パワフルに変化をつくる『ポジションチェンジ』を身につける①

コミュニケーションの実験装置

人生を変えるのはコミュニケーションです

1つ目は「自分とのコミュニケーション」
2つ目は「他人とのコミュニケーション」

自分とのコミュニケーションは大切です
・自分の内なる声に耳を傾ける
・これからどうするか考える、決める
・自分の気持ちを整理する
・自分を癒す声がけをする
・自分のことを勇気づける
・自分の思い込みを見直してみる
などなど

どれも幸せに生きていく上では欠かせませんね

そしてもちろん他人とのコミュニケーションも大切です
・他人と仲良くなる
・はっきりとNOと伝える
・相手にお願いする
・相手に許してもらう
・相手を理解する
・相手に理解してもらう
・相手と協力し合う
・相手に真剣になってもらう
などなど

こちらも、社会の中で生きていくしかない我々にとっては必須スキルです

私たちは人間関係の中で幸せを感じるのですから、対人コミュニケーションは、幸せに生きていくための必須科目でもあります

そして、ポジションチェンジはコミュニケーションの練習装置です

どのようなコミュニケーションを取ると何が起こるかの実験装置と言ってもいいでしょう


思考することとの違い

ポジションチェンジでは「ポジションを分けて、それぞれを体験」します

・前に進みたい自分と、動きたくない自分のポジションを分けて、それぞれを体験する
・自分と妻のポジションを分けて、それぞれを体験する

のようなことをするわけです。

この「分けて体験」というのがポイントなんです

「わかる」の語源は「分ける」です。ごちゃごちゃしていたものを分けていくから、わかる=理解できるようになるのです

「分けるから、わかる。分けないから、わからない」のです

私たちは「相手のことを考える」ことはあります。

「鈴木さんは何を考えてるんだろう?」
「田中さんはどうして分かってくれないんだろう?」

そんな風に考えること、ありますね。

でもそれは、分けてもないし、体験もしていないわけです。

自分の立場から、鈴木さんのことを考えているのです。
自分の立場から、田中さんのことを訝っているわけです。

これでは、相手のことはよくわからないままなのです。

ポジションチェンジでは、例えば鈴木さんになりきるのです。

鈴木さんの生きてきた人生を背負って、鈴木さんの視点から、周りの人たちのことを見てみるという体験をするのです。鈴木さんの耳で声を聴き、鈴木さんの心で感じる体験をするのです。

その試みが成功すると、鈴木さんと自分は違う人間なんだということがよくわかります。そして鈴木さんのロジックが「なるほど」と理解、腹落ちするわけです。

ロジャーズ理論をご存知の方への説明だと、鈴木さんを「共感的理解」しようとしているということになりますね。

こうやって、相手のことをよく知った上で、どう関わっていくとお互いのために良いのかを考えていこうとするわけです

彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず

孫子

孫子の言葉ではないですが、相手のことを知り、自分のことを知ること。その両方が大切なのです。

自分のことは分かっているつもりでわかってない。だから相手(鈴木さん)のことを知ろうとするのと同じように、自分のことも知ろうとすることが大切なのです。

そのために椅子を二つ用意します。そして自分の椅子と鈴木さんの椅子と分けて置いて、それぞれに座りながら、それぞれの立場を分けて体験、理解していこうとするわけです。

事例を使って見てみましょう

事例「兄貴がバカで」

ずいぶん昔の講演会での公開セッションでの出来事です

CO「何について話したいですか?」
CL「兄のことについてお願いします」
CO「お兄さんがどうしたんですか?」
CL「ここしばらく実家に帰って来ずに、母のことを心配させていて」
CO「どういうことですか?」(具体化)
CL「もとから仕事で忙しかったんですが、最近結婚して、それ以来まったく実家に顔を出さず、母も心配しているというか呆れている状態で、散々心配かけてきたのに、よくそんな薄情なことができるなと思っているのですが、こちらのいうことをまったくきかないので。。。本当にバカだなと。。。」

