教育の指針として持つと良い4つのS(前編)

  僕自身は2020年から子育てをしている新米パパです。そろそろ4年。現在、上の子が3歳で下の子は1歳です。

 とはいえ、アドラー心理学やコーチングを20年近くも実践し、教えることを仕事にしているので、様々な人から「アドラー心理学やコーチングを学んでから子育て出来ていいですね」などと言われます。

 もちろん何も知らなかった自分が子育てすることと比較したら、遥かに良いと思います。とは言え、それらは指針に過ぎませんから、実践の場面では

「これ、どうしたらいいんだ?」

 と思うようなシーンも少なくありませんし、考えることなく脊髄反射で反応して後から反省することもあります。

 そんな僕ですが、子どもへの関わりの指針として持てて良かったなと思うものを、1つ紹介したいと思います。それが教育の4Sです。

 これはアドラー心理学で子どもを教育するときの指針で、4つのS「尊敬」「責任」「社会性」「生活力」を身につけてもらうように関わろうと言うものです

尊敬
責任
社会性
生活力

教育の4S

 アドラー心理学では人を「性善説」でも「性悪説」でも考えません。

 「人はどうとでもなる」

 と言うのがアドラー心理学の考えですので、子どもが社会の中で、自立協力して生きていくことができるように、教育していく必要があるのです。

 その際の指針が4Sです。では1項目ずつ見ていきましょう

 

①尊敬


 
 人は一人一人はかけがえがない。一人一人に価値がある。そんな風に思って、誰に対しても敬意を持って関わることができる。1人の人間として、相手を大切にできる。それが尊敬です。

 相手の考えや、判断を大切にし、それを大切にすることができる。相手が自分の課題に取り組めるように、相手の課題に踏み込まず、必要なら手助けする。

 何か一緒に行う際には、相手の意見も聞いた上で、何がともに目指す目標かを一緒に決め、協力し合いながらゴールを目指す。そんな態度も、相手への尊敬をベースにしていますね。 

 アドラー心理学では一人一人には等しく価値があるし、それぞれが大切にしている価値観にも優劣はない(価値相対主義)という立場をとっています。

 だから年齢も能力も社会的役割も関係なく、皆に価値があるので、ヨコの関係で誰とでも関わるのを良しとするわけです。

 このような態度は、親の子どもに対する関わりを通じて、育まれていきますね。だからどうしたらいいかと言うと、

「友達にするように、子どもに関わる」「友達にしないことはしない、友達に言わないことは言わない」

 などが分かりやすい指針でしょうか

 結構、一般的な親子関係とは違いますね。

 友達には
 「早くお風呂に入りなさい」「ご飯中に遊ぶな」「ちゃんと勉強しなさい」とか言わないですもんね。

 「先にお風呂入ってもらえるた助かるんだけど(お願いできる?)」とか

 「早くご飯食べて、その後◯◯したいんだけど、どうかな?」とか

 「余計なお世話かも知れないけど、この授業単位取れそう?結構難しいって聞いたよ。なんか手伝えることあったら言ってね」とか

 友達に言うなら相手に対する配慮がありますよね。親しき仲にも礼儀ありです

 そして、よく子供の話を聴く。子どもの考えや意見を知ろうとする。尊重する。一緒に決める必要があることは一緒に決める。

 子どもを信じる。子どもに任せる。頼まれてないことをしない。指示命令をしない。して欲しいことは説明するしお願いする。ちゃんと感謝を伝える。

 子どもの前で他人の悪口を言わない。子どもの友だちや、周りにいる人たちのことも大切にする。

 もちろん自分のことも卑下しない。よく見せようともしない。等身大の自分で生きる。自分の良いところを認める。自分を大切にする。自分を励ます、勇気づける。自分の成長を喜ぶ。

 書いていくとキリがありませんが、自分にも他人にも尊敬の念を持って接する大人の姿が子どもは尊敬というものを学ぶのではないでしょうか

 そして子ども自身も、自分のことも、他人のことも同じように大切にして、敬意を持って接することができるようになっていくのではないでしょうか。そのことを通じて、子どもは社会の中で誰とでもと良い関係を築いていけるようになるのだと思います。

 「人を大切にしなさい」と言っても具体的にどうしたら良いかは子どもには伝わりません。そればかりか「しなさい」と命令形で言われるような関係が存在すること、そして自分は下の存在として扱われていることが伝わるわけです

 だから、自他を尊敬して生きる姿勢を見てもらう、ことを通じて、そのことの尊さや素晴らしさを知ってもらいたいわけです。

 うちの3歳の息子が「お父ちゃんの友達に会いたい」というので、コーチングのクラスの昼休みに遊びにきてもらったことがあります。

 その翌日、息子は自分も「勉強したい」と言い始めました。どういうことなのか訊ねたら

「お父ちゃんとお父ちゃんの友達は、楽しく勉強してたから、一緒に勉強したい」というのです。

 本当にありがたいことだな、と思いました。僕たち大人の姿を見て、一緒に楽しそうに勉強してるから自分もそこに混じりたい、と言ってくれること。

 僕と参加者の人たちの関係。そしてスクール参加者の人たちも3歳の息子をフラットに歓迎してくれたこと。息子の話を熱心に聴いて、ヨコの関係で関わってくれたからだと思います

