティッカーシンボルは「LAMV」になるのかなと予想しておきますw
以上です。
※2021/01/25追記:冒頭で述べたClubhouseは、a16z主導のシリーズBの準備中とのこと。この資金調達では、クリエイターをサポートする機能に充てられるそう。
来週は、2月1日(月曜日)に更新予定です。
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