CBC㉜胎内記憶と母とのつながり

コーチングカウンセリングをしていると、クライアントから過去の出来事について聴くことも多い。

時には「本当にこんな出来事があったのだろうか?」と思うような信じがたい話をきくこともある

それがクライアントにとって幸せな記憶ならもちろんそれでよい。真実であろうとなかろうと、幸せな記憶も持っていることは人生の助けになるから。

けれども悲しい思い出、残念な記憶である場合は、これがいっそ勘違いや虚偽であったらいいのになと思うようなときもある。

しかし冷静に考えてみれば、実際には全ての記憶は真実ではないのだ。記憶されたエピソードは、実際の出来事の一側面に過ぎず、思い込みや勘違い、そしてたくさんの見落としがある不完全なものだ

いわばクライアントがつくった物語

そして、

そこにどれくらいの真実が含まれていようがそうでなかろうが、そんなことは関係なく、クライアントの採用した物語がクライアントの人生に影響をしている

だから僕たちは、クライアントと一緒にその物語に飛び込み。さまざまな視点からその物語を再体験し、新しい解釈の可能性を探す

クライアントの内的世界は、これまでに体験したことでできているわけだから、物語の解釈が変わることでクライアントの住む世界は変化していく。

そうやって、僕たちはクライアントと世界を変えていく


胎内記憶に苦しむ女性

アラフォー女性からの職場でのコミュニケーションに関する相談でした

CO 今日はどんなことを話せたらいいかな
CL 職場でもう少し、穏やかに過ごせたらいいと思うんだけど。。。
CO どういうこと?(具体化)
CL とても忙しい職場だから仕方ない側面もあるけど、焦ったり、感情的になってしまうことがあって
CO うん
CL わたしは感情的になりやすいタイプだし。。。それで意地になって何でもやろうとして自滅する傾向があるんです
CO どういうこと?(具体化)
CL 。。。。人から馬鹿にされるのが嫌なのか、全部自分でやり切ろうとするし。。。
CO うん
CL 。。。。とくに、相手が男の人だと、負けたくないみたいな気持ちになって意地を張ったり、感情的になったりする傾向があります

オープニング

クライアントは医療系の職場で働いているとのことでしたが、感情的になったり意地になって、自分でなんとかしようとしてしまって自滅するのをなんとかしたいと言います。とくに男性スタッフが相手だと、そうなる傾向が強いというのです

何が起こっているんでしょうか。

その疑問を直接ぶつけてみることにしました。声のトーンをさげて、ゆっくりと質問します

CO そうなんだ。そのとき。。。あなたの身体の内側では。。。。何が起こってるだろう。。。。
CL うーん。止められない感じ。。。強いエネルギー
CO 止められない。。その感じは、ちょっと耳を傾けてみると、なんて言ってそう
CL。。。。。
CO そのまま耳を傾けてて。。。なんて言ってそうだろう。。。
CL 。。。舐めるんじゃねぇとか、わからせてやらないと。。。。とか。。。怒ってる。。。。
CO 強い怒り。。。。その奥には何がありそうかな。。。。。
CL くやしい。。。。。。ん?。。。悲しい。。。。なんだろう

エネルギーにアクセス

意地になって何でも自分でやろうする。その行動を作っているエネルギーにアクセスできました。

フォーカシングのようなつもりで、耳を傾けてもらうと、
「舐めるんじゃねぇ」「わからせてやらないと」

というような声が聞こえてきました。

過去に舐められた体験や理解されなかった体験があった。もうそれを繰り返さないと決めた。と言っているように聴こえます

そして、怒りの奥底にあるのは、くやしさ、そして悲しさであると

一気にその原体験まで遡ってみようと思いました

原体験=その人の人格形成や行動の方向づけに、知らず知らず影響を及ぼしている幼少期の体験(精選版日本国語大辞典より)

今回はNLPのリインプリント(再刷り込み)というワークでやるような、感情をキーにしてタイムラインを遡っていくアプローチでいきます。どんなものか見てみてください

CO オーケー。ではその感情が感じられる場所に手を当ててみて。。。
CL はい。。。
CO その感情をしっかり感じながら、タイムラインを遡ります。。。。この感情を一番最近感じたのはいつ?
CL 先週の会議のときに。。
CO オーケー。さらに遡るよ。。。。会社でこれまで。。一番感じたのは。。。。。。無言で思い出します
CL 。。。。。。。
CO 学生時代に。。。この感情を強く感じた出来事。。。。。
CL 。。。。。。。
CO そう。。。。中学校。。。。。小学校。。。。。幼稚園や保育園。。。。ゆっくりと後ろに下がりながら。。。。最初にこの感情を感じたのは。。。。いつだろう。。。
CL 。。。。。。。

タイムラインを遡る

実際を見てみると簡単ですね。その感情を感じた出来事をタイムラインを遡りながら発見していって、一番最初の体験に辿り着こうとしているわけです。

そしてたどり着いた最初の体験が原体験です。その体験の中で、クライアントは「意地になって自分でやりきろうとする」「舐められないようにする」ような行動をとることを決めた可能性があるのです。

