読書感想文5『サイロ・エフェクト』
今回は、ジリアン・テット『サイロ・エフェクト』について。
著者のジリアン・テットは、あの泣く子も黙るピンク色の新聞、フィナンシャル・タイムズのアメリカ版編集長だ。今も日経新聞で幾度もコラムが掲載されているし、2008年・2009年あたりのリーマン・ショックの頃にはそれこそ毎日のように何かしらの記事を目にしていた記憶がある。
んだもんで、彼女はウォール・ストリートをフィールドに生きる金融バリキャリウーマンだと思っていた。
そんな彼女が、サイロ?サイロってあの?
僕は北海道のやや右下、広大な牧草地広がる十勝平野の帯広というまちの出身だ。北海道・十勝といえば、農業大国であると同時に酪農大国。酪農といえば牧草。牧草といえばサイロ。そう、サイロは僕の原風景でもある。
ウォール・ストリートの金融バリキャリウーマンが、サイロの何を書こうというのか。実は同姓同名の別人だったりして。
というのが、この本を目にしたときの僕の第一印象であった。ってゆうか、サイロって英語だったんだ。考えたこともなかったわ。
もちろん、そんなわけはなくて、サイロは比喩である。
何の比喩か?「高度専門化」の比喩である。『サイロ・エフェクト ー高度専門化社会の罠ー』これが、この本のフルタイトルである。
正直、あまりセンスがいいとは言えない気もする。ピンとこない。が、サイロを比喩に使うというのがきっと文化なのだろう。あの丸山眞男は、名著『日本の思想』の中で、形而上学が発達せず、ある意味で末端の専門科目ばかりが発展していく我が国の学問の状況をタコツボと表現した。センスとしては似たようなもんだ(失礼)が、タコツボの方がぶっちゃけしっくりくる笑『日本の思想』はこれはこれで必読書なので、ぜひ。
サイロは他と共有することなく孤独に、しかしそれ自身の役割を完璧にこなして立っている。現代のビジネスも、サイロのように他部署と互いに独立した各部署が、それぞれの役割と経済効率を最適化するようにして立っているのが現状だ。
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