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日系海外子会社で取組むDXのお話

はじめに

この記事はデータラーニングギルドアドベントカレンダー5日目の記事です。
海外で取組む日系企業のDXについて、まさに今苦労していることを書いていきます。同じように奮闘するどなたかの参考になれば非常に嬉しいです。

また、概ね昨年からのアップデートという意味で、昨年アドベントカレンダーの記事も是非。


本文を3行で

  • バズワードこわい

  • 重要なのはコミュニケーションとメンタル

  • 諦めずに施策を推進し続けることが最も難しい


お前だれ

概要はこちらをご覧ください。

DX(Digital transformation)への関わり方

タイ王国の日系企業子会社にて、新規事業企画に取り組んでいます。IT技術を活用した新しいビジネス創出に取組む中で、自社の改革に取り組まなければならない結論にたどり着き、社内での推進をはじめました。


“DX”というバズワード

2021年はDX(Digital transformation)というバズワードが大きく普及した年なのではないかと思います。各人が様々な立場・様々な目的でこの単語を使用してきました。そしてこれまでのバズワードの例に漏れず、非常に曖昧かつ広い範囲を表す言葉として、普及してしまいました。

本記事では、「変化に迅速に適応し続けること」を目指して「ITシステムのみならず企業文化を変革することがDXの本質」であるという定義を参照しています。
(経済産業省 デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』より)


自社DX推進で苦労している3つのこと

前置きとして、私が今取り組んでいるDX推進もようやく本格的な活動を開始できたばかりで、まだ何も実を結んでいない状況です。そんななかでも、「はじめの一歩」に関して苦労してきたことを共有させてください。

1.「DX」という単語を使わない

一番はじめに躓いたポイントです。DXを推進したいのに、その言葉を使用していたままでは前に進めませんでした。これは、上記のバズワードという特性が大きく関わっていました。

バズワードの恐ろしいところは、単語自体は広く普及しているのにも関わらず、その意味の幅広さ・多面性によって人それぞれ理解が異なることだと思います。
こちらは組織文化変革の文脈で「DX」を捉えていると伝えても、どうしても「システム化すること」のイメージに引っ張られてしまうようで、本当に議論したい内容から脱線してしまいます。組織文化変革の必要性を説いたら、コメントとして「DXって言うから、何をしたいのかと思ったら、全然DXじゃないじゃん」と言われたこともありました。

上記の経験から、進めたい改革そのものは「変化に迅速に適応し続ける組織の実現」だとしても、それにDXという単語を当てはめることをやめました。そうすることで、小さな一歩を進めるようになれるようになったと実感しています。

テレワークが進み、非言語コミュニケーションの効果が薄れる中で、各単語に対して認識を共通することの重要性が高まっているのではないでしょうか。おそらく今後も現れるであろうバズワードに対しても、同様のアプローチが取れるのかもしれません。

2.課題を構造的かつ本質的に特定する

データサイエンスのスキルにおいて、ビジネス力・サイエンス力・エンジニア力が必要と言われいますが、そのビジネス力における課題発見力と言われる力に相当するスキルだと考えています。

いくらシステム導入するためのスキルがあったとしても、基本的にITシステムは課題解決のためのツールに過ぎません。そのため、解決すべき課題を特定することが重要であることに異論はないと思います。
では、「変化に迅速に適応し続ける組織」を実現するための課題はどのようなことがあるのでしょうか。当然、各組織においてばらばらな課題を抱えているでしょう。
さらに目標が抽象的である分、どこにそのRoot cause(根本的な課題)があるのかわかりにくくなっています。この大きな問題に対して、構造的に課題を整理して、次節の具体施策へ繋げます。

「構造的に課題を整理する」ことで本質的な課題にたどり着くことができると考えています。しかし、構造的に整理するとはどのようなプロセスなのでしょうか?個人的な回答は、「表面化している解決したい課題の裏側に関連する課題を洗い出し、それぞれの関連性を整理すること」です。
表面化している課題は分かりやすい課題であることが多いですが、多様なそれらの課題を一個一個解決していくことは、すぐにもぐら叩き状態に陥ってしまいます。もぐら叩きにならないようにするためには、根本的な課題に立ち向かう必要があり、その根本的な課題を特定するためには課題の構造化が必要です。
課題の構造化を行うためには、様々な方法がありますが、例えばこのような方法で整理していく事が多いです。

