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日本酒の”からくち”を考える。①

●日本酒の"からくち"とは?

「日本酒は辛口のものが美味しい。」
 お酒を嗜まれる方には、このように仰る方が多いように感じます。
実際に私自身もこれまで飲食店で、販売店で、お酒のイベント会場で、様々な現場でお客様から「辛口のお酒ください」と頼まれる機会が多くありました。
 ところがそれぞれのお客様の好みを掘り下げていくと、皆さん一様に辛口と言ってはいるものの、それぞれが思い描いている味わいはは千差万別で、とても同じ系統の味わいとは言えないものがあることが分かってきました。


●辛口とはいっても唐辛子のように辛いわけではない!?

 そもそも辛いというのはどういう味わいのことを指すのでしょうか。
味に関するベースの知識として、味覚は5つの基本味、苦味、酸味、甘味、塩味、旨味によって認識されるとされています。辛味はこの基本味の中には入っておらず、痛覚をベースとして認識される刺激であるとされています。
 一方で、"辛い"という言葉は”甘い”の対義語として塩"辛い"と表現するように、過度に刺激が強い状態を示す言葉として使われてきた側面が歴史的にあります。日本酒で"辛口"という表現をする場合も、唐辛子やわさびのような辛味に対しての言葉ではなく、甘いに対する対義語として使われてきたのではないかと思われます。
 ですので、日本酒で言う"辛口"とは、「甘みを感じさせないもの」と考えることができます。

五味

●”甘くない味”は人によって色々

 辛口が「甘みを感じさせない味」だと分かったところで、具体的にどんな味わいを表すのか考えていきたいといます。
 しかしここで、”甘い味わい”というものは具体的に想像できますが、”甘くない味わい”、というと、そこには”苦い”であったり、”渋い”であったり、”酸っぱい”であったり、色々な味を内包していて、具体的に一つの味わいを想像することが難しいことに気づきます。
これが”辛口”という言葉が、人によってイメージが違ってくる要因であると思われます。
そのお酒が辛口であるかそうでないかということを断定することはできても、辛口とはこういうお酒であると1つに断定することは難しいのです。

辛口イメージ

<その②に続く>

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