突然のカウンセリング的なテーマに困ったら

 コーチングをしていて、突然難しい相談をされるときがあります。テーマは深刻な人間関係のこともあるし、過去のトラウマ的な出来事が思い出されて苦しいとか、そんなものもありますね。

 せっかく相談してくれたのだから何とか関わりたいと思うけど、中途半端に話をきいて、収拾つかないまま帰ってもらうことになったらどうしようとか悩む人もいるかもしれません。

 今回の記事では、そんな人向けに簡単な考え方をお伝えしたいと思います。

①傾聴からの外部リソース

 これはとても便利な考え方で、カウンセリングっぽいケースだけでなく、結論が出ない話のときに使えるやり方です。

 まずは相手に寄り添って、受容的共感的に話を聞いた上で、

 「誰に助けてもらえたら、状態が変わる可能性があるだろう?」
 「どこにいけば役立つヒントがあるだろう?」

 のように、その人に役立つ社会的リソースを探すのです。

 弁護士など士業の人、お医者さんなど医療関係者、市役所の人など行政関係、心理カウンセラーなど心の専門家など、結局誰かの手を借りないと解決が難しい案件で、あなたでは対応が難しい件もあるわけです。

 そんなときは、自分は一次受付の窓口になったつもりで、話をきいて、少し整理を手伝ったり、落ち着いてもらったりした上で、専門家を探すのを手伝うのです。

 もちろん、ワンストップで、相談を受けたコーチ自身が解決を手伝えたらいいのかもしれませんが、無理なものは無理ですね。

 難しい相談の場合は、「残念ながら私は、その相談には乗ることができない」と断ってもいいわけです。

 でも「話をきいて、今後そのことにどう取り組んでいったらいいかを一緒に考えるくらいしかできないけど、それでよかったら手伝うよ」とか、もっとシンプルに「ただ話を聴くくらいしかできないけど、それでも良かったら」とか伝えて相手に判断を委ねてもいいわけです。

 そして本当に時間まで話を聴いたら「そんな状況だったんですね。ここまで話してみて、どうでした?」などと問いかけて、そこから「これから先、どうしていくと良さそうですか?」と繋げるなどすればいいのです。

 相手は「たまには、こうやって誰かに話をきいてもらうといいかも」みたいな答えの場合もありますし、もっと具体的に「やっぱり◯◯をしたほうがいいかも」みたいな指針が出てくる場合もあります。

 そんなやりとりの中で使える質問が「どこに行くことが助けになるだろう」「誰と話をしたらヒントが得られるだろう」「誰に助けてもらえたら、状況が変わるだろう」などの外部リソースの質問なわけです。

 相手から何らか答えが出てきたら「そのためにできそうなことはなんだろう」とかに繋げてみてもいいですね。

 これでは何も役に立ててないような気がする方もいるかもしれませんが、話を聴いて、相手が少し落ち着いたり、少し整理ができたりするだけでも、役に立ってるとも言えますし、次にどこにに行ったらいいかが考えられるだけでも素晴らしいことだと思います。

 相手の口から、役に立ちそうな答えが出てこなかった場合でも、「誰なら話聞いてくれそうだろうね」「誰に相談したら、役に立つ人を紹介してもらえそうかな」とかで粘ってみることもできるかもしれません。

②自分が耐えられない話は無理

 ①で伝えたようなことでも、相手の役に立てるわけですが、一つ気をつけておいた方がいいことがあります。

 それは、聴いていてあなたが耐えられないような話なら、何にせよ相談に乗るのは難しいということです。こっちまで感情的に振り回されてしまうようでは、寄り添うことも整理を手伝うこともできないのです。二人して混乱したまま終わることもありますし、相手に「相談しないほうがマシだった」と思わせてしまうこともありえます。

 そうなりそうな予感を感じたら、やはり自分には難しいと相手に伝えましょう。これは何も恥ずかしい話ではありません。むしろ出来もしないことをできるかのように装うことの方が問題だと思います。第一、世の中には教育をうけたカウンセラーもたくさんいるのですから、その人たちに関わってもらえたらいいわけです。あなたが頑張らなくてもいいのです。