  • なぜなぜ分析

  • ロジックツリー

  • 箇条書き/文章化によるロジック整理

  • 視覚化する

とはいえ、これらはそれぞれ手法の1つに過ぎませんし、人それぞれ感じ方が違ったり、課題の状況によっても異なります。より細かい内容は『イシューからはじめよ』が参考になるかと思います。

3.具体的な施策を掲げ、諦めずに継続する

これは組織改革に取り組んでみて気づいたことですが、深く考えて出したつもりの施策も「ただ当たり前のこと」を言っているだけの場合が多いです。

例えば、「変化に対応できる柔軟な組織になる」ことにそもそも反対する人はほとんどいません。では、一段掘り下げて「上記の組織になるために、社員教育が重要である」ことにも反対はありません。さらに掘り下げて「各スタッフのITリテラシー向上が必須である」ということにも大きな反対はありません。
しかし、反対が出ない代わりに賛同も得られません。返ってくる反応は「全部当たり前のことで賛成だけど、結局何がしたいの?」と聞かれます。(正直、これを言われるとめっちゃ凹みます)

このように聞かれてしまう理由は様々ありますが、この壁を打開するためにはより具体的な施策に落とす他なさそうです。当然、具体的な施策に落とすにはスケジュールやコストを算出していくことが必要になってきます。それが難しいんだよ…!と思わず言いたくなりますが、こうして1個1個行動していくしか方法がないのではないかと思っているのが私の現在地です。

特に、組織改革は一朝一夕では達成できず、時間をかけて継続することが必須です。また、私も含めて多くの会社員にとっては「なにがなんでも絶対達成しないといけない目標でもない」というケースも多いのではないでしょうか。そのため、DX推進活動を諦めてしまうことも簡単です。逆にいうと、DX推進をしていくためには「当たり前のことを諦めずに継続すること」が最も重要かもしれません。

また、施策を計画することができても、決して計画した通りには進めることができません。目標を決して見失わず、それを達成することだけを明確に意識して計画をアップデートしていくことが必須です。特に、抽象的な内容が多い分、容易に手段の目的化は発生してしまいますが、それでは本末転倒です。最初に立てた大きな目標の実現を第一に考えて行動し続けることが求められています。

私自身もまだまだ道半ばですが、ここで書いたことを意識して、まだまだ長い道のりを歩んでいきたいです。

さいごに

以上、転職してから3年目に入って、社内の事情が徐々にわかり始めたところで自社DX活動を始める事ができました。1歩踏み出すたびに、新たな壁にぶつかり、まさに3歩進んで2歩下がることを続けています。(実際は前進できているのか不明です。ただただ、前進していると信じたい)

経営者やDX推進の責任者へのお願い

具体的に苦労している点は本投稿に書くことができたつもりですが、このような活動をしているスタッフを抱える経営者や上司の方々へお願いがあります。

特に3.で記載したように、自社DX実現に向けて諦めずに行動し続けることが必要ですが、そのためには膨大なエネルギーがかかるという点を一人の担当者としてお伝えしていきたいです。
これをご覧になっている方の社内でも同様の活動をされている方々がいらっしゃれば、是非、なるべく手厚くサポートして頂きたいです。特に、このような活動は短期的な利益には関係ない活動になってしまいますので、事業部等からの理解も厳しく、意味のない活動であると批判することも非常に簡単です。もちろん、給与という形で評価することも1つですが、諦めない心を保つための心理的安全性を満たすチームづくりや、社内理解を進める活動を並行して行うことも大きなサポートになると感じます。

海外子会社でのDX推進

最後に、本投稿を書く前に「外国でDX推進をする上での特徴を知りたい」という要望をもらっていたのですが、いざ書いてみると海外であることは特に関係ないのかなと思っています。(私が日系企業に属している点も大きいかもしれませんが)外国にいても、企業を構成するのは同じ人間です。一方で、世界のどこにいても、同じ悩みをシェアできる良い時代になりました。本投稿が見知らぬ誰かの助けになれば、すごく嬉しいです。

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