あなたは何を「前提」にコーチングしているか④NLP

 このシリーズはNLPの前提と言われるものの解説記事です。卓越したコーチカウンセラーが持っている世界観・人間観を身につけてください

 では今日もスタートしましょう

前提⑨誰かにできることなら、自分にもできる

 僕が最初にNLPを習った時は「モデリングを活用すれば誰でもなんでもできる」と教わりました。本当かな?と思いますよね。厳密に考えてみると(みなくても)流石に「なんでもできる」は言い過ぎな感じがします。

 でもアドラーも以下のように言っているのです

誰でも何でもなしとげることができる

個人心理学講義

 アドラーはお医者さんで、大変な状態の人たちにもたくさん出会っています。だから「なんでも成し遂げることができる」というのが難しいのはもちろんわかっているわけです。

 ではなぜこんな言い方をするのかと言えば、本人も言っていますがそう考えたほうが「勇気が湧くから」です。

 「誰かにできることなら、自分にもできるはずだ」を前提とするから「どうやったらいいんだろう?」「どんなリソースを活用すれば、可能となるのだろう?」と考えるわけです。

 人間の脳は答え(=やり方)が存在するとわかると、答えを見つけやすくなります。僕は将棋が好きなのですが、トップ棋士でも対局の中で長い詰み(相手に完全勝利するルート)を見つけるのは至難の技です。だから詰み(勝てるルート)が存在するのに、見落とすことはしょっちゅうあります。そもそも詰みがあると思ってないので、考えてもいない場合もあります。ところが「実は今の局面には、詰みがあるよ」と教えてもらうだけで、プロはちゃんと勝ち切るルートを自分で見つけることができるのです。

 答え(=やり方)があるという前提に立つと、しっかりと能力(持っているリソース)が発揮されるのです。だから「誰かにできるなら、自分にもできる可能性があるはずだ。多少ズルでもいい、どんなリソースを使ってもいい、自分にも登れるルートがあるはずだ」と思って真剣に探索をすると、うまくやれる方法が見つかることがあるということなのです

 このことを体験するために、僕はあるNLPトレーニングでジャグリングの練習をしました。クラス参加者全員でモデリング(他人の模倣をすること)の練習としてジャグリングに取り組んだのです。技術的なポイントの理解、どこにどのように意識を向けたら良いのか。どんな部分練習を、どんな順番でしたらいいのか。そんなことを考えながら、できる人がやっているのを見たり、質問したりしながら、短時間で習得するのです。

 これは有名なTEDスピーチのビデオですが、ここで伝えられている重要なメッセージは「大抵のことは20時間で習得できる」というものです。スピーチの最後に実際に20時間の練習で弾けるようになったウクレレを披露しています。※このビデオに触発されて僕もウクレレを練習してみました(もちろん20時間以内で弾けるようになりました)

 「20時間でできる」という前提に立ったら20時間でやり切れるような練習メニューを考えるわけですね。そのときに大切なのは「重要な2割を押さえれば、8割の成果は手に入る」というパレートの法則のような考え方で練習メニューを作ってみることです。

パレートの法則と成長曲線

 上図のような成長曲線を考えてみて、2割の時間で8割の成果を手にいれるような練習方法を考えてみると良いのです。コーチングも20時間でそこそこにできるようになる練習プログラムを作ってみるのはおすすめです。僕はゴルフやタロット占いなど、様々なジャンルで短時間習得の練習をしてきました。こんな実験を繰り返すことで「誰かにできることなら自分にも(思ったより短時間で)できるようになる」という信念が強化されるのです。

 そのような信念があれば、もっと時間がかかるようなことでも「きっとやれる方法があるはずだし、いま思っているよりも効率的な実現方法があるはず」と考えることができるようになるのです。

 私たちには新しいものを身につける能力があります。使えるリソースは自らの内側にも外側にもたくさんあります。そのことを忘れずにいてください。そしてリソースフルな心理状態(内外のリソースをフル活用できるような心理状態≒心理的柔軟性)にいられるように工夫してください。

 こんなことをしていると、クリエイティビティも高まります。誰かがやっていることでなくても、夢を描き、それを実現するよいアイディアがあるはず!と信じてやり方を生み出すことができるようになってくるのです。


前提⑩問題や制限は機会である

 問題が起きたり、制限(制約)がかけられる状況になると、諦めてしまうことがあると思います。

 でもNLPでは問題や制限はピンチではなくチャンスだと考えます。どうしてでしょうか?

