「お父さんとなんか合わない」を目的論でリフレーミング(後編)

 クライアントはアラサー女性。両親の離婚で子どもの頃から別に暮らしているお父さんともっと話がしたいが、相手が自由人すぎてどう関わったらいいかわからないと言います。そして「お父さんのことをあまり知らないことは、あなたにとってどんな意味があるの?」との質問を受けて

あらすじ

 続きです。

宮越「なんか、お父さんのことあんまり知らないまんま、ここまで来ちゃたってことは、Aちゃんにとってどんな意味がある?」
CL「うーん…」
宮越「感情でもいい。なんか寂しいとか、空白感があるとかでもいいし、どんなことでもいいんだけど。お父さんとどう接していいか分かんない状態になっちゃってるとかでもいいし、どうなんだろう?」
CL「あ、そうですね。1つは、そうやって会った時に何を話していいか分からないこととか、その言ってることに、言われてることに対して理解ができないって、自分で思っちゃったりとか。」
宮越「理解ができないって自分で思っちゃうね。で、理解できないとコミュニケーションとるのもつらいもんね。ね」

お父さんのことを知らないから

 「お父さんのこと知らないから何なの?何が起こっているの?」

 とコーチは尋ねているわけです。クライアントの答えは

 「会って話しても、言ってることを理解できないだろう、って自分で思っちゃってる」

 というものでした。クライアントは理解し合いたいんです。だって理解し合うことを望んでいない人は「言っても理解できないだろう」なんて言わない。

 そしてクライアントは「本来は理解し合える」と思っているわけです。そう思っているからこそ「理解できないだろうって自分で思っちゃってる」と言っているわけです。

 僕らコーチは、クライアントの願いを知りたいと思っているわけですし、その実現方法が知りたいと思っているわけだから、上のような聴き方をしているわけです。 

 だからクライアント本人に直接確認してみました。

宮越「そっか、本当はお父さんのことをもっと理解できたらとか、いいコミュニケーションとれたらいいってことですよね」
CL「はい」
宮越「だから、そのために何かもっと知りたいと思ってるってことですよね。。。。そういうことなんだよね。。。」

確認

 確認が必要なら、こうやってきいてみればいいわけです。コーチがそうすることで、クライアントは自分の気持ちを確認することになるのです。

 目的論リフレーミングと言いましたが「何が目的なのか?」という目的フレーム(目的メガネ)で相手のこと話を聴いてみたいということなのです。

 だから、相手の話が何であれ、その奥にある「やりたい!」「ほしい!」「守りたい!」「大事にしたい!」「なりたい!」もしくは「避けたい!」「〜はいやだ!」「〜にはなりたくない!」などにアンテナを立てて聴いているのです。

 そしてコーチはそれに気がついたら「〜がしたいってことなのかな?」とか「〜は避けたいってことなのかな?」などと、目的に一緒に迫って行く関わりをするわけです。

 コーチがそんな風に「何を望んでいるのか知りたい!」という意識で関わっているから、クライアントの中にある「望み」がどんどん炙り出されて行くのです。

 だから当初は混乱していたクライアントも、短時間で「お父さんのことをもっと理解したい自分」に気づいて、受け入れていくわけです。

 前編で「お父さんがどう生きてきたとか、どうしていきたいのかとかを話したい」というクライアントに対して僕は「コーチですね!」と投げかけました。これもちょっとした視点の切り替えですね。

 別に僕はクライアント(Aちゃん)に「お父さんのコーチになって欲しい」わけではありません。ただAちゃんはプロコーチですから「コーチとしてお父さんを見てみること」ができるはずです。だから、それをしてみながら、本当はお父さんとどう関わりたいのかを考える補助線にしてもらいたかったわけです。

 これからお父さんとどうして行くのがいいか?それはまだわからないとしても、「いまお父さんとどう関わりたいのか?」「それはどうしてか?」そんなことを一緒に考えてみたいのです。

宮越「もし、お父さんのことが少しでも多く分かって、こういう言い方がね。少しでも多く分かって、で、お父さんともうちょっとスムーズにコミュニケーションとれるようになったらそれはAちゃんにとってどんな意味があるんですか?」
CL「そうですね。一つは、こう自分自身も自信が持てそうだし、コーチとしても自信が持てると思います」