 逆に、話を聴くだけなら、冷静に聴き切ることができる案件であれば、何らか相手の役に立つことはできるとも言えるのです。①のやりかもそうですし、ここから紹介するやり方もそうです。ぜひ相談に乗る際には、最後まで聴ききれそうかどうかを検討してみてください

③蓋の仕方について

 感情の蓋が開いたまま、閉じることができなかったら、どうしよう。ということが気になる人もいるかもしれません。

 相手があなたに話し始める。蓋をしていた感情が吹き出して、止まらなくなる。約束の時間がきても、まだ相手は落ち着いていなくて、そのまま帰したら家でもずっと悩んでいそう。

 そんな場合はまず、そこまで感情的にならないで話してもらうことを考えてみてください。深呼吸しながら話してもらうとか、少し身体を動かしながら話してもらうとか、そんなことをするだけでも、過度に感情的になるのを避けられるかもしれません。

 もう一つ椅子を使ってみるのもいいかもしれません。少し離れたところに椅子を置いてもらって、悩んでいる自分がそこに座っているイメージをしてもらうのです。

 そして、そこにいる、悩んでいる自分について、客観的に説明してもらうような話し方をしてもらいます。これも過度に感情的になるのを避けるための工夫ですね。

 相手が感情的になったら、少し椅子を遠くに話してもらうとか、より説明的に話してもらうなどしてみればいいわけです。

 このようになるべく冷静に話してもらうようにすれば、相手はそもそも過度に感情的になることもありませんから、帰ってから感情の蓋が閉まらない問題も起きにくくなるわけです。

 ですし、もし一人でいるときに思い出して、感情的になっても、どのように落ち着いたらいいかの練習をしているとも言えるわけなので、クライアントの役にたちますね。

 もっとその手の役に立ちたいなら、「感情的になったときには、どうすることで少しでも冷静になれると思いますか?」とか「冷静になるために役立つもの(こと)は何ですか?」などの質問を投げかけて一緒に考えたらいいのです。役立ちそうなことがいくつか出てきたら、それの組み合わせによって、それなりに冷静になるためのやり方をつくることができるかもしれません。

 他にも「これまで感情的になったときに、役に立ったことは何があった?」「感情が落ち着いたときは、何があったから落ち着いたんだろう」などと問いかけてみるのもありですね。

 ずーっと感情的な人はまずいません。なので、基本的には落ち着くのです。そしてどんなときに落ち着くのかに気付けたら、そのために役立ちそうな行動を自分でとることができるのです。

 そんな風に考えて関わってみてください

④ニーズに気づき満たす

 もう一つ便利な考え方をご紹介します。それがニーズ(欠乏欲求)を満たすというものです。

 クライアントの状態が悪い場合は、何か満たされてないニーズがあるはずだと考えてみるのです。

 例えばクライアントのイライラが治らない。その時に「十分な睡眠がとれたら状態が変わる」のだとすれば、そのクライアントのニーズは睡眠だったわけです。同じように「カルシウムをとれば状態がよくなる」ならカルシウムがニーズであり、「話をきいてもらうだけでイライラが治る」なら誰かに話を聴いてもらうことがニーズだったわけです。もしくは「相手の事情がわかれば怒りがおさまる」なら、相手の事情がわかることがニーズですね。

 このように、それが得られると状態が良くなるものが、その人のニーズです。

 ということで、こんなアプローチをしてみればいいことになります

CL「××のことで悩んでて」
CO「私には話聞くことくらいしかできないけど、それでもよかったら話してみてよ」
CL「××で××で××」
CO「そうなんだ。。。」
CL「××も××で××」
CO「そっか。」
CL「××も××」
CO「どう?結構話せた?」
CL「うん。あらかた話せたと思う」
CO「よかった。ちょっと質問したいことがあるんだけど」
CL「なに?」
CO「これからどんな時間が持てると、◯◯さんの心の状態が良くなるんだろう」(ニーズ)
CL「え?」
CO「誰と何ができたら良くなりそう、とか、どこでどんな時間がとれたら、状態がよくなりそうとか、何が得られたら状態が良くなりそうとか」
CL「うーん。。。これまでよく頑張ってきたね、って言ってもらえたらよくなるかな」
CO「いいね。他には?」(網羅)
CL「あとは、仲良しの友達と温泉でも行って楽しめたら」
CO「いいね!あらためて何があるといい状態になりそう?」(再質問)
CL「やっぱりちょっと東京離れて、のんびりした時間を取ることかな」
CO「良さそうだね。そのためにまず◯◯さんができることはなんだろう?」
CL「どこに行きたいか決めて、友達のAちゃんに連絡してみる」

