あなたは何を「前提」にコーチングしているか②NLP
このシリーズはNLPの前提と言われるものの解説記事です。卓越したコーチカウンセラーが持っている世界観・人間観を身につけましょう
前提③抵抗はラポールの欠如
コーチングカウンセリングをしているとクライアントの抵抗を感じることがあります。「それは嫌です」「したくありません」「できません」みたいなものもそうですし、黙り込むことや適当に答えている感じなども抵抗の現れかもしれません。もしくは「確かにそうですね!」「そうしてみます」などと言うけれども行動を変えない場合なども抵抗かもしれません
抵抗は別に悪いことでもありませんし、コントロールする必要はありません。抵抗はクライアントからのフィードバックに過ぎないからです。「そのやり方はいやだ」「そんな言われ方はいやだ」「いま言われても困る」というようなことを教えてくれているだけなのです。
それを無理やり説得したり、コントロールしようとするから、関係性まで悪くなるのです。相手の抵抗を感じたら、今やっていることをやめる。別のやり方が求められているのです。
相手に教えてもらうのも有効です。「もっとどうしたら、やりやすい?」「どんなやり方ならできそう?」「何がおこってるか教えて」など相手に聞いてみたらいいのです。
NLPでは、抵抗はラポール(親近感、信頼感)の欠如を表すから、抵抗を感じたらラポールの形成に戻ることを推奨しています。
具体的には、前提②「相手の世界地図を尊重し、理解しようとする」に戻ればいいのです。
抵抗を感じたら、まずは相手のことを理解することに戻り、そしてまた次の展開を目指せばいいのです。このことをMatching&Leadingと呼んだりもします。
マッチング=相手に合わせる
リーディング=相手を導く
「相手に合わせてから導く」ことが大切ですね。相手とのつながりが切れていたら、相手を導くことができないわけです。
上の例では最後の
CO「どんな風に伝えられたら、奥さんはそのことを受け止められそう?」
の部分がリーディングですね。
クライアントの抵抗を感じた時のもう一つの指針は「共通の目標に戻る」というものです。これはアドラー心理学の教えです。
そもそもコーチングで扱っているテーマは「クライアント自身の課題」です。だから他人がそれに対して好き勝手質問したり提案するのは本来余計なお世話であり、相手の課題に踏み込む行為なのです。
では、どうしてコーチはクライアントに質問したり提案したりするのかといえば、クライアントから「この課題について考えるのを手伝ってほしい」と依頼されているからです。依頼してきているからクライアントなのです。
ですからその依頼主が、コーチの関わりに抵抗を示した場合には、もう一度、共通の目標と進め方について、クライアントと確認したほうが良いのです。共通の目標というのは「クライアントとコーチは何を目標としてこの時間を過ごすのか?」の答えになるものです。そして進め方とは「その目標に向けて、どのような役割で、どのような手順で進めていくのが良いのか」の答えになるものです
具体例で見てみましょう
メタコミュニケーションと呼ぶこともありますが、コミュニケーションに関するコミュニケーションを取るのです。いま起こっていることを明らかにした上で、何に向けてどう進めていったらいいのかに関してコミュニケーションをとるわけです。
これも抵抗からラポールに戻るためのやり方の一つですね
前提④相手の反応があなたのコミュニケーションが作り出した結果である
僕が2005年に最初にNLPを習った時には「コミュニケーションの意図は相手の反応でわかる」と教わりました。前提も先生によって表現が違ったりするのです。
コミュニケーションの意図は相手の反応でわかる。ちょっと難しいというか、なんのことか意味がわからないという方も多いのではないかと思います。当時の僕はこんな風に理解しました
言いたいことが相手に伝わらなかった時「僕の意図はそうじゃなかったんだ」と言ったりするけど、違う考え方もある。相手の反応こそが自分のコミュニケーションの結果だし、自分の中に自分が意識していなかった意図があった可能性を考えてみるとコミュニケーションが変わるのではないか。
僕はアドラー心理学とNLPを同時に学んでいたので、こんな風に考えたのです。全ての行動には隠された目的がある。自分では気づいていない目的に向けて人は行動をとっているのだ。アドラー心理学ではこんな風に考えたりするのです。
例えば、自分の発言で相手を怒らせたとします。もちろん意識では「相手を怒らせよう」としてるわけではありません。でも無意識は「自分の優位を示したい」「相手に反省させたい」「相手に真剣になってほしい」「相手にこっちを向かせたい」などの目的を持っている行動をしている場合があるのです。
だから自分の発言で、相手が怒った時に
「あれ、自分(の無意識)は何を目的にして、いまの発言をしたのだろう。相手が怒っていることに何かヒントがあるのではないか?」
と考えてみるわけです。
このような考え方に比べると「相手の反応があなたのコミュニケーションのつくり出した結果である」はまだわかりやすいですね。
自分の意図通りに反応しない=相手がおかしいではなく、なるほど今のコミュニケーションだと、相手はこんな反応をするんだ!(今のコミュニケーションで得られる成果は、この反応なんだ)と考えてみるのです。
相手と自分は違う世界地図を持って生きています。だからこちらの想像通りの反応をしないわけです。相手の反応から学び、こちらのコミュニケーションを変えていくことです。
この際も相手に教えてもらえるなら「いま僕に言われて、どんなこと思ったか教えてもらえる?」などときいた上で、あらためてもう一度説明させてもらえばいいのです。
相手がこちらが望まない反応をしたとしても、それは単にフィードバックなのです。「こういう入力がされると、このような出力がされますよ」というフィードバックに過ぎないのです。だから自分の目的に今一度意識を向けた上で、目的に叶うようなコミュニケーションをとろうとすることが大切なのです。
そしてこれらのことの背景にあるのが、次の前提です
前提⑤もっとも柔軟なものがその場をコントロールできる
NLPでは「最も柔軟なものがその場をコントロールできる」と考えます。反対に「最も頑固な人がその場をコントロールする」と思う人もいると思います。
しかし、頑固な人の立場にも立ちながら、その人も動いていけるような関わりができる柔軟な人がいたら、やはりその人が場に影響を与えるのです。その場にいる皆の共通の目的を見出して、一人一人が動きやすいようなコミュニケーションを取れる柔軟さを持っている人が場を動かしていくのです。
しかしそのような柔軟さから私たちを遠ざけるものがあります。それは自分の中のべき論です。「こうするべき」「こうしてはいけない」「普通はこうするものだ」「こんなことはできない」「これをしても意味がない」という常識(思い込み)が私たちから柔軟性を奪っていくのです
アドラーの言葉を紹介しましょう
どうして人生はシンプルだと言えるのでしょう。
目的に向けて、さまざまな方法をタブーなく試していけば、目的がかなうルートが見つかるからです。まさに柔軟性がシンプルな人生の鍵なのです。
1.5メートルの扉であれば、背中を曲げて(頭をさげて)くぐる人でも、嫌な人が目の前にいたら、頭を下げることを拒絶したりします。向こう(未来)に行きたいなら、頭を下げてもいいのです。
最も柔軟な人が、場をコントロールできる。柔軟性を生かしてさまざま試すことができる人がゴールを達成しやすいし、スタックしている人々を救うこともできるのです。
というような考え方に基づき、私たちは、目的に向かって、柔軟にコミュニケーションを選択しながらクライアントと関わっていこうと思うのです。
つづく
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