CBC㉜胎内記憶と母とのつながり
コーチングカウンセリングをしていると、クライアントから過去の出来事について聴くことも多い。
時には「本当にこんな出来事があったのだろうか?」と思うような信じがたい話をきくこともある
それがクライアントにとって幸せな記憶ならもちろんそれでよい。真実であろうとなかろうと、幸せな記憶も持っていることは人生の助けになるから。
けれども悲しい思い出、残念な記憶である場合は、これがいっそ勘違いや虚偽であったらいいのになと思うようなときもある。
しかし冷静に考えてみれば、実際には全ての記憶は真実ではないのだ。記憶されたエピソードは、実際の出来事の一側面に過ぎず、思い込みや勘違い、そしてたくさんの見落としがある不完全なものだ
いわばクライアントがつくった物語
そして、
そこにどれくらいの真実が含まれていようがそうでなかろうが、そんなことは関係なく、クライアントの採用した物語がクライアントの人生に影響をしている
だから僕たちは、クライアントと一緒にその物語に飛び込み。さまざまな視点からその物語を再体験し、新しい解釈の可能性を探す
クライアントの内的世界は、これまでに体験したことでできているわけだから、物語の解釈が変わることでクライアントの住む世界は変化していく。
そうやって、僕たちはクライアントと世界を変えていく
胎内記憶に苦しむ女性
アラフォー女性からの職場でのコミュニケーションに関する相談でした
クライアントは医療系の職場で働いているとのことでしたが、感情的になったり意地になって、自分でなんとかしようとしてしまって自滅するのをなんとかしたいと言います。とくに男性スタッフが相手だと、そうなる傾向が強いというのです
何が起こっているんでしょうか。
その疑問を直接ぶつけてみることにしました。声のトーンをさげて、ゆっくりと質問します
意地になって何でも自分でやろうする。その行動を作っているエネルギーにアクセスできました。
フォーカシングのようなつもりで、耳を傾けてもらうと、
「舐めるんじゃねぇ」「わからせてやらないと」
というような声が聞こえてきました。
過去に舐められた体験や理解されなかった体験があった。もうそれを繰り返さないと決めた。と言っているように聴こえます
そして、怒りの奥底にあるのは、くやしさ、そして悲しさであると
一気にその原体験まで遡ってみようと思いました
原体験=その人の人格形成や行動の方向づけに、知らず知らず影響を及ぼしている幼少期の体験(精選版日本国語大辞典より)
今回はNLPのリインプリント(再刷り込み)というワークでやるような、感情をキーにしてタイムラインを遡っていくアプローチでいきます。どんなものか見てみてください
実際を見てみると簡単ですね。その感情を感じた出来事をタイムラインを遡りながら発見していって、一番最初の体験に辿り着こうとしているわけです。
そしてたどり着いた最初の体験が原体験です。その体験の中で、クライアントは「意地になって自分でやりきろうとする」「舐められないようにする」ような行動をとることを決めた可能性があるのです。
だから、その体験にまで、戻って、その体験をさまざまな観点から再体験することで、新たな解釈を得たいのです。
そうすることで、現在の行動パターンを緩めたり、新しい行動パターンを作っていくことに繋げたいと考えているわけです
さぁ、いつごろのどんな体験が待っているのでしょうか
この胎内記憶が事実かどうかは分かりません。仮に事実でなかったとして、どうやって作られた記憶なのかも分かりません。
でも、そんなことは関係ないんです。クライアントの中にはそのような記憶がある。それはクライアントにとっての真実なわけです。クライアントはこの物語の中に生きてきたわけです
それにしても。。。悲しい物語だなと思います。
このときあなたはどうしよう(生きよう)と決めたの?
というのが原体験での決断を明らかにする質問です。
この体験の中で、答えのような決断をした。そのことが、その後の人生の行動原理になっているのです。
さて、物語の基本構造がわかったので、ここからは少しずつ視点を広げる作業に入ります
お母さんがかわいそう
そんな感じもあるかな?とコーチは問いかけています。
なんのためでしょうか
もしこの答えがイエスなら、「子どもにかわいそうと言われたら、お母さんはなんて言いそう」みたいな繋げ方をしようとしているわけです。
その場合お母さんが「そうよ。私はかわいそうで惨めで情けないわ。女の子なんか身籠るんじゃなかった」という確率は低いと踏んでいるのです。むしろ「気にしないで、お母さんは大丈夫。。だって」などとつながる可能性が高いと、これまでのやり取りも踏まえて、予測していました
ところがクライアントは「自分で選んだわけじゃないのに」と言いました。そこで僕は、あるアイディアを思いついたので、そちらに方向転換しました
それが「お母さんは性別で選んでない。お母さんが選んだのは何?」という質問でした。
自分の子どもを産むこと
と答えながらクライアントは泣き始めました。。。この物語が含んでいた新たな側面に出会った瞬間です。
こんなふうにクライアントの内的世界は描き直されていくのです
なので、この路線ですすみます
このようにお母さんのセリフを引き出して、子どもの自分の安心感を生み出し、そして思い切って
もう誰かに自分の能力を証明するために生きなくてもいい
と投げかけてみました
「そうですね」と言って、クライアントは文字通り肩を撫で下ろし、深い呼吸をしました
プロセスを進めます
再決断といいますが、新しい決断をしてもらうプロセスに入りました。何も杞憂はなかったのですから、それをベースに生き方を変えようと言っているわけです。
しかも、せっかくなので、お母さんに宣言しよう、と。
ここはコーチの工夫ですね。
そしていくつかのアイディアを出してもらっている中で、クライアントが
「あぁ!優しい気持ちで生きる。。。。自分にも他人にも。。。」
と言いました。この「あぁ!」の瞬間に洞察が訪れたわけです。ですからそこを「今何が起きた?」で深掘りしました。その結果は
「お母さんから受けついたのがそれだから」
という、とても素敵な答えでした。
セッションは終盤へと向かっています
新しくつくったメガネで今の職場を見てみる体験です。生まれ変わった子どもから、現在の自分へのメッセージです。
頼られてることを受け入れよう。助け合ったらもっと信頼し合えるよ。
そんなメッセージでした。まずはタイムラインを現在の場所まで戻ってもらいました。
新しい認知が生まれたら、その認知に基づいて行動する。
その行動によって、新しい認知は実態のあるものになっていくのです。
新しい認知から行動を作り、行動によって新しい認知が強化されるというループです。
ここまでで、基本的に必要なことは終わりました。
職場での気になる行動パターンから、原体験に戻って再解釈と再決断をしました。そして望む未来につながるような、職場での新たな行動パターンを作り出したのです。
ここまでで、もう十分ですが、最後に2つおまけをつけました
一つはおじさんについての処理。親戚ですから、過度に悪者にせずに済むならそうしたかったのです。
だから、おじさんなりの事情を想像して言葉にしてもらいました。みんな自分の世界の中で一生懸命生きているのです。それがこちらにとって余計なお世話になることもありますが。。。
そして2つ目のおまけは、今日のことを忘れないためのお守りを見つけることでした。あたらしい自分、あたらしい生き方を思いだせさせてくれるアンカー(錨)です。
それは僕の想像を超えたとても素敵なお守りになりました
原体験が書き換わることにより、世界をみるメガネが切り替われば、人生は変わります。クライアントの人生のために、メガネの調節ができるコーチでいたいなと思っています
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