というようなご相談でした

短時間のデモンストレーションでしたので、僕はここで早速ポジションチェンジを開始しました。

CO「では、お兄さんと奥さん。お母さんとあなたの、現在の関係を椅子をつかって表現してもらっていいですか」

※世間によくあるポジションチェンジではこのように何人分もの椅子を出すことは、ちょっと珍しいかも知れませんが、このままお付き合いください

CL「。。。。。。こんな感じです」

配置された椅子(上部から見ているイメージ)

CO「本当にお母さんはこの位置でいいのかな。。。お母さんの椅子に座ってチェックしてもらっていいですか?」
CL「(母の椅子に座る)。。。。。。。。あ、違う」
CO「ではお母さんの椅子を修正してもらっていいですか?」
CL「はい」

修正された配置

CO「説明してもらえますか?」
CL「母は兄のこと呆れて、諦めていると思っていたのですが、母の椅子に座って母の気持ちになってみたら、まだ兄のことを気にしていることが分かって、それで角度を変えました」
CO「ご自身の椅子は?」
CL「はい。。。そんな母に寄り添う感じで、自分の椅子も少し変えました」

どうですか?

このクライアントさん(30代女性)は、この数ヶ月以上の間、兄と母のことで気を揉んできたわけです。お母さんと同居はされていないようでしたが、それなりに話はされていたと思います。

それでも、お母さんが兄のことを諦めていると思い込んでいた。しかし「お母さんの気持ちになってみよう。お母さんはどっちを向いているのかな?」とお母さんと自分を分けて、お母さんの体験をしたらすぐに、認知が修正されるようなことが起こるわけです。不思議ですね

セッションは続きます

CO「では、自分の椅子に座って、お母さんに向かって『寂しいよね』って言ってあげてください」
CL「(母の椅子に向かって)お母さん寂しいよね」
CO「では、お母さんの椅子に移動してください」
CL「はい(母の椅子に座る)」
CO「(クライアントに向かって)お母さん、お嬢さんが『寂しいよね』ですって。。。何て言いたいですか」
CL(母)「そんなことないわよ」
CO「なるほど。そんなことないわよ、って言っている心の中はどうですか?」
CL(母)「寂しい。。(笑)」
CO「なるほど!!お母さんに言ってあげたらいいことが早速見つかりましたね!!お母さんは否定するかも知れないけど『寂しいよね』って言ってあげると。。。」
CL「はい。娘はちゃんと分かってくれてる。。と思う(笑)」

どうでしょうか?こんな風にうまくポジションチェンジが使えると、コミュニケーションの実験装置、練習装置になるわけです。

CO「では、今度はお兄さんの椅子に座ってもらえますか?」
CL「。。。はい(兄の椅子に座る)」
CO「窮屈そうだね(笑)」(前にある奥さんとの椅子の間が狭いため)
CL「はい(笑)」
CO「でも、それが幸せなのかな?」
CL(兄)「。。。。はい。。。。」
CO「お兄さん!奥さんはどんな人ですか」
CL(兄)「すっごい肯定的で、いいよいいよって言ってくれます」
CO「そっか。で、左側みると、妹さんが、本当に兄貴はバカでって言ってます」
CL「(笑)」
CO「ねぇお兄さん!帰りたい?」
CL(兄)「帰りたくないです(笑)」
CO「どうして?」
CL「文句ばっかり言われるから」
CO「だってさ(笑)」
CL「ホントそうですね。。。」

いかがでしょうか。これが分けて体験することのパワーですね。

もちろんただ椅子を座り変えるだけでは、こんなに劇的なことは起きません。手品と一緒で種の仕掛けもあるのですが、そのような工夫を少しすることで、クライアントの無意識の中にあって使われてこなかった兄や母のデータが引き出されてくるのです。

さて、このあとセッションはどうなったのでしょうか?