 問題や制限というのは、これまでのやり方では通用しない状況になったということですね。だとすればそれは「新しいやり方を学び、成長するチャンス」そして「これまでには手に入らなかった成果を手にいれるチャンス」なのです。

 逆に問題や制限がなければ、これまで通りのやり方で、これまで通りの成果を得るだけ(想定内のやり方で想定内の成果を得るだけ)に終わりがちですね。こちらのほうが長い目で見たらピンチなのかもしれません。

 アドラーは「失敗は最良の教師である」と言います。これも似たような意味ですね。失敗しているということは「想定してなかった事態」になったということなのです。想定していなかった事態への対処法を学べるので、失敗は成長のための教師になるということなのです。知らなかったパターンに対処できるようになるというわけです。

 だから問題が起こったら「これはチャンスだ!なぜなら◯◯だから」と言ってみてください。このように逆境を乗り越えながら私たち人類は成長してきたのです。あなたの「チャンス思考」が、クライアントにも影響するとクライアントの未来もどんどん広がっていくと思います。


前提⑪失敗はない、フィードバックがあるだけ

 これも有名な前提です。そもそも失敗というものが存在していないのです。失敗だと決めたら失敗になりますが、フィードバックだと思えば単なる学習なのです。

 拙著「人生を変える!コーチング脳のつくり方」のP14〜僕が最初にしたコーチングのシーンが紹介されています。

 お読みくださった方はご存知ですが、惨敗中の惨敗です。僕は相手の女性を泣かせて怒らせて、コーチングは途中で終了したのです。

 もちろん相手には悪いことをしたと思います。だけれども、この体験は僕にとって大切なフィードバックをたくさんくれた機会でした。「コーチングスキルよりも関係性が大切である」「質問よりも関心をもつことが大切である」などいくつものことを学び、あれから19年経った今でも、僕はあの時のフィードバックを活かしています。

 そもそも「相手はいつもフィードバックをしてくれている」と考えてみてほしいのです。あなたの一挙手一投足に対して、目の前の相手はなんらかの反応を続けてくれているのです(無視しているとか気にしてないということも含めて)

 世界はいつも僕たちに反応しているのです。「相手は鏡です。先には笑いません」という言葉がありますね。先にこちらが笑うと、相手も笑う(可能性が高い)ということですね。

 私たちが何をしても、それはなんらか相手に影響を与えていますし、微細かもしれませんがフィードバックが返ってきている。それが私たちが生きている世界です。言葉で言ってもらうことだけがフィードバックではないのです。相手は常に全身でフィードバックをし続けてくれています。

 だから常にフィードバックをもらい続けましょう。何をしたら何が起こるのかを体験し続け、そこから学び続けましょう。いつもとは違う行動をたくさんしてみましょう。違う声掛けをしてみましょう。違うタイミングで、ちょっと違うやり方でしてみましょう。そうすることで、相手も何か変化してくるのです。

 そのように世界を見ていたときに「失敗」は無くなります。ただ「想定通りの反応が返ってこなかった」というだけのことだし、それはとても興味深いことなのです。

 わかったつもりになっていたけれども、思っていたのと違ったのか。世界地図を書き直すチャンスがやってきたな

 そんな風に考えて成長を続けていけると良いなと思います。

 失敗かどうかを決めるのは私たちです。私たちが失敗と決めつけ、諦めたらそこで「試合終了」ですね。「興味深いフィードバックを得た。これを踏まえて次行ってみよう!」と思えばただの学習プロセスに過ぎないわけです。
 
 コーチングを学んでいる方は、思い通りにいかないことにたくさん出会うと思います。それは当たり前です。コーチングは相手も違う、テーマも違うという状況の中で動いていくのですから、想定外のことばかりなのです。

 だからゴールに向かって相手と協力しながら一緒に工夫するしかないしそれが良いのです。そのプロセスの中から私たちは人間が幸せに生きていくための方法を学び続けていくのです。

 ちなみに「観察の観点」を決めておくというのは大切なことです。僕はコーチングを始めて1年目はたとえば「相手の機嫌の良さ」という観点で観察したり、「相手の探索度合い」という観点で観察したりしていました。

 コーチングをしながら「相手の機嫌の良さ」が僕の言動のどの部分にどんな影響を受けているかを観察するみたいな感じですね。観点を絞らないと学習をすることが難しくなりますので、観点をしぼって観察することで欲しいフィードバックを得る、というのは大切なことだと思います。

 ということで、今日もNLPの前提と言われるものを3項目紹介しました。アドラー心理学と共通するものが多いのは不思議に思えますが、これはアドラー心理学の影響の大きさを表しているのだと思います。

 ぜひ、良いと思える前提があったら、普段からその前提を使って考えてみる、行動してみるということをしてください。そのような実践を通じて肚落ちしたときに、自然とその前提に基づいて相手に関われるようになるからです。

 続きます

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