あなたは何を「前提」にコーチングしているか⑦NLP

  このシリーズはNLPの前提と言われるものの解説記事です。卓越したコーチカウンセラーが持っている世界観・人間観を身につけてください

 このシリーズは今回で最終回になります

前提⑯人は常にその時可能な最善を尽くしている

 「あのとき◯◯していたら」などと後悔することはありますが、NLPでは
人は常にその時可能な最善を尽くしている、という前提をもっています。

 確かに、そのとき

①自分がどんな目的のために動いているのかが明確であり②より重要な目的がなんであるかが分かっていて③目的のための選択肢が十分にあれば

 私たちは、別の行動をとった可能性があります。

 とはいえ、そのとき持っていた目的に向けて、その時の選択肢の中から最善と思えるものを選んだこともまた確かなことなのではないでしょうか。私たちは過去の体験から学んだことをベースに、その時々の欲求(目的)を満たすために良いと思う手段をとっているのです。

 この前提から生まれているのが、以下の記事で紹介されている「⑧あの時なりによくやっていた。今は別のこともできる!」という落とし所に向けてコーチングカウンセリングをすすめていくという考え方です。このイメージが持てていると過去の後悔や無力感に関するセッションは楽に進めることができますので、ぜひ参考にしてください

 また、この前提から発展して生まれたコーチングのモットーが「現状100点未来♾️」です。これは僕が言い始めたフレーズです。このフレーズに「救われた」「希望が生まれた」とよく言われます。

 過去はその時々最善の選択をしてきたなら現状は100点なのです。そして今からはこれまでの選択にとらわれず、どんな選択でもできるなら可能性は無限大に広がります。このように自分の人生を見てみようということですね。

CL どうしてあのとき母にあんな酷い言い方をしてしまったんだろう
CO ねぇ。そのときのあなたは何を守ろうとしていたのかな?
CL とにかく自分が傷つかないように。。。
CO まずは自分のことを守ろうとした。そうしなかったらどうなってた?
CL 自分がますます不安定になってたと思う
CO そっか、だから、どうして欲しかったんだろう
CL 放っておいて欲しかった。。。
CO 言い方はもう少し工夫できたかもしれないけど。。。辛かったたから、まずは、少し安定するために放っておいてもらいたかった。
CL そうですね。。。
CO 僕には、その当時のあなたなりに、最善を尽くそうと努力していたように見えます
CL 。。。ありがとうございます。。。
CO ちなみにお母さんはどうしていました?
CL 母は黙っていました
CO もしお母さんも最善を尽くしていたとしたら?それは何のためでしょうか
CL 。。。。。私がこれ以上苦しまないように。。。
CO わかって、放っておいてくれていた?
CL 。。。。。。かも知れません。。。。

最善をつくす

 みんなその時々良かれと思って、動いている。そんな風にみることでOKを出して、未来に進んでいきたいですね。

前提⑰選択肢はないよりあった方がいい

 不確実性の時代です。これまで通用したものが通用しなくなっているし、変化のスピードもますます速くなっています。そんな時代だからこそ、柔軟性が求められます。そして柔軟であるためには、さまざまなオプション(選択肢)に気づいている必要があるのです。

 選択肢が多くなると選びにくくなるというのも事実ですが、目的を明らかにして、仮にゴールを決めたら、片っ端から選択肢を実行して、その結果から学んでいくというのが良いやり方だと思います。やってみなければわからないのです

やってみなはれ。やらなわからしまへんで。

鳥井信治郎(サントリー創業者)

 まさにこの言葉通りで、やってみることが良いのだと思います。アドラー心理学をベースにして僕がつくったモデルだと「体験学習サイクル」です

体験学習サイクルの質問

 目的を明らかにしたから、行動してもらい、そして結果から学習してもらう。とにかくこのサイクルを回しながら加速的に成長し、結果を出していくために必要なのが、柔軟性であり、選択肢の豊富さなのです。

 ですからコーチングでは、コーチはバカになることが大切です。下らないアイデア、しょうもないアイデアを率先して出していくことで、クライアントのハードルを下げていくのです。全ての選択肢をジャッジせずに、まずは机上に挙げてみること。そして実験してみてその結果から学んでいくこと。それがNLP的なやり方だと思います。

 そしてコーチはクライアントとコーチの二人の世界に閉じることなく、どんどんとクライアントに外側のリソースにつながってもらい刺激を得てもらうことを推進していった方がよいと思います。二人で落ち着いて考えるのも大切ですが、世界には想像を超えたものがたくさんあるからです。


前提⑱うまくいかなかったら別のことをためしてみる

 これはソリューションフォーカスの哲学でもありますが、NLPでも大切にしています。

・うまくいっていることはもっとやってみる(Do more.)
・うまくいかなかったら、何でもいいから別のことをやってみる(Do something different.)

