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神のDB(018)

(018)狂気の時の再来ですぞぉ~|ω・)どうぞ~

前のお話:https://note.com/daikiha/n/nc09c03016a03

後のお話:https://note.com/daikiha/n/n6ab9e36e98b1

【24】

●2011年11月24日の木曜日。ボクは夜のカフェ「クエリ」で放心していた。

ボクは昨日のマスターの話を心で何回も反芻していた。
正直にいえば、ショックだった。
詳細までは聞いていないけど、まあ、聞ける雰囲気ではなかったんだけども・・・。でも、どのレジスタンスも「勝利」、という綺麗な言葉で語れる結末ではない、と思った。

束の間の勝利、全てを壊しての勝利、全てを失くしての勝利。

ボクには、レジスタンスの記憶は無い。無い筈なのに、なんでこんなに胸が締め付けられるんだろう。
怒りとも、焦りとも言えるこの感覚。
ボクはそんな思いに駆られていたからだろうか、呟くように口に出していた。

『ボクはなにかしなくていいのかなぁ。。』

そんなボクの呟きに、グラスを磨いていたマスターが笑顔で返してくれる。
『はい、大丈夫です、大樹様。特別していただくことはございません、「今」は』

その言葉にボクは少しの安堵を感じられた。だからだろうか、
『そうですかぁ。まあ、特別何かできるわけでもないですし、ボク自身が変ったわけでもないですからねぇ。』
ボクはその時なにも考えなく言った。
考えようとしたけど、
考えることができなかった。

想像も出来なかったから。

でも、違う。
これから起きることに。
これから起こるであろうことに。
考えようとしなかったんだ、
目を向けようとしなかったんだ、
ボクは。。。まだ逃げていただけなんだ。

【25】

『おかえり、ダイキ』

2011年11月25日、金曜日の夜。

平凡なサラリーマンにとっては1週間の仕事の締めにあたる金曜。
仕事終わりのこの時間、だれもこれも疲れきった表情の中に、安堵の気持ちが現れる。
ボクもその一人に他ならず、こんな日は一人で家に帰って家呑みをするのがこれまでの生活、だったけど、今日はますみが駅の近くまで迎えに来てくれていた。
『ただいま、ますみ』
ほんの少しはにかむ笑顔のますみにボクは「ただいま」をした。
これまでの生活でない時間の始まり。

ますみが迎えに来てくれる、帰り道。他愛のない話をする。
これまでの人生では信じられないような時間をボクは今、過ごしていた。

そしてそんな時間の幸せを、ボクは感じていた。
感じていた。
感じていたのに。

『そういえば先週の金曜もこんな少し曇り空の夜だったなぁ』
と、
でも、
ふいに、
ふと、
感じてしまったんだ、ボクは。


あの時の「狂気」の時間を。


『え?』

呟いた瞬間、気付くと目の前に黒尽くめの覆面の男が立っていた。


ますみがソードを手に滑るようにボクの目の前に入り、構えた。
『誰?』
ますみは端的に言葉を発する。
その声には余裕が見られないように思った。ますみにも気付かれなかったんだろうか。黒の覆面男がボク達の目の前に現れたことを。
『・・・・』
覆面男は何も言わない。ただ、腰に日本刀らしき武器を携え、立っていた。
いつからだろうか、周りには誰もいない。
ビルとマンションの間の道を照らしていたのは街頭の光と月の光、そして静寂が支配していた。
そして、

『やるのね。』
覆面男は腰から日本刀を抜き、ゆっくりとした動作でますみに対して、構えた。
その構えは多分「正眼の構え」。剣先を相手に向けて構える中段の構え。そして、
『隙、ないわ。』
と、ますみが呟いた。
素人のボクでもわかる。覆面男はまったく隙がない。というか、向かっていける、倒せる、という気持ちになれない雰囲気を感じた。
その構え、剣道、つまり日本の剣術を使うのであろう覆面男は構えたまま、動かない。
『ダイキ』『え、なに?』『ちょっといってくる』
と、ますみが呟いた瞬間、ますみは相手に向かっていた。地面を蹴るような、飛んでいるような、そしてボクの目では追いきれない「超速」で覆面男に向かって、そして
ガキィィィイイイ!!
ますみの巨大なソードと覆面男の日本刀が重なり合う。その瞬間、ますみは後ろに弾かれる!
『くっ!この!』
ますみのソードでは折れてしまうのではないかと思った覆面男の日本刀は、受け止めるだけでなく、ますみを弾き返す。ますみは再び覆面男に向かい、上段からソードを振り下ろす!が、相手は下から掬い上げる様に刀を振り、
キィィィインンンン!!
ますみのソードを弾き返す。
『くそ!それなら!』
ますみは動くスピードをさらに早くし、残像を発生させ、且つ、無数の斬撃をそれぞれの残像から喰らわせる!
『うりゃりゃりゃ、りゃぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!』
決まった!、とボクが思った瞬間、覆面男は立っていた場所から消える!
『え?』とボクがまぬけな声を発した瞬間、覆面男は空中のますみの残像に
『かぁは!』蹴りを喰らわせた!
ますみがこちらに飛んでくる!そして
ずさぁざざぁぁぁああああああああああ!
ますみはなんとか空中で体制を建て直し、方膝をついた状態で地面に着地した。

『ますみ!』とボクが駆け寄ろうとすると、
『ダイキはそこから動かないで!』
と、ますみは左手をボクのほうに向け、静止を促す。『ダイキはそこにいて。ちょっと、やばいから。』
言うとますみは身を低くした体制から再び、蹴るような超速で覆面の男へ向かっていく。

対する覆面の男は、日本刀を腰の鞘に納め、姿勢を低くし、そして、刀の柄(つか)に手を当てる体制に。それは良く見る「居合い」の型。

『いやややぁぁぁぁ!』

ますみはソードを振りかぶりながら跳躍した。そして、覆面の男に対し、渾身の力と、目に見えないスピードで巨大なソードを振り下ろし・・・・(シュッ!)

目の前に、ボクの目の前に、ますみのソードが。。。

ザン!

『え?』
降ってきた。

まだソードの柄を握ったままの、ますみの右腕と共に。

あの綺麗な、美しい肢体の、傷一つ無かったますみの腕が、綺麗に切り落とされた。

前のお話:https://note.com/daikiha/n/nc09c03016a03

後のお話:https://note.com/daikiha/n/n6ab9e36e98b1

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