CO「では、お兄さんの椅子の後ろに立ってもらっていいですか?」
CL「。。。。はい」

椅子の後ろに立つ(タイムライン)

相手の生きてきた人生を背負って、相手の視点から、周りの人たちのことを見てみるという体験をするのです。相手の耳で声を聴き、相手の心で感じる体験をするのです。

再掲

「相手の人生を背負って」というのはどういうことでしょうか。NLPがわかる人への説明だと、相手のタイムラインを歩いて相手のポジションに座るということです。

もっと一般的にいうと、相手のそれまでの人生を踏まえて、相手の今の立場を理解するということですね。

僕は彼女とそんなことをしてみたいと思ったわけです。

CO「お兄さんはずっと仕事忙しかったんだよね」
CL「はい。◯◯系の仕事で、家に帰れない日もあるくらい。。。」
CO「これまで彼女さんは?」
CL「。。。。何年も彼女いなくて、すごい久しぶりだったはずです」
CO「そっか。大変な仕事を一生懸命やって、1人の家に帰って。。。を繰り返していた中で、久しぶりに彼女ができて。。。その彼女は、いいねいいねって言ってくれて。。。それで結婚することになって。。。。お兄さん良かったね」
CL「ホントですね。。。。わたし。。。。。形式的には言ったけど。。。まだ。。。心から、兄におめでとうって。。。言ってなかった。。。」
CO「。。。お母さんのことも、もっと大切にしてもらいたかったからかな?」
CL「。。。。はい」

Never criticize a man until you've walked a mile in his moccasins.
その人のモカシンを履いて1マイル歩くまでは、相手を批判するべきでない

ネイティブアメリカンのことわざ

相手の靴を履いて1マイル歩くって、「相手の人生をほんの少しでいいから一緒に生きてみろ」ってことだと思うんですよね。

お母さんも一生懸命生きている、妹さんも一生懸命生きている、お兄さんも一生懸命生きている。それぞれ見ている世界は違うかも知れないけど。。。

だからほんの少しでも相手の人生を生きてみようとすること。それが相手と一緒に生きていくための第一歩だと思うわけです。

(ということでNLPerのみなさん。相手のポジションにもタイムラインをイメージすると良いですよ)

さて、デモンストレーションは10分程度の時間枠だったので、まもなく終了です。最後はこんな感じ

CO「では、最後に自分の席に戻って。。。。お兄さんとお母さんを見て。。。。お兄さんになんて伝えたいですか?」
CL「。。。本当におめでとう。。。大変だったもんね。。。いい人に出会えて良かったね。。。お母さんのために実家にも顔出してもらいたいけど、あと半年くらいは新婚だから仕方ないよね(笑)。。。でも一年経っても、顔出さなかったらホントにバカだからね!!(笑)」
CO「(笑)あははは。本当にバカだからねか。。そう言ったらお兄さんどう思いそうですか?」
CL「あはは。そうだよな。ちょっとこっちの居心地が良すぎて。。。でも分かってるよ。。。もっと早く顔出すよ。。。って」
CO「そっか。。。どうしてそう言うんだろう?」
CL「。。。。。あぁ。分かってもらえたらからだと思います。。。自分のこと」

ということでした!!

4つの椅子を使って10分ほどで手に入る変化としては十分大きいのではないでしょうか。

何より素晴らしいのは、クライアント自身がお母さんの体験、お兄さんの体験をしているので、納得感があるということです。

百聞は一見に如かず

ではありませんが、人からいくら言われるよりも、自分で体験することほど説得力があることはないのです。

人と一緒に生きていくためには、相手の立場に立って相手を理解することが欠かせません。そしてそれに先立って、自分のことをもっと理解することも大切です。

今回のシリーズでは、ポジションチェンジの考え方や練習の仕方、そのポイントなどを解説して、自分とのコミュニケーション、他人とのコミュニケーションのヒントにしてもらいたいと思います。

続きをお楽しみに!!


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