だから、その体験にまで、戻って、その体験をさまざまな観点から再体験することで、新たな解釈を得たいのです。

そうすることで、現在の行動パターンを緩めたり、新しい行動パターンを作っていくことに繋げたいと考えているわけです

さぁ、いつごろのどんな体験が待っているのでしょうか

CO よく思い出せなくても、なんとなく何歳くらいかなでも大丈夫だよ。。。。。。。
CL 。。。。。。。あの。。。。変なこと言っていいですか
CO はい
CL 生まれる前のイメージが出てきました。
CO あら。。。。どんなイメージだろう。。。。
CL 父の実家で。。。。おじさんから母が言われてます。。。。「今度こそ男の子だろうな」
CO 。。。。そっか。。。。お母さんは何と?
CL 「心配かけてすいません」
COあぁ。。。それをきいて。。。あなたは。。。
CL 。。。。悲しいし怒ってる。。。私は女だし。。。それをわかってるから。。。

原体験1

この胎内記憶が事実かどうかは分かりません。仮に事実でなかったとして、どうやって作られた記憶なのかも分かりません。

でも、そんなことは関係ないんです。クライアントの中にはそのような記憶がある。それはクライアントにとっての真実なわけです。クライアントはこの物語の中に生きてきたわけです

それにしても。。。悲しい物語だなと思います。

CO 悲しいし、怒ってる。。。。。このときあなたは、どうしようと決めたのかな?(決断)
CL こんなこと二度と言わせない。。。。私にもできるって。。。絶対にわからせてやる
CO 。。。。。。。。あぁ。。。
CL (涙)。。。。悔しい。。。。悲しい。。。

原体験2

このときあなたはどうしよう(生きよう)と決めたの?

というのが原体験での決断を明らかにする質問です。

この体験の中で、答えのような決断をした。そのことが、その後の人生の行動原理になっているのです。

さて、物語の基本構造がわかったので、ここからは少しずつ視点を広げる作業に入ります

CO お母さんがかわいそう。。。。。そんな感じもありそうかな?
CL 。。。。。。はい。。。。かわいそう。自分で選んだわけじゃないのに。。。。
CO お母さんは「性別」を選んだわけでない。。。。。ねぇ、お母さんが選んだのは何?
CL 。。。。。子どもを産むこと。。。自分の子どもを。。。。(涙)
CO ゆっくり呼吸をして。。。。少しずつ、気持ちが解けていくのを感じながら。。
CL 。。。。。

視点をずらす1

お母さんがかわいそう

そんな感じもあるかな?とコーチは問いかけています。

なんのためでしょうか

もしこの答えがイエスなら、「子どもにかわいそうと言われたら、お母さんはなんて言いそう」みたいな繋げ方をしようとしているわけです。

その場合お母さんが「そうよ。私はかわいそうで惨めで情けないわ。女の子なんか身籠るんじゃなかった」という確率は低いと踏んでいるのです。むしろ「気にしないで、お母さんは大丈夫。。だって」などとつながる可能性が高いと、これまでのやり取りも踏まえて、予測していました

ところがクライアントは「自分で選んだわけじゃないのに」と言いました。そこで僕は、あるアイディアを思いついたので、そちらに方向転換しました

それが「お母さんは性別で選んでない。お母さんが選んだのは何?」という質問でした。

自分の子どもを産むこと

と答えながらクライアントは泣き始めました。。。この物語が含んでいた新たな側面に出会った瞬間です。

こんなふうにクライアントの内的世界は描き直されていくのです

なので、この路線ですすみます

CO お母さん。ありがとう。悔しかったね。。。。。。あなたがそう言ったら、お母さんは何て言いそう?
CL 。。。。全然気にしてないから。。。あなたで良かったよ。お母さんは幸せ。。。(涙)
CO そっか(涙)。。。それをきいて、子どもの自分は、なんて言いそう?
CL (涙)。。。。良かった。。。。嬉しい。。。。安心した。。。。
CO そっか。もう誰かに自分の能力を証明するために生きなくてもいい。。。。
CL 。。。。。そうですね(脱力)

視点をずらす2

このようにお母さんのセリフを引き出して、子どもの自分の安心感を生み出し、そして思い切って

もう誰かに自分の能力を証明するために生きなくてもいい

と投げかけてみました

「そうですね」と言って、クライアントは文字通り肩を撫で下ろし、深い呼吸をしました

プロセスを進めます

CO じゃあ。。。代わりにどんな人生を生きるか、お母さんに教えてあげて
CL うーん。。。。肩の力抜いて生きるね
CO いいね。。。あとは?(網羅)
CL やりたいことやる。周りのことは気にしない。
CO うんうん。あとは?(網羅)
CL あぁ!優しい気持ちで生きる。。。。自分にも他人にも。。。
CO いま何が起きた?
CL お母さんから受け継いだのがそれだから
CO 言ってみてどう?
CL なんだかすごく平穏な感じです。。。。

