「曖昧語」と「因果関係」で相手の無意識に影響を与える
ミルトンモデルの解説の続きです。それぞれ独立しても読めるはずですが、初回から読みたい方は↓
上の記事では「前提」という概念を活用してパワフルな質問をつくっていくヒントをお伝えしました。
そちらの復習も含めて、今回も具体例を使って検討していきます。※ケースは以下のものを使っています
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これに対してコーチは以下の関わりをしました。解説対象の質問を太字にした上で、ミルトンモデルについての解説をつけていきます
前提は「わたしはこのやり方は正解ではないと思っている」です。結構厳しい前提ですね。
クローズドクエスチョンは「解釈投与」だと言われることがあります。こちら側の解釈を与えているのがクローズドクエスチョンなのだということです。
「お父さんのこと好きなの?」という質問は「お父さんのこと好きじゃないでしょ」というこちらの解釈を質問形で相手にぶつけているんだというようなことですね。
前提は「他に正解がある」「あなたは正解を知っている」。こちらは一転して優しい前提ですね
前提は「何かが不足しているから質問できてない」「ニーズを満たせば質問できる」。これも優しい前提。基本的にコーチが用いる前提は優しいのです。
「あなたはニーズさえ満たしたら、何でもできる!」という風に相手を見ているのです。
前提は「コミュニケーションの取り方によって回避できる」。
アドラーは「すべての問題は人間関係の問題である」というような表現をしています。これが正しいとすれば
「すべての問題の処方箋はコミュニケーションである」と言えるかも知れませんね
前提は「クライアントの力になることが大目的。正解を知ることは、そのための手段の一つ」
前提は「あなたは答えを知っている」
クライアントの質問に対して、力強く質問で返していますね。
「クライアントは答えを知っている!!」
そう信じて関われるのは素晴らしいことですね
これは質問ではなく、こちらの考え(前提)だけ伝えてますね笑
その前提を含んで質問形にするなら
「答えは現場にしかないんじゃない?」
「答えは現場にあるんじゃないかな。どう思う?」
「僕たちの基本的な考え方は、答えは現場に存在する、だと思うだけど、どうだろう?」
「コーチングの答えって、本当に教科書の中にあるのかな?」
「答えは教科書の中にはないんじゃない?」
みたいに色々とつくることができますね。さらに凝って作ってみると
「コーチングの答えが現場にしかないとしたら、私たちはそれをどうやって発見するんだろう?」
相手がこの質問の答えを真剣に考えてくれたら、何が起こりそうかイメージしてみてください。
新たな因果関係をつくる
これも質問ではありません。一つ前の「本当は本当はちゃんと知ってたんだよ」と繋がっていますね
コーチははクライアントの中に新たな因果関係をつくろうとしているのです。これもエリクソン博士が使ったやり方です。
クライアントさんのために、たくさん実践してきたら(因)→本当はちゃんと知っていた(果)
あなたはクライアントのために、たくさん実践してきたのだから、本当はちゃんと知っているんじゃない?
とクライアントに問いかけているのです。クライアントがこの考えを受け入れるなら、
「自分はちゃんと知っている」も真実
「自分はクライアントのために、たくさん実践してきた」も真実
になるのです。すごいね
しかも「たくさん実践してきた」ことが、「自分はちゃんと知っている」の根拠になるのです。とても力強いですね。
人間って因果関係があると納得しやすいのです。
いきなり①のように断定されるよりも、②のように根拠付き(因果関係あり)で示されたほうが納得感が生まれやすいのではないでしょうか。
実は論理的に考えるならば、クライアントのためにたくさん実践してきたからといって、必ずしも「ちゃんと知っている」とは言えないはずです。だけど、なんとなく納得してしまうですよね。
だから
この例のように、単に「もう大丈夫だよ」と言って安心させようとするよりも、因果関係を作って伝えることで、納得感を持ってもらおうとしたりするのです。
これを質問形にすれば
のようになりますが、クライアントがこれにイエスと言えたなら、より効果が高いわけですから、質問形でいけるときはそうしたいですね
あえて曖昧な表現にしてみる
さらに
のように語尾を曖昧にするやり方もあります。こうなるとクライアントはますます抵抗感を感じにくくなります。
・大丈夫かな
・大丈夫かも知れない
・大丈夫かもね
・大丈夫とも言ってもいい
・大丈夫な可能性もある
・大丈夫なんじゃないかな
・大丈夫だと思う
みたいに断定しない表現にもたくさんのやり方がありますから、ぜひ意識的に活用してみてください
断定形だとクライアントが抵抗を感じそうなときは、語尾を曖昧にすることで、受け入れてもらうのもエリクソン的なやり方なのです。
前回の記事でも書きましたが、
直接的な提案や指示ではなく、「曖昧」で「含み」を持たせた言葉での暗示や誘導を行うことで、相手の内的なリソースを活性化させて解決を引き出すのがミルトンモデル
のやり方だからです。
まとめてみると、コーチが伝えたいのは「もう大丈夫」ということなのですが、断定してしまうとクライアントが受け入れてくれないかも知れないので
もう大丈夫と言えるかも知れない
と語尾を曖昧にすることで抵抗を回避しつつ、さらに
こうやって相談に来れているということは、もう大丈夫と言えるかも知れない
と根拠(因果関係)までつけて納得感を増していたわけです。
曖昧さは語尾だけではない
本編に戻ってみましょう。
じつは、この中にも「曖昧さ」というコンセプトが含まれています。曖昧さは語尾だけではないのです。
何を実践してきたか?
何を知っているのか?
のようなことは敢えて曖昧にされているのです。これを例えば
のように曖昧にせずに表現するとどうでしょうか。
「いやー、100人コーチングしたくらいでは何とも言えないわ」
「コーチングの正解なんて分からないでしょ」
となってしまいかねないのです。何しろクライアントは自信がないわけですから。
なので敢えて具体化しなくても良さそうなことは、曖昧に表現して、納得感を得てもらっているわけです。
そして最後は
「さらに一歩成長するために」の前提は
「これまでも成長してきた」
「あなたはこれからも成長をする」
「先生と話をすることで成長する(因果関係)」
なわけです。
「話せたらいいことってなんだろうね」の曖昧感もいいですね。
「何について、どう話すのが良いですか」と比較して、自然に思考が動いていく感じを感じとることができるでしょうか?
まずはなんとなく掴み取ることが大切ですから、今回も「曖昧語」や「因果関係」についてなんとなく掴み取ったら、さっそく実践の中で実験してみたり、実践事例を検討して面白がってみてください
そろそろ人生を変えるコーチングカウンセリングを身に付けたいという方は
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