信念の書き換え:「私は意地悪だ」は本当なのか?②
①の続きです。①を読んでいないかたは、こちらからどうぞ↓
対人関係アプローチが効果的だと感じたコーチは、そのための準備も兼ねて、パートに分けるということを行っています。
CO 「ちょっと想像してください。あの。まりちゃんはね。私は意地悪だって言いたい「部分」があるよね。」
というところですね。
こういう風にして、あなたは意地悪ではなく、あなたの中に、私は意地悪だと言いたい部分があるんだよね。という視点を持ち込んでいるわけです。
なんらかの意図のもと「わたしはいじわるだ」と言いたい部分もあるけど、それ以外のあなたもいるよね?とコーチは言っているんです。
これは「問題の外在化」と言われる技法にもちょっと近い。
外在化=問題をクライアントの内側にあるとみなさずに、クライアントの外側にあるとする見方。結果、クライアントと協力しながら問題解決をすることになり、種々のリソースを活かしやすい
システムズアプローチの東豊先生の『虫退治』などが有名です。子どもがサボっているのではなく、サボり虫がいてサボるようにしている。などと見立てて、家族で協力しながら、そのサボり虫を退治するための儀式をしていったりするのです。
問題を子どもに内在化させると、親も問題と子どもを同一視しがちなりがちですし、子ども自身の自己肯定感も下がって、内外のリソースが使えなくなっていきます。
というようなわけで、
「わたしはいじわるだ」と言いたい部分がある
と、おいた上で
CL「泣きながら、まりちゃんは意地悪なんかじゃない!!!って言いそうな人。誰ですか?」
と問いかけています。この部分はビデオで見るとわかるのですが、コーチは感情を込めて話しかけています。こうやって、クライアントの心に訴えかけているのです。
「いじわるなんかじゃない!」って思ってくれてる人いるでしょ??
って。
「友達」といっても色々いると思うので、特定の1人を選んでもらいます。なぜならこの後、その人になりきってもらいたいからです。
だれだかわからない不特定の友達になりきることは出来ませんし、その友達的な誰かからコメントをもらっても説得力がないのです。誰だかわからないわけなので。。。
ですから、1人を思い浮かべるように依頼しています。
その上で、コーチは丁寧に「どのあたりに思い浮かべましたか?」と手のひらをヒラヒラと動かしながら、友達をイメージした場所を確認しています。
これはNLPでサブモダリティといわれるものですが、相手を思い浮かべるときには、イメージの世界の特定の場所に思い浮かべるはずなのです。
その場所を押さえておいて、そこに向かって話しかけると、リアリティが出るのです。
僕が椅子を使ってワークをしている様子をみたことがある方は「椅子をつかって2人の関係を表してください」などと言っているのをきいたことがあると思いますが、これをやっているわけです。
そうしてリアリティを出してから、コーチはポジションチェンジを開始しました。
まずは自分のポジションで話してもらいます
ここでクライアントは「ときどき」とか「ちょっと」とか連発していますね。もしかしたら、友達を目の前にしたことで「いじわるだ」と言い切ることが難しくなっているのかもしれません
これは認知再構成法でいうところの「根拠」の提示に近い部分でもありますね。「私は意地悪」の根拠出しです。
そして、このケースで言うと、根拠の後の反証パートを友達の証言でやろうとしています。そのためのポジションチェンジです。認知再構成法については、こちらをどうぞ
次にコーチは、クライアントに相手(友達)の側に移動してもらって、相手視点から自分を見てもらいました。
最初に出てきた言葉は「あたしもイライラするけど」でした。ノーマライズと呼ばれるものがクライアントの口から出てきたのです。
ノーマライズ=普通化、一般化。クライアントの思考や感情、行動が一般的なものだと指摘すること。当たり前のものだと認識してもらうこと。
イライラすることなんて、一般的なことだし、普通のことなんですよね。だから何も問題ないのです。
普通のことであるなら、クライアントはそのことで過度に悩んだり、自分責めをする必要はなくなります。
そういう意味では、最初から素晴らしいコメントが引き出せました。とはいえ、さらに友人から言葉を引き出すために
CO「(まりちゃんが)いや私はいじわるなんだ。って言い続けたらなんて言いたくなる?」
と追い込みをかけてます。この辺をうまくやれるといいですね
これによって「でも友達だよ」が引き出せたので「どうしてクライアントと友達でいるのか?」の路線で展開させていきました
CL「(沈黙)あー。そうですね。。。あー。。。うん。(沈黙)」
CO「あー。。。。うん。(笑) なんでしょうか?」
このような関わりをしないコーチはぜひ参考にしてください。クライアントは沈黙していますが、平然と「なんでしょうか?」ときいています。
ただしその前にクライアントが言った「あー。。。。うん。」を繰り返しているのが、ポイントですね。クライアントと同じことを体験しながら、クライアントの内側で起こっていることを知ろうとしているわけです(共感的理解)。ちょっとした笑いを入れているのもポイントですね。
こうして質問を続けることで、「一緒にいると楽しくなる」「明るくなる」を引き出しました。
とはいえ、この程度の体験では、信念(思い込み)が変わるところまで行きません。
NLP指導の第一人者の山崎啓支先生は思い込みが変化するためには
感情の強さ×回数
が重要であると言います。強く感情が動けば、少ない回数の体験でも思い込みは変化するのです。
なので、コーチはここから感情を引き出しに行きました
CO「まりちゃんに思いやりを感じることはゼロですか?意地悪な質問ですけど。まりちゃんにはまったく思いやりを感じないでしょうか。その人は」
全く思いやりを感じない?と強く迫っています。そのことで「思いやり」の部分にも向き合ってほしいのです。
そしてこれは高度な話ですが、意地悪な質問という言葉をコーチは2回使っています。読んでもらえばわかりますが、内容的にはたいして意地悪な質問ではありません。それをどうして意地悪な質問だと言っているのでしょうか。
意地悪の意味づけを変えたいのです。
僕は、彼女が隠している部分、見ないことにしている部分に触れるような関わりを「意地悪な質問」と呼んでいます。
隠さなくてもいいんだよ。本当の自分で生きるのでいいんだよ。という思いが「意地悪」な行為の本質だというメッセージを彼女の無意識に送っているのです。
本編に戻りましょう
CO「さらに意地悪な質問をします。まりちゃんを見ていてこの人は思いやり深い人だなぁと思うのはどんな時ですか?」
CL「(沈黙)あー。そうですね。なんか、いろんな人に愛情をもって接しているから。。。」(感情噴出)
こうしてクライアントを追い込むことで「いろんな人に愛情をもって接しているから」という言葉がでてきました。
そしてここでクライアントの感情が噴出します。
コーチングカウンセリングで大切な瞬間ですね。無意識と意識がつながろうとしてる瞬間です。
あなたがコーチングカウンセリングでこのような瞬間に立ち会ったら、ぜひゆっくり時間をとってあげてください。
クライアントによっては、感情を抑えようとすることもありますが、むしろ感情を味わいきってもらってください。感情のままにしていてもらってください。自然と感情の波は去っていきますし、そのときには必要なことが起こっているのです。
そして、しばらく時間をおいて、クライアントが少し落ち着いてから
「いまあなたの中で何が起こったんだろう?」「なにが思い浮かんでる?」などの質問をしてあげてもいいですね。
このケースならさらに「皆に愛情をもって接しているあなたが、ときに意地悪を言いたくなるのは、何を求めているからかな?」
などとやれると、サラッと展開していく可能性がありますね。
10年前の僕は、それとは違う選択肢をとりました。次回の記事では、それがどんなもので、結果何が起こったかを解説します
続く
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