再決断1

再決断といいますが、新しい決断をしてもらうプロセスに入りました。何も杞憂はなかったのですから、それをベースに生き方を変えようと言っているわけです。

しかも、せっかくなので、お母さんに宣言しよう、と。

ここはコーチの工夫ですね。

そしていくつかのアイディアを出してもらっている中で、クライアントが

「あぁ!優しい気持ちで生きる。。。。自分にも他人にも。。。」

と言いました。この「あぁ!」の瞬間に洞察が訪れたわけです。ですからそこを「今何が起きた?」で深掘りしました。その結果は

「お母さんから受けついたのがそれだから」

という、とても素敵な答えでした。

セッションは終盤へと向かっています

CO 良かった。。。。ではその平穏な呼吸を続けて。。。。
CL 。。。。。。。。
CO この自分は、大人になった自分に何て言ってあげたいだろう。
CL 。。。。あははは。そんなに頑張らなくていいよ。みんな仲間だから
CO そっか。そうなんだ!
CL 。。。みんなおんなじ目標に向かってる。だから信頼して相談して大丈夫だよ
CO いいね。。。あとは(網羅)
CL あなたも頼られてるよ(涙)。。。。だから大丈夫。
CO そうか。頼られてる!!!だから、どう生きよう!って言ってあげたい?
CL うん。だから。。。自分に優しくね。みんなで助け合って。
CO そうしたら?(順接)
CL もっと信頼できるようになる。。。。
CO 言ってみてどう?(反芻)
CL そうだと思います。
CO では気持ちよく伸びをしましょう。
CL あああああ

新しいメガネで見てみる1

新しくつくったメガネで今の職場を見てみる体験です。生まれ変わった子どもから、現在の自分へのメッセージです。

頼られてることを受け入れよう。助け合ったらもっと信頼し合えるよ。

そんなメッセージでした。まずはタイムラインを現在の場所まで戻ってもらいました。

CO 現代まで戻って、子どもの自分の話を聴きましょう。。。。。。。ねぇどうする?
CL はい。改めます(笑)
CO そっか(笑)。。。。具体的に何から始めてみようか。今週できそうなこと(行動)
CL 。。。。。そうですね◯◯の件についてA君に助けて欲しいって言ってみます
CO いいね。言ったらどうなりそう?(予測)
CL あああ。気になってたんですよ。手伝えることやります。って言ってくれそう(笑)
CO そっか。。。じゃあその先を想像して、未来はどんな風に変わっていきそう?(ゴールイメージ)
CL 。。私も穏やかで、だからチームのみんなも穏やかで。いいチームになりそう
CO いいね。そこからやってみる?新しい未来に向けて
CL はい!ありがとうございます。

新しい行動

新しい認知が生まれたら、その認知に基づいて行動する。

その行動によって、新しい認知は実態のあるものになっていくのです。

新しい認知から行動を作り、行動によって新しい認知が強化されるというループです。

ここまでで、基本的に必要なことは終わりました。

職場での気になる行動パターンから、原体験に戻って再解釈と再決断をしました。そして望む未来につながるような、職場での新たな行動パターンを作り出したのです。

ここまでで、もう十分ですが、最後に2つおまけをつけました

CO ところでさ、おじさんはどうしてあんなに焦ってたんだろうね
CL え?。。。。。ああ。。。父のことが好きだったし、祖父が怖かったのかな
CO そっか。新しい未来の自分だったら、あんなおじさんになんて言ってあげそう?
CL 。。。。大丈夫。何とでもなるよ。時代も違うしさ、かな(笑)
CO そっか。おじさんも狭い世界で妙に頑張ってたんだ
CL そうですね。ほんと私たちにとっては余計なお世話なんだけど
CO そっか。そうだね。さて最後に今日のことを忘れないために何ができるかな?
CL 忘れないために。。。。ああ。子供の頃の写真を探してみます
CO どういうこと?
CL 。。なんか幼馴染と楽しそうに遊んでる写真があったと思うのでするので
CO そっか。それを見つけたらどうする?(行動)
CL デスクの見えるところに貼っておきます。
CO その写真はなんて声かけてくれそう?
CL 。。。。いいね。好きな仕事できていいね。。。。って。。。そっか。。。(涙)

おまけ

一つはおじさんについての処理。親戚ですから、過度に悪者にせずに済むならそうしたかったのです。

だから、おじさんなりの事情を想像して言葉にしてもらいました。みんな自分の世界の中で一生懸命生きているのです。それがこちらにとって余計なお世話になることもありますが。。。

そして2つ目のおまけは、今日のことを忘れないためのお守りを見つけることでした。あたらしい自分、あたらしい生き方を思いだせさせてくれるアンカー(錨)です。

それは僕の想像を超えたとても素敵なお守りになりました

原体験が書き換わることにより、世界をみるメガネが切り替われば、人生は変わります。クライアントの人生のために、メガネの調節ができるコーチでいたいなと思っています

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