ニーズと行動

 「何が満たされたら、状態が良くなるんだろう」と問いかけて、ニーズに気づけたら、それを満たすために自分でできそうな行動を探して実行する。それを手助けするのです。

 対処療法であって、根本的な解決でないように見えるかもしれませんが、それでもいいのです。人間は心身の状態が良くなれば、発想が変わったり、役に立つ行動が取れるようになったりするものです。

 だからまずは心身の状態を良くするのに役立ちそうなもの(=満たされていないニーズ)を特定して、それを満たすわけです。

 問題の解決に向けて何をどうしたら良いかは、その後で考えてみればよいのです。

⑤自分の状態を変えようとするのをやめる

 「感情や思考は変えようとしないほうがよい」という考え方があります。感情を抑え込もうとすると、かえってその感情が強くなることってありますよね。そしてそれを何とかしようとしていてヘトヘトになってしまう。

 ヘトヘトになるだけで、良いことがないなら、感情と格闘するのをやめた方がいいのです。

 では格闘する代わりにどうしたらいいのでしょうか。ただその感情の存在を認めて、受け入れてあげるのです。これまた、もう一つの椅子を使うと便利です。例えば不安なら不安になっている自分がもう一つの椅子に座っていると仮定して、「あそこに不安がってる自分がいるな」と思うのです。

 そしてその自分に「不安になっててもいいよ。だって不安だもんね」などと声をかけて、不安でいることを許してあげるのです。その自分の存在を認め、変えようとせず、ただそこでそうさせてあげるのです。

 その上で、未来に向けて、自分がやりたいと思うことや、やったほうがいいと思うことに、ほんの少しだけでもいいから取り組むのです。

 この組み合わせが大切です。感情(もしくは思考)を変えようとしないで受け入れる。その上で、少しでいいから意味があると思えることに取り組む。

 この二つが組み合わさると、自分のエネルギーを、やる価値があることへの行動に振り分けられます。そして行動をとることよって、少しずつ変化が生まれてくるのです。

 心の問題と格闘するのをやめて、生活上の課題(仕事や家庭のこと)に取り組んで、それを前に進めていくのです。こうすることで少なくとも取り巻く状況は少しずつ変わってきますし、それとともに心の状態が変わってくることも少なくありません。

⑥コーチングでOK

 この考えにコーチングを組み合わせたらいいわけです。自分の心の状態は受け入れ、許して、そして望む未来に向かって行動をとるように手助けするのです。

 この時にポイントになるのは、とにかく目標は小さなものにするのです。むしろ短期間で簡単にクリアできるような目標でいいのです。とにかく「できた!」「まずは一歩踏み出せた!」と思えるような状況をつくるのです。

 コーチは目標を大きくさせがちなので、気をつけてください。相手が弱っていたり、不安定なときは、小さなゴールの達成を重ねていくことで、効力感を少しずつ養っていくのです。

 クライアントが無理しがちなタイプなときもありますが、無理をさせずに小さなことでもできたことに意識を向けるのです。リハビリのようなものですね。そのように取り組んでいくことで心の状態も安定しやすくなってくると思います

⑦継続的支援

 とは言え、もちろん波もあります。だからこそ、可能なら継続的に関わってあげたら良いのです。週に1回でも2週に一回でも短時間でもいいから話をきいて、相手を勇気づけ「自分を受け入れたり、癒すことための行動」と「望む未来に進めるための行動」をとり続けることを手助けするのです。

 クライアントがカウンセリングを受ける必要があるなら、カウンセラーを探してもらって受けて貰えばいいわけです。でもそれとは別に「自分の状態を良くする、少なくとも悪くしない」ようにできることや、少しずつ自分の生活の課題を前進させることは役に立つはずです。もしかしたらそうやって取り組んでいるうちに、心の悩みからも少しずつ自由になることもあるかもしれません。

 コーチとしてできることの中でも相手に役立つことはあると思います。参考にしてみてください

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