 この何でもいいからというのが大切なのです。プランAでうまくいかなかったからといって、別に練りに練ったプランBを実施する必要はないのです。何でもいいからプランB、プランCと発動してみることが大切です。そうやって経験値を上げていくことで、自然と良いやり方が発見されていくのです。

 そして、この実践のためには、もちろんゴールが必要です。何が目的で、どうなったらいいのか(ゴール)。それが決まっていたら、あとは、どんどん行動して、観察してを繰り返すのです。

 NLPだとT.O.T.E.モデルですね。

Test(テスト) 現状を観察
Operate(操作)ゴールに向けて行動
Test(テスト) 結果を観察
Exit(終了)  ゴールに到達したら終了

T.O.T.E.モデル

 ゴールを設定したら、現状をテスト(観察)します。そしてゴールに向けて操作(行動)。また結果を観察して、さらにゴールとのギャップがあれば、それを埋めるべく行動します。ゴールを達成していたら終了です。ゴールを100点など点数かしておいて、スケーリングを使いながら、行動と観察を繰り返すと良いですね。

 NLPでは成功するために必要なのは以下の3つの力だと言われています

①ゴールを設定する力
②繊細な観察力
③柔軟に行動する力

成功に必要な3条件

 まずは本当に望んでいることをあきらかにする力です。NLPでは8フレームアウトカムと言われる質問を使ってゴールを明らかにします。※アウトカムは「欲しい結果」という意味でゴールのことです。

①あなたの欲しい結果は何ですか?(アウトカム)
②それが手に入った時、どのようにして分かりますか?(五感で表現)
③成果は、いつ、どこで、誰と達成しますか?(コンテキスト)
④それを手に入れるとどのような影響がありますか?(エコロジー)
⑤そのために役立つリソースは何ですか?(リソース)
⑥結果を手に入れるのを止めているものがあるとしたら何ですか?(制約)
⑦成果を手に入れることは、あなたにとってどのような意味がありますか?(目的)
⑧では、そのためにあなたはまず何から始めますか?(行動)

8フレームアウトカム

 このような質問を使って、ゴールを明確にしていくわけです。

 そして次は観察力。NLPではカリブレーションと呼びますが観察力を鍛えるトレーニングをします。そもそも観察力以前に、私たちは、脳内のイメージの世界にいることが多く、周りで起こっていることを見ても聞いてもいないことも多いのです。(NLPではダウンタイムと呼びます)

 最近はやりのマインドフルネスではありませんが、まずは今ここに意識を向け続ける練習や集中力を養うことがベースになります。その上で、繊細に観察する能力を上げていくのです。

 とはいえ、あまりハードルを上げすぎても大変なので、まずは何かやってみたい行動が出てくるまで現場で観察を続けることを大切にしてみると良いと思います。

 そして、柔軟な行動力ですね。そのためには心理的柔軟性も大切です。「べき」「ねば」(should)を疑い、「してもよい」(may)や「できる」(can)で動いていけるように信念や思い込みが変化していくと良いのです。

結局は「愛」?

 僕のNLPの先生の一人にリチャード・ボルスタッド博士がいます。コーチとして駆け出しの時期に、何年にもわたってとてもお世話になりました。

 リチャード先生との出会いは、彼の「自分を変える最新心理テクニック」という本でした。この本は素晴らしいNLPの教科書で、脳科学や生理学的な根拠も、臨床心理学的な裏付けも書き込まれているしっかりとしたものです。

 当時僕はこの本を貪るように読みました。この本で紹介されているRESOLVEというモデルも素晴らしいものです。以下の記事を参考にどうぞ

 とはいえ、僕がリチャードからNLPを学びたいと思ったのは、この本がよくできた教科書だったからではありません。この本の194ページからNLPの前提についての話があり、それが終わった後にこう続いたのです

 以上、NLPの真髄とも言える姿勢を挙げたが、これは短くまとめるとどうなるのだろう。次の4点に立つヘルピングを、一言で表す言葉がある

・クライアントの世界モデルを尊重する
・一個の完全な人間としてのクライアントに役立つ変化を探る
・クライアントが基本的に善意の人であると信じる
・変化に必要なリソースはすでにクライアントに備わっていると信じる

 それは『愛』である。愛に裏打ちされた姿勢は、プラクティショナーが使うどんな特別なスキルより大切だ。治療に必要だからといって、愛をでっち上げるわけにはいかない。クライアントは見せかけの愛などすぐに見抜く。愛は単なるラポールではない。ラポールが有効に働くのは、それが愛の表れだからだ。愛は、単なる姿勢、単なる戦略、単なるメタプログラムを超えたものである。それでなければ、そもそもこんなに多くの人間がセラピーの世界に足を踏み入れたりはしない。わたしはセラピーを始める前に必ずこれを思い出すようにしている

※プラクティショナーとはNLPを実践する人のこと
※メタプログラムとは無意識の認識パターンのこと

『自分を変える最新心理テクニック』

 リチャードに言わせると、NLPの前提は人間愛なのです。愛によって人は生き生きと生かされるのです。そしてそれを選択して生きることができる。お堅い教科書の中で、そんな風に高らかに宣言するリチャード先生に会ってみたいと思いました。

 実際に会ってみたら、先生は文字通り愛の人でした。NLPの前提の生きた見本のような人でした。

 NLPの前提は、その人の生き様となったときに、本領を発揮するのだと思います。ぜひこのシリーズの中で紹介した前提で気に入ったものがあったら、それを大切に生きてもらいたいとおもいます。

 おわり

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