子どもの不適切な行動にどう関わると良いか①

 この記事ではドライカース(アドラー心理学)の「不適切な行動の4つの目標」に関して解説します。これが理解できると、子どもに限らず、相手の不適切な行動にどう関わったらいいかのヒントが得られると思います。

 では事例からスタートしましょう

可愛い子なんですけど、どうしたらいいのか

 中学校の先生からのご相談でした。女子生徒の指導について悩んでいるとのこと

CL うちの学校にとても可愛い女の子がいて、まぁ校外で色々問題を起こすんです。。。。可愛いので。。。
CO はぁ
CL ご家庭の事情もあって、親御さんが夜に家にいなかったりするので、それもあって色々大変で
CO はい
CL 本人も、誘われたりしつこくされたりで困っていることもあるようで、相談してきたりするのですが
CO はい
CL 親身になって相談に乗っているのですけど、時間がかかるというか
CO 時間がかかる?(具体化)
CL 放課後などに相談に来るのですが、私も忙しいので「15分ね」とかいうんです。でも途中で泣かれたりして、30分、1時間と時間が経ってしまって。。それでも最後は「先生ありがとう」といって帰っていくのですが
CO 帰っていくけど?
CL それで少し良くなるかなと思うと、翌日は他のヤンチャな子たちと、授業中さわいだりしていて、注意しても言うことを聞かないし
CO なるほど
CL で、放課後になると「先生いい?」とか言って悪びれずに相談に来るので。。。。でも無碍にはできないし。。。
CO なるほど。この件はちょっと試して欲しいことがあるので、いきなりアドバイスしても良いですか?
CL え?。。。あ、はい。お願いします

ケース

 僕は基本コーチなので、このタイミングでアドバイス(行動処方)するのは珍しいんですけど、こういうのってスパッと行動切り替えるのが大切なので、この時はいきなり行動を指示するというパターンにしました

CO やってもらいたいことは3つあります。まず、放課後の相談ですが、必ず約束の時間で終わりにしてください。
CL 。。。。
CO すがられたり、場合によっては暴言吐かれるかも知れませんけど、努めて冷静に。。。ここ重要です。努めて冷静に「最初にも伝えたけど、先生時間がないので、また明日以降に声かけてね。時間があればちゃんと聞くからね」とでも言って席を立ってください。
CL 。。。。はい
CO 「時間なくてごめんね」と謝る必要もないし「時間ないって言ってるでしょ!」と怒る必要もありませんよ。努めて冷静にね。もちろん相談に乗っているときは、親身に聞いてあげてくださいね
CL はい
CO 次です。授業中騒いだら、これは彼女だけに限りませんが、これも努めて冷静に(笑)「他の人たちは勉強しているので、大声を出さないでくださいでくれますか」と伝えてください
CL でも
CO なんですか
CL それでは言うことをきかない
CO はい。それでも、努めて冷静にね(笑)。必要ならあとで説明しますけど、先生が怒鳴っているから続いている側面もあるんです。
CL え?
CO はい。なので「他の人たちは勉強しているので、大声を出さないでもらえますか」と言って静かにしてもらえた場合は「協力ありがとう」と伝えてください。もし、大声を出し続けるようなら、これまた冷静に声を荒げることなく「もし大きな声を出し続けるなら、教室にはいてもらえません」と伝えてください。
CL 。。。。。
CO 廊下で立っててもらうか、職員室なのか、校長室なのか分かりませんが、あまりにも騒がしかったら、教室にはいてもらうことができませんから
CL はい
CO とにかく冷静にね。まずは相手に静かにいてもらえるようにお願いして、そうしないなら教室にいてもらえなくなると伝えてくださいね。相手を非難したり罰する必要はないんです。そもそも人は、大声を出してもいいんですよ
CL 。。。。。
CO 他の人の迷惑にならないなら。。。だから山の中か海岸にでも言って叫んでいればいいのです。何も問題ないでしょう
CL 。。。はい
CO だいたい彼らだって叫びたいわけではないのです。構って欲しいんでしょ。自己顕示がしたいのでしょう?
CL そうだと思います。
CO そして、先生は構ってあげちゃうから(笑)
CL そうか。。。
CO はい。だから続くのです。なので、その手には乗らないよ。とね(笑)
CL はい(笑)

不適切な行動に着目しない

 不適切な行動に着目しない。というのは大切な指針です。僕も幼児二人を育てているので、毎日子どもから様々な挑戦を受けます(笑)。なんとか親の関心を惹こうと、泣いたり怒ったり甘えたり。。。まだ可愛いものですが

 さて、子どもの立場に立ってみましょう。お父ちゃんと遊びたいけど、なんか仕事というものをしているらしい。声をかけても「仕事中だから待っててね」とか言われる。そんなに待てない。また声をかけても生返事が返ってくる。。。しばらくは大人しく遊んでいるけど、つまらない。我慢ができないので大声を出した。そうしたら「うるさい!」とこっちを見た。お父ちゃんを動かすリモコンのスイッチを発見した!!!