お父さんを理解できる意味

 コーチは「お父さんを理解することの意味(目的)は何か?」と問いかけました。

 クライアントの答えは「自信が持てそう」というものですね。それはそうだよね。自分の親とのことをどうしたらいいか分からなかったのが、相手のことが理解できたら、落ち着くし自信にもなるよね。逆に言うと、親とうまくコミュニケーションを取れないことで自信を失っていたわけですね。

 とは言えこれはこちらの解釈ですし、こちらの解釈を押し付けるよりも、クライアント自身で納得のいく解釈を言語化したほうが良いわけです。ですから質問します

宮越「自分自身に対して自信が持てるってどういうことですか?」
CL「なんでしょうね。今、口から勝手に出たんですよ。」
宮越「うん。ちょっと想像してみて。どうして自分自身に自信が持てるんだろう。お父さんとそんなコミュニケーションがとれたらまず、どんな気持ちになりそうですか?
CL「あ、よかったな~とか。」
宮越「よかったな~。どうして、よかったと思うんです?
CL「うーん…そうですね…なんか多分、ずっと、こう、切り離してたんですよ。考えなくて済むというか人生からというか…それで別に生きていけるしいけると。なんでしょうね。なんか、あ~、なんだろう……なんかそういう誰か一人の存在をなかったことにしてる。一人の人間をなかったことにする自分ていうか。すごい自分でも責めてたのかもしれない。」

自信について

 無意識で言ったことだと言うクライアントにコーチは質問を重ねます。このようなやり方も覚えておいてください。

 「コミュニケーションとれたらどんな気持ちになる?」→「よかったなと思う」→「どうしてよかったなと思うんだろう?」→「自分を責めなくても良くなるから」

 不思議なことですが、このように、ほんの少しだけでも段階的に質問することで、答えが出てきたりするのです。

 さて次に進みます。このときは短時間で行う予定のデモンストレーションでしたので、コーチは少し急いでいます。

宮越「もし少しでも分かり合えたら、そう責めてた自分から少し楽になれて、よかったな~ってそういう感じ?」
CL「はい」
宮越「では自信が持てるかもしれませんよね」
CL「はい」
宮越「うん、OK。で、今そのこと気が付いてるよね。それでは少し過去の方を見てもらってね、一回会って話聴いてみようとがんばった自分がいますね?」
CL「はい。」
宮越「で、自分のがんばりってどんなふうに見えます?」
CL「うーん…そうですね。こう、30年以上の中での1番チャレンジをしたのかなって。」

効力感

  方向性が明らかになってきたので、一度クライアントの効力感をあげたいわけです。なので近過去に意識を向けて、自分がどう見えるかききました。

 このようにみてみたら、人生で一番のチャレンジだったのかも知れないと言うのです。僕の心は動きました。

宮越「いいよね~。そんな自分のチャレンジになんて言ってあげたいですか?勇気づけするとしたら」
CL「う~ん…まあ。。。。よくがんばったな~って。」
宮越「よくがんばったなって言ってあげたいよね。うん、OK。で、ちょっとね、こっち側(過去)に戻って、その時のがんばった自分がいるね」
CL「はい」
宮越「本当に望んでたコミュニケ―ションはとれなかったかもしれないけど、それでも30年以上の中で1番がんばったことに対して、『よくがんばったな~』って今の自分が言っているのを聴いてあげてください。ねえ、がんばったよね」
CL「はい」

勇気づけ

 自分自身に勇気づけをしてもらい、その勇気づけを過去の自分に戻って聴いてもらっています。そして、せっかくこのようにタイムラインも移動してもらったので、今度は逆に未来の側に動いてもらいました

宮越「うん。OK、じゃあ、ちょっとこっち側(未来)に来てみようか。5年後か10年後か分かんないけど、どんなコーチになったりとか。え~、どんな人として何がができてたらいいな、って。。何かありますか?」
CL「あ~、そうですね。地元でいっぱいコーチを輩出とか、トレーナー育てたりとかりあの~、自分のコーチングを広めたい。」
宮越「その時の自分は、なんか、もっともっと本当にいろんな人のいろんな部分を受け入れたりとか、いろんな人応援したりとか、自分に自信が持てていますよね、きっとね」
CL「はい」

