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子供の死に対峙する心境が簡潔な書法と凝縮された表現力で綴られたマーラー『亡き子を偲ぶ歌』

マーラーの『亡き子を偲ぶ歌』について

オーストリアの作曲家グスタフ・マーラーは、1900年代初頭に悲劇的な出来事に直面しました。彼は二人の娘を相次いで亡くし、その悲しみを音楽に託しました。その結果が、彼の代表作のひとつである『亡き子を偲ぶ歌』です。この記事では、この作品の背景や内容、音楽的な特徴について紹介します。

マーラーの悲劇的な人生

マーラーは1901年にアルマ・シンドラーと結婚し、翌年に長女マリアを授かりました。しかし、1904年には彼の四歳の次女アンナが亡くなりました。その翌年から彼は『亡き子を偲ぶ歌』の作曲に取り組み、1906年に完成させました。さらに悲劇的なことに、マリアも1907年に猩紅熱で亡くなりました。これらの出来事が、マーラーの音楽に深い影響を与えました。

『亡き子を偲ぶ歌』の概要

『亡き子を偲ぶ歌』は、六つの歌からなる大規模な歌曲集です。各歌は、ドイツの詩人フリードリヒ・リュッケルトが自分の二人の子供を失ったときに書いた詩をもとにしています。マーラーはリュッケルトの詩をそのまま用いるだけでなく、自分の感情や思いを加えています。例えば、第一曲「今こそわかる」では、「あなたが死んだとき、私はどれほどあなたを愛していたか今こそわかる」というリュッケルトの詩に、「あなたが生きていたとき、私はどれほどあなたを愛していたか今こそわかる」というマーラー自身の言葉を重ねています。

『亡き子を偲ぶ歌』の音楽的な特徴

『亡き子を偲ぶ歌』の音楽は、簡潔な書法と凝縮された表現力で、子供の死に対峙する心境を描き出しています。マーラーは大編成のオーケストラを用いながらも、細やかなニュアンスや微妙な感情の変化を捉えています。また、音楽的なモチーフや主題の反復や変奏によって、悲しみや懐かしさや希望といったテーマを展開しています。

特に印象的なのは、最後の曲「私は天国であなたと会う」で、静かに始まり次第に盛り上がっていく音楽が、突然沈黙する場面です。これは、マーラーが娘マリアの棺を見送ったときに感じた衝撃を表現したものと言われています。

『亡き子を偲ぶ歌』の魅力

『亡き子を偲ぶ歌』は、マーラー自身の心の傷跡を音楽にした作品ですが、同時に多くの人々の共感や感動を呼び起こす普遍的な作品でもあります。この作品を聴くことで、私たちは生と死という究極的なテーマに向き合うことができます。マーラーの音楽は、私たちの心に深く響きます。


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