 まぁこんな風に思考はしていないにせよ、泣いたら関心を向けてもらえたら泣く、喚いたらこっちに来てくれるなら喚く。単純なことですね。

 夜泣きもそうです。子どもが泣くと、親が寝室に行ってあげると、子どもは親を呼ぶために泣くわけです。親もそれがわかるから、グッと我慢して、行かない。10分20分と子どもは泣き喚く。そして、さらに声が大きくなる。。。これは流石にだめだ!と思って、親は様子を見にいく。さぁ子どもは何を学習しますか?そうです

「このレベルで泣くと来るのか!!!!」

 次からは、ますます大声で泣くようになります。

 人間関係はシステムなのです。子どもは一人でやっているのではなく、相手(この場合は親)がいるから続けるのです。相手がいなければバカバカしくて続けることはないのです。

 このケースの女子生徒は中学生ですが、大人になったって私たちは相手の反応を得るために行動を取ることがあるのです。この女子生徒は優しい先生に構って欲しくてこのような行動をしているのです。

 だから、反応するのをやめる。約束の枠内で淡々と動くのです。約束の時間の中で相談にのる。教室での約束を守れないのなら教室から出てもらう。そして出てもらうときにも相手を罰する必要はないのです。

 子どもは授業を受ける権利はありますが、義務はありません。だから大人しく座っていないといけない、もおかしいし。うるさいからといって罰せられるのもおかしいのです。授業を受けるためには、クラスメイトの邪魔にならないようにする必要がありますが、外で騒ぎたいなら迷惑にならない場所で騒げば良いのです。(と、僕は考えます)

 少なくとも、大人しくしているときは放っておいて、うるさい時だけ構うので、構ってほしければうるさくするのです。それをやめたほうがいい。トムとジェリーと同じです。仲良く喧嘩しているのです。

 ということで①相談は時間内で切り上げること②教室で騒ぐ時は冷静に対応すること、を指針として伝えました。そして次も大切です

CO では3つめです。その子が何か前向きな行動をしているときや、もしくは普通にしているときに、声をかけてあげて欲しいのです
CL ?
CO 部活でも教科でもいいので、その子が何か一生懸命やっているのを見つけて「いいね!」でも「どんな感じ?」でもいいので声をかけてあげてください。先生はちゃんと見てるよ!っていうのを伝えて欲しいのです
CL なるほど
CO 前向きにやっていることが見つかりにくければ、普通に友達と話しているとか、廊下歩いてるとかのときに「おはよう!」とか「いい天気だね」とかなんでもいいので声をかけてあげて欲しいのです
CL 普通のとき。。。
CO そうです。泣いたり喚いたりしてないときに声をかけてあげてください(笑)
CL あはは。確かに泣いたり喚いたりしてないと、あまり声をかけてなかったかも
CO はい。なので、そんなことしなくても大丈夫だよってのを体験してもらって欲しいのです。そうですね。まずは2週間から3週間。。。。
CL はい
CO しばらくは泣いたり喚いたりするかも知れませんけど、動じることなく。一喜一憂せずに淡々とね
CL はい
CO そうするとだんだんと、普通のときや、何か頑張っているときも見えてくると思いますから
CL はい
CO そうしたらそこに着目してあげてください
CL はい
CO 愛情をもって見守る。声がけする。不適切なことには冷静に穏やかに、でもきっぱりと対応する
CL 。。。はい(力強い応答)
CO いいですね。アドラーはそんな人だったと言われています。
CL そうなんですね。
CO はい。ですから、まずは2週間から3週間。やってみて、どうだったか報告をもらえませんか?
CL 分かりました。ありがとうございました

適切な行動に着目する

 3つめの指針は「適切な行動に着目する」ことでした。普通にしているときで良いのです。そんなときに声をかけることで。普通にしている時間が増えるのです。だって声をかけもらうのは、ある種の報酬ですから、報酬がもらえる行動は強化されるのです。

 普段うるさい子が静かにしているときに「よかった!」と思って放っておくのは勿体無いのです。相手が前向きな行動や協力的な行動をとっているときには、その行動を勇気づけることが大切なのです。別に大層なことを言う必要はありません。普通の声がけで構いませんから、愛情(関心)をもって声をかけることです。

 このケースはこれで結了しました。3週間後に「問題行動がなくなりました」と報告があったのです。

「不適切な行動の4つの目標」

 アドラー心理学では、すべての行動には目的(目標)がある、と考えています。これを目的論と言います。

 先ほどの中学校の先生が言うところの女子生徒の問題行動にも、もちろん目的があるのです。

 アドラー心理学を発展させた精神科医のルドルフ・ドライカースは「不適切な行動には4つの目標がある」と指摘しました

①注目関心を引く
②権力争いに勝つ
③復讐心をとげる
④自分の無能力を誇示する

不適切な行動の4つの目標

 この4つは段階を示してもいます。つまり

  第一段階 注目関心を引く
  第二段階 権力争いに勝つ
  第三段階 復讐心をとげる
  第四段階 自分の無能力を誇示する

 のようにエスカレートしていくと言うのです。

 今回のケースの女子生徒は、第一段階の「注目関心を引く」と第二段階の「権力争いに勝つ」の間にいるような感じですね。泣いたり喚いたりして注目関心を引こうともするし、先生が止めるのもきかずに教室で騒ぎ続けることで権力争いをしているのかも知れません。

 次回の投稿では、他の例も交えながら「不適切な行動の4つの目標」についての理解を深めて、どのような場合にはどう関わったら良いのかのイメージが持てるようにお手伝いしたいと思っています。

つづく

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