 まずはこの「尊敬」というものを学び自分のものとしてもらうのが最初です。


②責任

 次は責任です。アドラー心理学では、人は自分の人生について自己決定する権利を持っているし、自己決定して生きている存在であると考えています。

 そして自己決定しているのだから、当然のこととして、自分で決めたことの結果に対して責任を持っているのです。

 だから別に早く寝なくてもいい。寝なかった結果、翌朝起きることができない場合は、そのことを引き受けて、必要な対処を自分ですれば良いのです。

 そのようなことを通じて、どんなときには早く寝るのか、起きるのか、自分で決めて管理したら良いわけです。

 多少は手痛い目に遭うこともあるかもしれませんが、親は先回りして問題となりそうなことを潰して回るのではなく、子どもがさまざまな体験(行動とその結末)から学び、次の行動に活かしていくことをサポートしたいのです。

 このことは「自然の結末からの学習」と呼んだりしています。自分のとった行動が、自然と招いた結末から、どう生きると何が起きるかを学んでもらうということです。

 結末からの学習については、以下の記事を参考にどうぞ

 このように、大人から信頼されて、自分で考え自分で決めて行動する。そしてその結果を自分で引き受ける体験をたくさんしてもらいたいのです。そのことを通じて、自分の人生を自分で生きる自信がつくのだと思いますし、人生を切り開くための経験や見識が蓄積されるのだと思います。

 これまた「責任を持ちなさい!」と言われても、どうしたらいいかわからないでしょうから、いつでも尊重されて、自分の意思で行動し、その結果起こったことを引き受ける体験をすることをサポートされる必要があるのです。

 大人がすることは簡単です。

体験学習サイクルの質問

  上図の体験学習サイクルの質問などを使ってみるのはどうでしょう?

「どうなったらいいと思う?」(目的)
「じゃあ、そこに向けて何をしてみたい?」(行動)
「それをしたらどうなりそう?」(予測)
「実際にやってみたら何が起こった?」(結果)
「そこから何を学んだ?」(学習)
「では、次は何をしてみたい?」(行動)

体験学習サイクルの質問

 のような質問を子どもにしながら、子どもが自分で目的を意識しながら行動し、結果を引き受けて、そこから学ぶのを支援するのです。

 指示命令したり、やり方を教えたり、放置するのではなく、子どもが考え、自ら行動し、その結果を受けて、次の行動をしていくのを勇気づけること。そのような関わりから、子どもは自分で決めて、自分でその結果を引き受けることを当たり前のことしていくのです。


3つの勇気

 このことと関連して「持てるとよい3つの勇気」という話があります

不完全である勇気
失敗する勇気
過ちを認める勇気

3つの勇気

 最初は「不完全である勇気」です。自分が不完全であることを認める勇気ですね。多くの人は「もっと完全な自分でありたい」と思うかもしれませんが、人は完全完璧になることは難しく、他人と比較すれば劣っているところは必ずあるでしょうし、ミスすることも勘違いすることもなくすことはできません。そして何より、いくつになってもまだまだ成長の余地があるのが私たちです。

 だから自分が「不完全」であることを認め、その自分を成長させるように自分に関わってあげること。そして「不完全」でありながらも、自分にもやれることや、他者に貢献できることがあることに意識を向けて、持っているものを使って生きることが大切だと思うのです。

 自分に足りない部分は、誰かに助けて貰えば良いのです。そして他者の足りない部分で、自分が助けられるものがあるなら、相手の求めに応じて助ければ良いのです。こうやって競争ではなく、協力の原理で生きることが、自分を活かし、幸せで生産的な社会を作ることにつながるのではないでしょうか。

 また、あなたが「自分は完全だ!」と思っているとしたら、もしかしたら狭い世界に生きている可能性があります。狭い世界に生きていると、そこではうまくやっていける可能性がありますから、自分が完全・完璧であるように感じる可能性があるわけです。

 そんな場合、アドラーは「広い世界に出ること」を推奨します。広い世界に出てみると、まだまだ不完全であること(自分には成長の余地があること)に気づくわけです。

 次に「失敗する勇気」です。まずは大人である私たちが失敗する勇気を持てると良いですね。完全に予測できてコントロールできる世界にいないから、私たちは失敗するのです。失敗は現実に生きている証拠ですし、チャレンジしたり学んでいる証拠です。

 失敗をしてはいけないというルールにすると私たちは、極めて保守的な行動しかできなくなります。ぜひ失敗した自分にも、失敗した他人にもエールを送りましょう。チャレンジしたから失敗したのです。

 失敗とは、想定外の世界に生きている証拠です。想定通りにいかないから失敗しているわけで、その現実に向き合うことで私たちは学習成長できるのです。

 失敗こそが最良の教師である

アルフレッド・アドラー

 誰もが失敗から学ぶ権利を持っています。まずは私たちがそれを行使し、子どもたちも当たり前のように行使できる状況を作っていきましょう。

 最後に「過ちを認める勇気」です。過ちを認めることも勇気がいりますが、過ちがあるならそれを認めてやり直せばいいのです。アドラー心理学では、過ちがあったなら、それを認めて、次の3つをすると良いとしています

①現状回復
②再発防止
③謝罪

過ちへの対応

 これは過ちとその結果に対する責任の取り方ですね。まずは損なわれたものがあるなら可能な限り「原状回復」を行うことです。そして「再発防止」の策や仕組みを考えて実行に移すこと。さらに必要に応じて相手に「謝罪」することです。

 このような行動をとった上で、不完全である自分を受け入れた上で、失敗する勇気をもってチャレンジし、過ちがあれば認め対応する。そのようにして成長しながら、望む世界を手に入れていくのです。

 アドラー心理学ではこのように生きていくことを推奨しています。そしてそのための基礎として今回の記事で取り上げた①尊敬②責任というものを、子どものうちから身につける必要があると考えているのです。

 次回の記事では4つのSのうち③社会性④生活力を取り上げていきます。子育てのガイドラインとして、自分自身の課題を振り返るフレームワークとして活用いただけたらと思います。

 つづく

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