クライアントの夢

 素晴らしい夢ですね。僕はサラッと「今回のように、いろんな人を受け入れたり、応援したりすることが未来に役に立ったのですね!」的なことを投げかけています。これはちょっとずるいやり方ですね。

ちなみにこの後、彼女は研修会社を作り、自分が伝えたかったことを伝え続けています。本当に素晴らしいです

宮越「ね、OK。未来の自分からね、あの2014年12月の自分を見てあげて欲しいんですよ。これまでもがんばってきたし、またこれからもがんばろうと思ってる自分。お父さんのことも諦めてない自分ですよね。いろいろなことあるけどね、はい。どんなふうに見えますか?」
CL「あ~、そうですね。あの時点から、ちょっとこう、自分が変わりだしたと。」

未来から振り返る

 素晴らしいです。クライアントはすでに未来は変わり始めたと言います。あのときの自分が動かし始めたのだと

 ここからは行動についてかんがえます。行動することによって新しい考え方が実際に自分のものになるからです。行動に移さない考えは消えてしまいます。

宮越「そっか~。で、無理のない範囲でね、どんなこと始めたりとか、何するのがよさそうですか?」
CL「う~ん。」
宮越「どうやってもう少し進めていくんだろうね。このチャレンジを。」
CL「そうですねあの~、あそこで会ってからちょっと電話がたまにかかってきて、取れないと、その場で取れない時はもう、そのままにしちゃう。そんなことがあるんですけど、折り返す」
宮越「うん、折り返す、いいね(笑)もし、なんか少し、少しずつだよ、そんなこと始めてたら、2015年、来年1年ぐらいの間で少しだけどんなことが起こっていきそうですか?自分に、お父さんに、またはコーチとして、クライアントさんにどんなことが起こりそうですか?」
CL「なんか、父とはちょっとずつ会うたびになんかこう会話ができることが増えていきそうだし、こう、自分自身もクライアントさんと良いセッションができる」

何から始めるか?1

 折り返し電話という行動が出てきたので、まずはそれをするとどうなるか未来予測をしてもらいます。

 予測していいことが起こりそうだと、クライアントの同期が高まるからです。

 しかしもう一つやりたいことがあります。折り返し電話だと、向こうがかけてきた時しか行動できないので、より主体的にできる行動にしたいのです。

宮越「あら!いいですね~いいですね~!OK、OK。じゃあ、そんな未来に向かって。。。電話を。。。でも電話かかってくるの待ってて、わざわざ折り返すって変だから(笑)なんか自分からできること、別にお父さんに電話しなくてもいいけど、どんなことでも良いですけど、なんか自分でできることってなんだろう?」
CL「そうですね~。その、1ヶ月ぐらいか前電話をもらってたのをまだ折り返してなくって、ずっと迷ってたんですけど電話してみようかな~。」

何から始めるか?2

 ということでクライアントは行動を選択してくれました。ですからさらに

宮越「かけてみる?うん、OK。じゃあ、かけてみようか。じゃあ、かけてみようか。で、かけて、ちょっとでもこんなこと言えたらいいなとか、こんな時間過ごせたらいいなってなんですか?」
CL「電話遅くなってごめんって。」
宮越「あ~!そっかそっか、電話遅くなってごめんって、ね。どうして電話くれたのか聴いてみてもいいかもしれないね。」
CL「そうですね!」

何から始めるか?3

 中身まで考えておいたら、ハードル低く電話できるわけです。確実に行動してもらいたいので、すこし粘ってみたわけです


宮越「OK。ということです。拍手お願いします。では感想をどうぞ。」
CL「えっと~、そうですね。あの~、自分がしたかったから、父と話せたはずなんだけど、改めて未来の存在から言われたときに自分の中に、こう、響いて入ってくる感じが、ちょっとびっくりで。。。自分の中でチャレンジしたのに、ずっと、それすら否定してて、会いに行ったけど、でも、どうせあの人ダメだしとか、どうせ自分には出来ないって思ってたのが、こう、すごく、変わりました」

感想

 ということでした。コーチングをすることは素晴らしいリフレーミングになりますね。無理やり相手を変えるのでは、相手の話を聞きながらコーチングを進めて行く。そして実際に行動に繋げてもらう。

 そのことでクライアントは新しい考え方、行動パターンを手に入れ、素晴らしい未来を生きることになるのです。

 おしまい

僕たちと人生を変えるコーチングを手に入れたい人は


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